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叙事詩世界イデアノテ  作者: 乃木口ひとか
3章 感じるな、考えろ!?
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3-3


「いいか? いくぞ?」


「うん! 何時でも良いよ」」



『理術及び理学

 理術とは、この世界のことわりを紐解き、世界の事象に干渉して、其れを行使するすべである。

 この理術は、この世界の者が生まれながらにして持つ技能【事象干渉(理)】を使い、【事象干渉(物理)】と同じような効果を起す事が出来る。

 しかし、現在この技能を持っていると認識している者は、この世界に生まれた者の中には一人も居ない。

 理術は、【事象干渉(理)】を持つものならば、誰でも使用する事が出来る。ただし、この世界の理を知り、理術に触れた事がある者だけその使用を許される。

 理術を学び、理を深く追求する学問“理学”は、理術を行使するに当たって重要なものである。何故ならば、理を深く知ることは、理術の効果、効率、開発に影響を及ぼす為である。


 理術の使用方法は、身体の最低でも二箇所から“理に作用する波”を発生させ、増幅及び減衰させることにより、事象に干渉し現象を起す事が出来るというものである。


 現段階で理術を使える者は、村瀬圭吾及び服部千香華の両名のみとする。


 理術及び理学は後の拡張性を考慮するものとする』



 魔法という言葉は使えず、魔術でも不安があったため、理術という言葉を選んだ。生まれながらに持っていないと他の人に広める事が不可能な為、技能は初めから持ってはいるという状態にした。そして認識をしていないという事にして、神力負担を減らし枯れる事を防ぐ。

 そして使う為には、理を多少でも知って“一度でも理術の影響下に置かれなければならない”という事にした。つまり最初の一人目は俺か千香華が、理術の波を当てないといけない。

 理学を作ったのは、ストッパーの役割とこの世界の住人による拡張を狙ってだ。いきなり最大出力なんか出されたら、一体どうなってしまう事か……考えるのも恐ろしい。理学によって少しずつ人々の生活に浸透して、理術使用におけるルールなどが作られる事を期待する。



 文字が輝き文章が受理される。輝きは前回枯れた時よりは、激しく無いがやはり大量の神力が吸われているのを感じる。やばい……か? 少し長いような気が……そう思った時、光が徐々に収まり、成功した事が解った。


「うおおおおっ! びびった! また枯れるかと思ったよー」


「ああ、少しヒヤヒヤしたな」


「じゃあもう、魔……じゃなくて理術って使えるのかな?」


「多分、使えるはずだ」


 一応確認のために【看破】を使ってみる事にした。



 名 前:村瀬圭吾

 種 族:狼神(黒狼)

 職 業:イデアノテ創造神

     叙事詩世界神(派遣)

     荒神

     獣神

 生命力:大

 腕 力:極大

 脚 力:大

 耐久力:中

 持久力:小

 敏捷性:中

 瞬発力:大

 器用度:小

 知 力:大

 精神力:極小

 技 能:我流格闘術

     自己再生(大)

     並列思考

     集中思考

     荒神の咆哮(中)

     技術習得向上“模倣+最適化+効率化”

     狂暴化

     超嗅覚

     事象干渉(物理)

     理術

     看破

     その他多数

 状 態:神力低下中

     能力低下中



 能力は特に変わっていない。技能の所に理術が増えているのが確認できた。あれ? 【事象干渉(理)】が増えるはずだったんだがな……。ノートに書き込んだ文章を読み直したら”この世界に生まれた者”って書いてる事に気付く。俺達はこの世界の生まれじゃないもんな。ってこれで使えるのか?



「うっひょう! なんか出た!」


 問題無い様だ。俺が確認している間に、千香華は理術を使ってみたらしい。

 両手を広げた千香華の前に、拳大の炎が大きくなったり小さくなったりしている。大きい時は白色、小さくなった時は暗い赤色をしていて、ボボッ! ボボッ! と音を立てている。……あれ? これって不完全燃焼か?


「千香華! それを消すか、放つかしろ!」


「はぇ? 何……」


 突然の言葉に反応できず混乱する千香華だったが、既に少しフラフラしているように見受ける。

 俺は千香華の所に駆け寄り、掌低打ちのような形で、千香華の出した炎を殴り弾き飛ばした。


 飛んでいった炎の球は、急激に燃料になるものを得て、更に激しく燃え盛り、荒野の真ん中ほどで巨大な火柱を上げた。爆轟により周囲を衝撃波が襲い、俺達の所まで砂塵が吹き荒れる。大惨事じゃねぇか……。

 この状況を起した当の本人は、へたり込みながらも目を輝かせている。


「うおおおおっ! なんかすげー! 俺TUEEEEEEE」


 あほな事を言っている千香華に、俺は無言で拳を落とした。もちろん凄く手加減はした。


「バカかお前は! 馬鹿だろ? 阿呆だろ? 死にたいのか?」


 ゴツッと鈍い音がしたから、それなりに痛かったのだろう。千香華は頭を摩りながら、抗議の声を上げた。


「痛い! 痛いよケイ! なにすんのさ……へこんだ! 絶対頭へこんだ!」


「なにすんのさ! じゃねぇよ! お前何したか解ってんのか? 酸素不足で不完全燃焼起して、一酸化炭素発生させてどうすんだ? そのまま倒れたら、あれに飲み込まれるのはお前自身だったんだぞ?」


 正確に言うと“酸素のような気体”と“一酸化炭素のような気体”だけど、多分特性は地球のものと変わらないだろう。

 自分がなにをしたか理解した千香華は、申し訳無さそうに頭を垂れている。


 何でああなったか聞くと、何処まで火力上がるか知りたくて、兎に角分子を振動させ続ける様なイメージでやったらしい。


「ごめんね……何にも考えてなかった」


「解れば良し! 帰ったら千香華も理学の勉強だな?」


 うえぇって顔しても絶対勉強させます! 命が幾つあっても足りやしねぇ。


 その後は俺の主導の下で、どんな事が可能か幾つか理術を使ってみた。もちろん先にどんな危険性があるかというのを説明して、最小威力で試した。その結果、【火】【水】【風】【雷】【土】と良くある属性の事象は起せる事が解った。

 火は、先程千香華がやったモノの縮小版で、大きさは同じだが、温度が違う。更に威力を高めたい時は、酸素を送り込む様な、干渉も同時に起せばなんとかなるのか?

 水は、大気中に干渉して減衰させることによって、気体から液体に変えるだけだ。何も無い所から水球が出来るのは見ていてファンタジーだ。更に減衰させることによって、液体から固体にすれば氷になるだろう。

 風は、気圧の変化を強制的に起す事によって、風を吹かせることが出来る。上手く操れるようになれば、圧縮したり、真空状態に出来たりもするだろう。

 雷は、極小さな雷球を出せた。これは振幅を繰り返す事によって電位差を起し、電荷の移動を活発化させればもっと大きな雷球になるだろう。

 土は、中々面白い。土を固めた砲弾のようなものも作れるし、軟化させることも出来た。ただ他のとは違い、その場にある土自体に、干渉する事しか出来ない。何も無い所から土が出てくる事はなかった。



 何度も検証で理術を使っていると、体に違和感が出てきた。体というより精神にかもしれない。だるくてやる気が起きない。考える事が全部ネガティブになってくる。ああ……もう全部どうでもいいや。


 俺は何故かそういう気分になり、膝を抱えて地面に座り込んだ。




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