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叙事詩世界イデアノテ  作者: 乃木口ひとか
1章 そして世界は動き出す
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1-1



 その世界は、一言で言うと理不尽。

 物理法則もおかしい。

 魔法が無い。

 テンプレの排除。

 ご都合主義は存在しない(主人公に対してのみ)。

 能力の数値化を排除。

 魔物が強く、人が死に易い。

 王の概念はあるが貴族は存在しない。

 魔物はそこら中に徘徊している。もちろんボス的な強敵も徘徊して村々を襲う。

 魔物は魔法では無い力で魔法のような現象を起す。

(魔法では無い力の詳細は後で考えるつもり)


 世界は球体をしていない。

 円状の大陸の真ん中に一本の巨大な柱のような物が突き立っており、さながら巨大な独楽コマのようである。その先端部分に太陽の役割を果たす光珠こうじゅが存在する。光珠は夜になれば光を弱めて月のようになる。

(時間の概念とか面倒くさいから日本の標準時と同じでいいかな?)

 地面に突き立った柱の反対側には闇珠あんじゅが存在する。闇珠からは何でも引きつける力が発生しており、擬似重力となっている。

(光珠と闇珠のメカニズムは後で考えよう今は保留で)


 その世界の住人は、十二支の動物から進化した姿をしている。

 =子人と子獣人。子人は人ベースでネズミの特徴がある。子獣人はネズミベースで二足歩行

(某雷ネズミみたいな感じ? 灰被り城に住んでいるネズミの王様型は諸事情により不可)


 他の十二支も同じように二種類ずつの進化形態がある。少し例外としてさる人だけは地球の人間とほぼ変わらず尻尾だけ付いている。

(月を見ても変身なんかしないけどな)


 補足! 千香華の要望により、猫人と猫獣人追加。

(十二支の話に猫も出てくるしOKにしよう)


 基本的には種族ごとで纏まって暮らしているが例外の場所もある。

(肉食と捕食対象がいるけど、人型をした生物が食い合うのは流石にアウトだと思うがどうしようか? あとハーフとかは……面倒だな。これも保留)





 俺はパタンとノートを無言で閉じて、大きく振りかぶって【イデアノテ】を投げた。青空に吸い込まれるように飛んでいくマイ神器。空はまともな色で良かったなぁ……もし原色ピンクとかだったら精神的にきつかったろうな。

 内容を確認してる最中に我慢ならず何度か投げ捨てたのだが、何度やってもいつの間にか手元に戻っていた。なんなんだよ一体、これは呪いのノートか何かなのか?

 またいつの間にか手元に戻っている【イデアノテ】を見て俺は怒りのままに喚き散らした。


「馬鹿だろこれ書いた奴! こんなの考え付くのは誰だ! 頭おかしいんじゃないのか?」


「そうだねー、バカで頭のおかしいのはケイだねー。それどう考えても書いたのケイだよねー」


「俺かよ! ……うん、書いたの覚えている……あの頃の俺を殴ってやりたい!」


 見渡せる範囲で一番高い山の頂上。がっくりと膝を着く黒い毛並みの狼面の大男。それを慰めるように頭を撫でている……と見せかけて実は毛並みを堪能しているだけの銀髪の優男。

 もちろん俺と千香華だ。俺達はセトに送られイデアノテの地に降り立った。

 【イデアノテ】というのは神器の名前だ。そして世界の名前でもある……俺が世界の名前を曖昧にしたままだったので、叙事詩ノートの表紙に書いてある名称が世界の名前になった。つまり世界【IDEANOTE(イデアノテ)】だ。

 そのイデアノテは今現在、危機に瀕している(らしい)。その危機を救うために叙事詩世界神として俺達はやって来た。

 ……やって来たのは良いのだが、セトよ何故に山の上? 確かに物語で神の降り立つ場所は、山の頂と相場が決まっているかもしれないけどさ。そんなお約束は要らない!

