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叙事詩世界イデアノテ  作者: 乃木口ひとか
3章 感じるな、考えろ!?
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3-1

3章開始です。宜しくお願いします。

 最近かなり力が戻って来ているような気がする。これは五年の月日が経った事と、ギルドを作った事により、この町の住人が日々の暮らしが良くなった事を、俺達の功績と認めて感謝しているからと考えるのが妥当だろう。

 俺達への感謝が神への感謝という事になり、その結果が神力回復に繋がるという事が証明された訳だ。因みに【看破】で確認した結果がこれだ。



 名 前:村瀬圭吾

 種 族:狼神(黒狼)

 職 業:イデアノテ創造神

     叙事詩世界神(派遣)

     荒神

     獣神

 生命力:大

 腕 力:極大

 脚 力:大

 耐久力:中

 持久力:小

 敏捷性:中

 瞬発力:大

 器用度:小

 知 力:大

 精神力:極小

 技 能:我流格闘術

     自己再生(大)

     並列思考

     集中思考

     荒神の咆哮(中)

     技術習得向上“模倣+最適化+効率化”

     狂暴化

     超嗅覚

     事象干渉(物理)

     看破

     その他多数

 状 態:神力低下中

     能力低下中



 だいぶ戻っている事がわかる。器用度は元よりも上がっている。これはきっと鍛えたりする事によって、成長もあるわけだ。だから回復している能力にも、ばらつきが出てきている。しかし……しかしだ! 何故に精神力は極小のままなのだ! 解せぬ!

 あと考察できるのは、腕力の極大だ。前ほどの力は感じられないが、極大と表示されている。これはあくまでも世界の平均をとって五つの評価に振り分けているだけなので、極大といっても幅が物凄く広いためだと思う。

 数値化して表示する事が出来ない事の弊害のようなものだろう。つまり、能力の世界百位までを“極大”と表示していると仮定する。その場合一位でも“極大”百位でも“極大”と表示される。一位が素手で世界を壊せる力を持っていて、百位が岩を砕ける程度の力でも同じ“極大”なのだ。なんとも使い勝手の悪いステータス表示だろうか……。



 何故いきなり能力表示の事を検証しているかというと、この前の出来事なのだが、いきなり千香華がこう言い出したのだ。




「ギルドも軌道に乗ってきてるよね? 最近暇が出来たんじゃない?」


 その時、俺は執務室で日々の書類仕事で机に向っていた。


「暇に見えるか? 見えるんなら寝ぼけているんだな? 顔洗って出直して来い」


 書類から目を離さずに俺は答えた。千香華はそのまま部屋の外に出て行ったようだ。暫くして再び扉が開けられた。どうせ千香華だろうと思った俺は、顔も上げずに言葉を言い放った。


「顔を洗ってきたのか? なら明日は雨だな」


「顔を洗っては来ていませんが……明日も晴れだと思いますよ?」


 千香華とは違う声に驚いて顔を上げると、そこには呆れた顔をするヨルグの姿があった。


「うお? すまん。イグニットかと思った。なんだ? 何か用か?」


「何か用か? じゃありません! 何故貴方がその書類を書いているのですか?」


 この書類、実は俺が書かなくても良い物だった。しかし他の者に書かせるよりも、自分が書いた方が断然早く解り易いので、そうしているだけだった。そのことをヨルグに伝えたら、額に手を当ててため息を吐かれた。


「確かにケイゴさんやイグニットさんは、仕事も速く丁寧にこなします。纏め方も上手いので、他の人が書いた物よりも断然解り易いです」


 だったら良いじゃねぇか? 何か問題でもあるんならまだしも……。


「ですが! 貴方達が全部やってしまったら、他の者が育たないではないですか! 何時までもケイゴさんが全部やるんですか? 支部も出す予定なんですよね? 支部にも毎日出向いて書類書くのですか?」


 ああ、なるほど。それは無理だな……というかそれは嫌だ。


「そもそもですよ。貴方はこのギルドの最高戦力なのです。もっと偉そうにしていてください。昼間から部屋に篭ってちまちま書類書いて! もっとドーンと構えている事は出来ないのですか? 暇が嫌いって言って、次々に何かすること無いか探して回るのもやめてください」


