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叙事詩世界イデアノテ  作者: 乃木口ひとか
3章 感じるな、考えろ!?
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3-9



 千香華が【看破】を教える事に、同意したタイミングで扉がノックされる音がして、マーロウとヨルグが部屋に入ってきた。


「おう、俺に何の様だ? ヨルグに聞いても教えてくれねぇんだよ。とにかく呼んでますのでの一点張りでよ」


 そう言ったマーロウにヨルグが「すみません」と頭を下げている。


「あっ、いや……怒ってる訳じゃねぇんだよ。ただ、俺が呼ばれるのも珍しいなと思ってよ」


 ヨルグに謝られて、気まずそうに頭を掻きながらマーロウはそう言った。

 特に何も言って無いのに、連れて来るまで内容を伏せていたのは、ヨルグが先程の話を重要視して、許可無く話す事を避けた為だろう。


「すみません……マーロウ。少し重要な話だったんで、何も言わず連れて来るように、私が言ったのですよ」


 千香華がすかさずフォローを入れる。マーロウは「いやいや、なんかこっちこそすまねぇな」と慌てている。このままじゃ話が進まないので、先程ヨルグにも聞いた質問を、マーロウにも投げかけた。

 マーロウは迷うことなく、そんな事が出来るんなら、戦い方に幅も出来るし、便利になる事はよい事だと肯定的な意見をだした。


「二人にもう一つ質問したい。自分の能力と他人の能力を客観的に、視覚化出来るとしたらどうする?」


「そりゃあ、便利だろう? お前も言ってたが『彼を知り己を知れば百戦殆うからず』だろ?」


「それは相手にも言えるのではないのか? 自分だけ視れる訳じゃないぞ?」


「だったら、同条件って事だろ? 問題ねぇじゃねぇか。魔物が使ってきていたって言うんなら、こっちが有利になるって事だろ?」


「魔物は使えないが、人同士だと自分の得意としている事もばれるんだぞ?」


「だったらいいじゃねぇか。人同士で争う事なんか滅多にねぇしな」


 なるほど、マーロウは完全に、対魔物で考えているのか。確かにこの世界では、国家間戦争などは無い。何故ならば、魔物の脅威で人同士で争っている場合では無いからだ。

 今はそれでいいのだが、後々はどうなるか解らない。逆に今のうちに広まれば、【看破】に対するルールなども整備されるかもしれない。


「そうか、ありがとうマーロウ。ヨルグの意見はどうだ?」


「私も同じような意見なのですが……随分と具体的だなぁと思いまして。こちらも具体的な意見と言いますか、質問をしても、宜しいでしょうか?」


 ヨルグは既に視る方法がある事に気付いているか……まあこんな聞き方していたら気付くよな。


「ああ、構わない。質問してくれ」


「あの……その視える場合は、何処まで視えるのでしょうか?」


 ん? 意図が解らない、何を心配しているのだろうか?


「えっと、身長とか体重とか……体のサイズ等も……知られてしまうのでしょうか?」


 最後の方は声が小さくなっていったが、言いたい事は理解した。ヨルグも女性だもんな。そういうのが気になるだろう。別に貧相な体をしてる訳じゃ無いから、そこまで気にしなくても良いのにな。って思うのは俺が男だからだろうか? まあ俺も男の象徴のサイズが、知らない奴からも視れるってなったら嫌だ。寧ろそれこそ誰得なんだよって思うがな。


「ああ、それは心配無い。そういう物ではないからな」


 ヨルグは「すみません、くだらない事を聞いてしまいました。ですが安心しました」と胸を撫で下ろしていた。

 マーロウが少し残念そうな顔をしたのを、俺は見逃さなかった。まあ、マーロウも男だという事だ。見なかった事にしてやろう。


「今更だが、言っておくぞ。これは最重要機密って事にする。絶対に他の者にはまだ話すな。解ったな?」


 二人は真剣な顔をして頷く。


「もう気付いていると思うが、先程聞いた事が出来る技術がある。一つは“理術”という。魔物が使うような力が使える。火を起したり、水を出したり、雷を発生させたりな」


 そこで俺は一旦言葉を切る。二人の表情を見るためだ。ヨルグは予想通りだったのか、やはりそうかという表情で、マーロウは驚きの表情をしているが、迷いのある顔で何か言いたげだ。


「なんだ? マーロウ、言ってもいいぞ?」


「うむぅ、もうこの際だからいいか? ケイゴが昔使った……拳が炎を纏っていたのが“理術”なのか?」


 俺は小さく頷く。厳密に言うと全く違うものなのだが、そういうことにしておいた方が良いだろう。マーロウは、五年前のあの出来事を、誰にも言ってなかったようだ。この場には、イグニットとヨルグが居たから迷ったのだろう。心の中でマーロウに感謝して話を続けた。


「もう一つは“看破”という。これは自分及び他者の能力値を、意識上に表示する事が出来る。……多分実際に見た方が良いだろう。今から二人に【看破】を使えるようになってもらう」


 意識を集中し、二人の頭に手を置き、二人に聞こえないくらい小さな声で「村瀬圭吾の名において、マーロウ及びヨルグに【看破】の技能を使う許可を与える」と呟く。


 特に何かが起きるわけでも無かったが、成功してるのか? とりあえず二人に【看破】を使ってみるか。



 名 前:マーロウ

 種 族:寅獣人

 職 業:ゲーレン冒険者ギルド幹部

     元ゲーレン自警団団長

     元寅王

     格闘家

 生命力:大

 理 力:小

 腕 力:大

 脚 力:大

 耐久力:極大

 持久力:大

 敏捷性:大

 瞬発力:中

 器用度:中

 知 力:中

 精神力:小

 技 能:格闘術

     爪術

     解体

     カリスマ

     咆哮(中)

     礼儀作法

     嗅覚

     事象干渉(理)

     看破

 状 態:能力低下中



 名 前:ヨルグ

 種 族:辰人

 職 業:ゲーレン冒険者ギルド幹部

     元ゲーレン自警団副団長

     元ハイルブロン剣士団団員

     剣士

 生命力:中

 理 力:中

 腕 力:中

 脚 力:大

 耐久力:中

 持久力:中

 敏捷性:中

 瞬発力:大

 器用度:中

 知 力:大

 精神力:中

 技 能:剣術

     格闘術

     短剣術

     指揮

     視力強化

     辰の瞳

     礼儀作法

     事象干渉(理)

     看破

 状 態:良好



 二人とも見事【看破】を取得している。【事象干渉(理)】も持っているようだ。

 とりあえず突っ込みたい事、満載なのだがどうしようか……まずマーロウの元寅王が気になりすぎる。そして結構能力高めなのに低下中! そして、礼儀作法!? マーロウが礼儀作法だ……と?

 ヨルグは可も無く不可も無くといった具合か? 気になるのは【辰の瞳】だが、なんだろうなこれ?


 まあ、良いか。二人が心配そうな目をしているから、取得した事を教えてやるか。


「二人ともいいぞ。これで相手か自分を意識して、【看破】と念じると視える筈だ」


 マーロウとヨルグは、自分の能力を視ているのだろうか。暫し動きが止まる。「ほぅ」とか「おお」とか言ってるしな。


「おお! これはいいな! 自分の能力を、客観的に視る事が出来るってのは、自分に何が足りないか、何が得意か一目瞭然だな! ケイゴ! お前のも視ても構わないか?」


 マーロウは興奮気味に言ってくる。鼻息を粗くする寅は怖いな……うん。


「ああ、構わない「待って! ケイ! それは拙い」……ぞ?」




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