 因みに、先程読んでいたのはイデアノテ(設定ノート)の冒頭に書いてあるコンセプト部分だ。冒頭でこれだけ穴だらけで、以降の付け足しや補足で矛盾とかもあるだろうなぁ。ああ、今から頭が痛くなってきた。

 それにしても、自分で書いたことなのに読み返すまで内容を覚えて居ないのは何故なんだ? 読めば書いたことを思い出すんだけどなぁ。千香華にも聞いてみたが「んー? そんなもんじゃない? 覚えてないのがフツー」との返答。うーん、俺の考えすぎなのか? まぁ、仕方ない保留だ。


 すぐに考え込んでしまうのは俺の悪い癖だ。これからどうするべきか。何処を目指すのか。今するべきことはなにか。後になってもいいから、やらなくてはいけない事はなにか。そんな感じで思考を巡らせかけた時、突然千香華から警戒の声があがる。


「ケイ! あっちから何か来るよ」


 千香華の指差す方向に目を向けるが、特に何も見当たらなかった。


「ん? 何も見えないが?」


「何言ってるの? 良く見てよ!」


 よく目を凝らしてみると、遙か遠くの空に豆粒のような……いや、もう豆粒じゃない。速い! あっという間に近付いてくるその全貌がはっきり見て取れた。そのおぞましい姿に全身の肌が粟立つ、毛皮だから総毛立つが適切か?


「気持ちわりぃ! なんだあれ!?」


「あれ? ……なんだったかな? そうそう、ドラゴンフライだね!」


 得意気に自分のデザインした魔物の名前を告げる千香華に、恨み言を言いたくなる。俺は虫が大嫌いだ! しかもその姿は普通のドラゴンフライではなく、体長は十メートルを超え、二つの胸部を持ちそれぞれに二対の翅──計八枚の翅──を持ち、肢も三対──計十二本の肢──もある。その関節肢の先は鋭く尖り、その大きさから巨大な杭のように見える。

 しかし、一番の特徴はその複眼だ。複眼全てが目玉であり、ギョロギョロと個別に動いているのだ。想像して欲しい、数千もの眼球が球体に詰まっている様を、しかもその目が一斉にこちらを……。


「こっちを見るな! きめぇんだよ!」


 あまりの気持ち悪さに、つい大声で叫んでしまった。

 ドラゴンフライはその体躯に見合った大顎をガチガチと鳴らし、ホバリングし始めた。どうやら此方を捕食対象と見たようだ。確か蜻蛉って肉食だったよな?

 ガチガチと鳴らしていた大顎を、今度は高速で震わせ始めた。ブィイイインと電子レンジのような音がする。嫌な予感しかしない。大顎の間に赤々と燃え盛る火球が現れ、四対の翅で創りだした強烈な気流で此方に飛ばしてきたのだった。


「はぁ? 嘘だろ!? 避けろ千香華!」


 そう言いながら、俺は転がるように回避する。


 ドゴオオォオオオオォン


 後ろで爆発するような音がした。熱量がこちらにまで伝わってくる。

 すぐさま起き上がり着弾地点を見ると、そこには火柱が上がっていた。

 慌てて千香華の安否を確認するが、なんとか回避したようで無事だった。ほっと安堵の息が漏れる。


「あいつ、私たちをこんがり焼いて食べる気だよ! ケイーあれなんとかして! 早くぅー!」


 先程までの余裕は何処へやら、千香華はドラゴンフライを指差して叫んでいる。無茶振りだろまったく。


「どうにかって……どうやってだよ? 武器も無いんだぞ」


「武器が無いなら、殴ればいいじゃない」


 おいおい、結構余裕あるんじゃねぇのか? パンが無いなら、ケーキを食べればいいじゃない。みたいな言い方しやがって。


「無茶言うな! それにあの高さを飛んでたら届かないだろ?」


「ジャンプだー! ケイならやれる! 私は信じてる!」


 本当に無茶振りが過ぎるぞ相棒よ。そんな緊張感の欠片も無い掛け合いをしている間に、第二射を放つ準備が出来たのか、再び大顎を震わせ始めるドラゴンフライ。連発されないことだけが救いかもしれない。

 千香華の言う事を信じた訳じゃないが、なんとなく出来るような気がした。

 駄目で元々。俺は遙か上空のドラゴンフライを睨み付け、地面を強く蹴りつけ飛び上がった。


 ドシュゥン


 なんだか異常な音がしたが、構ってる暇は無い。何故ならばあの気持ちの悪い複眼が目前に迫っているからだ。

 一斉に此方を見る目玉たち、その目には驚愕の色が見て取れる気がした。


「こっち見るなって言ったよな?」


 その巨大な頭部を殴るべく、俺は拳を繰り出した。


 ゴオッ


 また異常な音がした。ドラゴンフライの頭部に攻撃が当たる直前、拳から炎が吹き上がったように見えた。

 拳が当たったドラゴンフライは、爆散というか燃え散っていった。自分でやったことながら、オーバーキル(殺り過ぎ)である。

 更に地面に降り立ち周りを見渡し驚愕した。踏み込んだ地面がごっそり抉れクレーターになっていたのだった。



 この日、世界最高峰だったこの山は、その座を追われる事となった。




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