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叙事詩世界イデアノテ  作者: 乃木口ひとか
4章 世界は誰が為に在る
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4-22



「これだけ広ければ、二種族来ても当面は大丈夫だねー」


 そうか……二種族だったな。どれだけの人数とか聞いて無いかった。多めに食料などの物資は用意したが、足りるのか? 幸い盗賊の装備や物資にはまだ手を着けていないけど、後でどれだけあるのかロリスに出してもらった方が良いかもしれないな。


「……そうだな。想定外だったが、結果的には良かったと思っておこう」


 大規模森林伐採及び殲滅だったが、地球では無いから自然破壊で非難される事も無い……と思いたい。


「早速セトに報告しよう。場所は確保出来たからな」


 俺は昔セトに貰った金色の腕輪に意識を向ける。確か腕輪に意識を向けて、セトに伝えたいと念じるだけで良かった筈だ。

 金色の腕輪が『キュィン』と一瞬鳴ったような気がした。




(あ……えーっと、もしもし?)


(あはははっ。もしもしって電話じゃないんだよー)


(は? なんで千香華と念話してんだよ?)


(なんで繋がってるのかな?)


(俺が知る訳ないだろ? それよりセトと話せるんじゃなかったのか?)


(それこそ私が知る訳ないじゃん? セトに聞いてきたのはケイでしょ?)


(その通りだ……だからと言って初めて使う物の勝手が解る訳ではあるまいって……あれ? これ普通に考えてる事が漏れてねぇか?)


(『もしもし?』だって! プッギャー……うん漏れてるねー。ケイがちょっと余所行きの声になっていて面白かった)


(わざとだよなそれ?)


(くっくっくっ……あっはははははははは)


(なんだ!? 何処からか笑い声が……)


(いやいや、すみません。相変わらずなお二人で安心しました。お久しぶりですね、千香華さん)


(ん? セト? 久しぶりー)


(圭吾さん、思ったより早い連絡で少々驚きましたよ。移民の件はどうなりました?)


(ああ、受け入れる事に決めたよ。場所も既に用意した)


(おお! そうですかそうですか……そうであれば、早速受け入れて頂きたいのです。実は少し予定が早まりそうなので、此方から連絡を取ろうかと思っていた所だったのですよ)


(そうか、此方は構わないが……どうすれば良いんだ?)


(その世界の神が許可を出してさえ頂ければ、後は此方で送る事が出来ますから許可するように言ってくれませんか?)


(ん? 許可ってどう出せば良いんだ?)


(いえいえ、圭吾さん達では無く……その世界の神です)


(ちょっと待ってくれ……一旦切るぞ?)




 俺達は、一旦セトとの念話を切った。この世界の神だと? そんなの居たのか?


「千香華……この世界の神ってどういう事だ? 俺は神の設定なんて考えた覚えは無いぞ?」


 千香華は首を傾げて考えている。俺も考えてみるが、やはり覚えが無い。頭を悩ませていると千香華がポンと手を打った。


「微かに覚えがあるんだけど……ケイのメモに全てを知る神とかなんとか書いてあって、いつか使うのかなー? って考えた記憶があるよー。姿までは描いたりしてなかったと思うけど……」


 あれか! あれは走り書きというか……思い付きで出すかどうか迷った時に『全てを知る事が出来る神で……』まで書いて、話の構成上面倒になるから辞めたものだったと思う。

 千香華は「何て書いたっけなぁ?」と頭を捻っているから大した事を書いていないんだろう。


「まあ。設定ノート(イデアノテ)を見れば解るんじゃないか?」


 俺が設定ノートを取り出すのを見て千香華がこう言い出した。


「ノートで許可するって書けば良いんじゃないの? 何処に居てどんな容姿をしているか解らなくて、書きかけの設定だから実在するかさえ危うい存在を、今から探すのは流石に無理があるんじゃないかな?」


 確かに無理があるな……それにセトは予定が早まりそうと言っていた。神力にも余裕はあるし、このノートは意外に曖昧な所があるからいけると思う。


「なるほど、試す価値はあるな。セトに繋ぐぞ」


 俺は再び腕輪に意識を向けてセトに念話を送った。




(如何なされました?)


(この世界の神はこの場にいない。というか存在自体が何処にいるかすら解らないんだ)


(え? まだ会ったことすら無いのですか?)


(うん、私はケイよりも長く居るけど見た事も聞いた事も無いよ)


(ロキめ! 仕事をさぼりやがったな!)


(念話を通しても怒気が伝わってくる……って念話面倒だな! 考えが直接伝わってるじゃねぇか)


(申し訳ありません。つい感情が昂ぶりました……本来は管理神とその世界の神を引き合わせるのはロキの仕事なのですが、何も聞いてませんか?)


(何にも聞いて無いよー)


(そうですか……後で問い詰めておきますね。それはそうとして、どう致しましょうか? 許可が出せねば話になりませんが……)


(そこは神器を使おうと思うのだが、問題あるか?)


(おお! そういえばお二人の神器はそういう能力でしたね。大丈夫だと思いますよ。創造神であるお二人が権限は上です)


(りょーかい! 許可出せたらまた呼ぶねー)




 さて何と書こうか? 俺達の神器【イデアノテ】は万能なようでじつまったく万能とは言い難い物だ。

 一歩間違うと神力はおろか生命力まで根こそぎ奪い取って、設定を世界に書き加える。根本の設定と辻褄が合わない事は受理して貰えない。曖昧な書き方をすると勝手な解釈で辻褄を合わせる。全くもって酷いものだ……。


 何処の誰を許可するのかきっちり書かないと拙いよな? 一人一人名前なんて書けないし……よし! 決めた。



『エターナルワールドからの移民種族“エルフ族”と“ドワーフ族”をこの世界の人種族として受け入れる事を許可する』



 文字を書いて受理された時の光が……あれ? 消えた? これは根本の設定と齟齬があった時になる現象だ。


「ねねね? 気になったんだけど、エターナルワールドって……件の叙事詩世界の名前? エタ世界って……自虐なのかな? ププッ」


 千香華が噴出しそうになりながら言う。俺もそう思うが、言ってやるな……書き始めたときからエタるつもりなんて無いだろうから、一生懸命考えた名前なのかもしれないぞ?


「そんな事よりも……許可が出来ないみたい何だが、どうしてだと思う?」


 俺が書き込もうとした文章を聴いた千香華は呆れたような顔をして言った。


「それじゃ無理だねー。ケイは自分で課した制約も覚えてないのー? これで結構苦労したのになー……そっか、ケイは名称を自分で考えないもんね? 魔物の名前とか考えるの大変だったんだよ?」


 後半は少し怒り気味の声で千香華が言うが、まだ俺はピンと来ない。何かあったかな? 制約? 魔物……? 根本の設定って事は最初期だよな?


 ……あっ! あれか? あー、なるほど。それは受理されないなぁ。矛盾が発生しているもんな。


「解ったみたいだね? でもどうしようか? これは勝手に変えて良い物なのかな?」


 流石に拙いだろう? という事で、確認を取る為に再びセトに念話を送った。




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