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叙事詩世界イデアノテ  作者: 乃木口ひとか
3章 感じるな、考えろ!?
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3-2


「というかさー。ケイは難しく考えすぎなんじゃないの? もっとこう……解り易く!」


 そう言われてもなぁ。千香華は決して頭が悪い訳ではない。だけど典型的な感覚人間と言えばいいんだろうか? それに対して俺は、理論立てして物事を考える事が多い。

 感覚で動くのが悪いとは言わないが、今回の場合はきっちりとした、言葉の意味合いまで考えておきたい。何故なら、それを設定ノート(イデアノテ)に書き込まねばならないからだ。

 ノートに書き込むという事は、世界に書き込むという事と同じ。その内容がこの身に余れば、また枯れてしまう。更に間違った事を書き込んでも訂正するのは困難を極める。イデアノテという名前の設定ノートは、神器とは名ばかりの呪いのノートに他ならない。


 俺が頭をガリガリと掻き毟りながら言葉に詰まっていると、千香華はこう言い出した。


「それじゃあさ。ケイはどうやって事象に干渉してるの?」


 それが解れば苦労はしない。それこそ感覚的なモノなのだ。それをなんとか説明しようとして、足の踏み込みがとか力の伝達がとか一つ一つ説明していく。さらに腰の回転、腕の螺旋回転、拳の振り方。そしてそれが理想的な形で……と理論立てて詳細に説明するが、千香華は首を捻るばかりだ。


「ごめん。さっぱり解んない……格闘技は見るのは好きだけど、自分でやりたいとは思わないから興味が無いや。でもそれを、ケイは意識的にやってるんだよね?」


 ん? 何か食い違ってる気がする。そもそも意識的にやっていない。反復的な練習で意識せずに出来るようになっている。むしろそうではないと実践では使えない。


「いや、意識してやっている訳では無いな」


「それじゃあ、前との違いは何なのさ?」


 前との違いねぇ? そりゃあ一番の違いは俺自身のステータスの違いだろうな……特に筋力。それを伝えると千香華は、また不満そうな顔をする。


「なにそのレベルを上げて物理で殴れ状態は! 事象干渉(物理)は今のケイくらいの筋力が無いと使えないって事? それなんて無理ゲー? この世界の魔法使いは皆マッチョしかあり得ないって事なの?」


「まあ、落ち着け。それをどうにかする為に、考えているんじゃないか」


 要するに、事象干渉するソースを物理ではなく、別のモノに変えてしまえばどうにかなるか? だがその為には“何に”干渉しているかを理解しないといけない。



 二人で意見を出し合って、色々考えてみたが、どうにも納得のいく理由が見当たらない。考えれば考えるほど、この世界の法則が解らなくなるんだよな……。

 ん? 法則? この世界の物理法則はどうなってるんだろう? 仮に元素構成というものがあって、それが地球と同じでは無い可能性もある。なにせ地球の元素は、ほぼ全て太陽と同じ元素構成と同じなのである。

 この世界には太陽が無い。つまり地球と同じ訳が無く“すいへーりーべー”は役立たずって事だ。

 やばいぞ……こりゃ下手すると原子の結びつきも、電荷の移動も地球の常識は通用しないカオスな構成って事になるぞ。一体俺達は今、何を吸って呼吸をしてるんだ?


 息を吸ったり吐いたり、呼吸を止めてみたりしている俺を、千香華は不思議そうな顔で見ている。


「どうしたの? とうとうおかしくなった?」


「千香華……今お前は何を吸っている?」


「何って? 空気?」


「それは、本当に空気か? 酸素を含む窒素混合気体なのか?」


「何言ってんだよー。呼吸してるし生きてるじゃん?」


 だよなぁ。そういう認識だよな……。先程考えた事を千香華に説明したら、顔を真っ青にしていた。


「なんて事いうんだ! 怖いじゃないかー! 夜眠れなくなりそうだよ……」


 なんだよ、別に怪談話した訳でもあるまいし、夜は寝てくれ。


「あっ! でもよく考えたら、今普通に呼吸出来てるし、害があるわけでも無いからいいか」


 そう! それだ。今吸っている空気が“地球のそれ”で無いとしても、少なくとも、その代用になっているものを吸っている。つまり同じようなモノがあるってことだ。それが少し地球とは違うから、法則が成り立たない。

 この世界のことわりを知り、それを扱えるようにならないといけない。


 俺は試しに、服と自分の拳の毛皮を始めはゆっくり、段々と速く、といった感じで擦り合わせてみた。普通に擦るくらいの速度では何も起きなかったが、ある一定の速度まで達した時、それは起こった。

 毛が逆立ちピリピリと音がする。更に速度を上げる。拳か光り帯電している……成功だ。多分この世界での静電気だと思われる現象を起す事に成功したのだ。

 しかも驚くべき事に、発生した静電気は拳に留まり続け、霧散することが無いようだ。もしかして……これ何処かに放電するまで、ずっとこのままなのか?

 仕方が無いので、近くの木に放電させる為に拳を近付けてみた。触れる前に空気を引き裂くような音がして、木は真っ黒な炭に変わり果てる。これ……なんて雷○拳?


 あまりの音と現象に、千香華は目を白黒させている。いや、俺もかなり吃驚したけどな。



 その後色々検証した結果、解った事が幾つかあった。


 実際に見る事が出来ない為、全て仮定にはなるが……まず、分子同士の結び付きが非常に強固であるということだ。例えるならば、地球の分子の結合が一本の糸だとするならば、複数の糸で出来た縒り糸のようなものだと思われる。

 そして固有振動が地球のものとは異なる。摩擦で熱が起き難かったりするし、融点や沸点、凝固点が全く違う為、地球では当たり前に起こる現象も、特殊な状態で無いと起き難い。

 電気が拳に留まり続けたのも、電荷の移動が起こりにくいという事に他ならない。


 他にも色々有ったのだが、最も重要な事があった。それは、先程千香華にも説明した干渉という物理現象が“魔法のようなもの”を力に劣る者でも、使えるようになるかもしれない可能性をみせた。

 物理干渉は、互いに同じ大きさの波をぶつける事によって、強くなったり弱くなったりする現象だが、それをなんと無く擬似的に起してみた結果、強くなる方が異常なまでの効率で増幅された。しかも同じ振幅でなくともその現象が起きて、増幅だけではなく、弱まる方も際限なく弱まり、最終的には波が完全に消されるような結果もあった。

 これを別の何かで起して、コントロールする事が出来れば事象に干渉する事も不可能ではないだろう。これは設定ノートに“元々備わっていたが、誰も存在を知らない”という感じで書き込めば、そこまで酷い結果はおきないだろう。



 その考察を千香華に話したところ。千香華はうんうんと頷き、そして胸を張りながら言った。


「なるほど! さっぱり解らん!」




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