 すまん……元日本人の気質なんだわそれ。ワーカーホリックって言うんだ。

 しかし、こうなるとヨルグの小言は止まらない。昔に比べてかなり付き合い易い奴になったんだがな……素直に謝ろう。


「すまない。他の人の仕事を取るのは良くないな。俺が悪かった」


「解れば良いのです。その仕事は、私が他の人に割振ります。イグニットさんが上に来るように言ってましたよ? 他に何か重要な仕事があるんじゃ無いですか?」


「解った。行ってみるよ。後は頼んだぞ」


 追い出される様に執務室を出て、二階にある千香華の私室にノック無しで入る。そこにはイグニットの姿をした千香華がニヤニヤしながら待っていた。


「やあやあ。早かったね」


 よく言うぜ。ヨルグに告げ口したのお前だろう? 口には出さないが、そういう目で千香華を見てやると、千香華は小さく肩を竦めた。


「それで? 何をしたらいいんだ?」


「うんうんー。話が早くて助かるよー。そろそろ力も戻ってきてるって言ってたじゃん?」


「万全とは行かないがな」


「火とかカマイタチみたいのとか、出せる位に戻ったんでしょー?」


 確かに出せる様になって居た。ただ条件がある。力の流れを効率よく攻撃箇所に伝えて始めて出せる。例えば拳から火を出す為には、踏み込みの力を足から腰へ、腰の回転力をそのまま腕に伝えて拳を螺旋回転させながら突きを出す。所謂、正拳突きに近い形だ。他にも回転の乗ったバックブローでも可能だった。

 俺は肯定として頷いた。


「そろそろ神力も溜まってると思うんだー。そこでケイへの指名依頼! その力を元に魔法のようなものを作り出して欲しいんだよー」


「この世界に魔法は無理だぞ? 最初のコンセプトから、魔法の存在を否定してる」


「だから、魔法の“ようなもの”だよ。ケイと魔物達が使えるんなら私達にも使える方法あるんじゃない?」


「ふむ? それを元にノートに追加って形なら、枯れずに済む可能性はあるな……」


「でしょ? やっぱファンタジーって言ったら、そういう力がないとねー」




 まあ、そういう訳でまずは力の検証からと、町から離れた荒野に、俺と千香華は来ている。千香華は久しぶりに銀髪の青年の姿だ。理由は言うまでも無いが、オークを一々相手にするのが面倒だからだ。


 千香華も俺の能力を【看破】で見ながら、考えている。


「やっぱり、この“事象干渉(物理)”が怪しいと思うんだけどなー」


「千香華もそう思うか?」


「うん、もしかしたら魔物で“魔法みたいな力”を使える奴も持っているんじゃないかな?」


 残念な事に、この辺りにはそんな魔物が居ない為、【看破】で確認する事が出来ないが(“炎弾”を撃ってきたドラゴンフライは【看破】を創り出す前に倒している)その可能性は大いに有る。



 “事象干渉(物理)”が理由と仮定すると、その言葉をそのまま解釈した場合……。

 事象とは、ある理由があり現れる現実の出来事であり、数学的に言うと確率論で試行の結果起こる事を指す。それに干渉する……? 物理学での干渉なら二つ以上の同じ種類の波が、互いに強めあったり弱めあったりする事だ。例えば音叉で音がホワンホワンいうあれだな。

 あとは他者のする事に割って入り自分の意思に従わせる事も干渉と言った筈だ。頭に付く言葉で多少変わるが“内政干渉”だと他国の事に~となるから……。

 事象干渉(物理)なら“自然的に起こる出来事に外部から手を加え自分の意思に従わせる。どうやって? 物理で!”ということになるのか?


 そういうような事を千香華に説明して、意見を求めたのだが……。千香華は暫く考えこみ、いきなり顔を上げポンと手を叩いて言った。


「なるほど! 解らん!」




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