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叙事詩世界イデアノテ  作者: 乃木口ひとか
2章 弱くてニューゲーム?
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幕間 世界の視点から



 ???視点



 やったわ! やっと見つけたの! あれから結構長い時間が経ったけど……やっと見つけたのよ。

 あれから常に監視していて正解ね。一瞬だけど空間が歪んだの。これだって直ぐに解ったのよ。流石、私なのよ!

 急いで向うわ。今すぐ行かないといけないのよ。私は足が速いの。


 いたー! 見つけたの! でも……なによあれ、怖いよー。黒くて大きい戌獣人? じゃ無いよね? それと銀色の髪の毛のなんだろ? こっちも申人じゃない……常に周りを警戒している。知らないあんなの、この世界のモノじゃない。知らないのに、知っている気がする変な二人。知識じゃなくて感覚で知っている気がするの。


 私は二人を暫く観察する事にしたの。本当は「ありがとう」を伝える為に来たのに……


 跡をつけていたら、黒い大きい方の機嫌が悪くなっていくの……まさか気付かれてる? そんなはずが無いわ。私の尾行は完璧なはずよ! と思ったらいきなり二人が目の前にいたの。吃驚したわ。


「おう、ガキンチョ。こんな所でどうした? 用が無いんならならさっさと家に帰った方がいいぞ?」


 うわわっ! 話しかけてきたわ。やっぱり不機嫌そうなの……でも頑張るのよ。私! お礼を言うの! 


「ちょっ……おまっ! 怖がらせるなっていっただろ」


 そうだよ! 怖いよ! 泣きそうだよ……。私が「ありがとう」を言おうと頑張っていると今度は銀髪が声を掛けてきた。


「ねえ、お嬢ちゃん。何処の子かな? お父さんかお母さんは?」


 優しそうに声を掛けてきたけど……目が笑ってない気がする。お父さん? お母さん? 何を言ってるか解らない……言葉の意味は知ってるわ。どういう存在なのかも、もちろん知っている。


「お名前は何ていうのかなー?」


 その言葉をいわれた途端、私の思考は凍りついた。何だか解らない感情が生まれ、ぐちゃぐちゃになった。“なんでそれをあなた達が聞くの”そう考えてしまった私の口から出た言葉は……。


「ばかぁーーー!」


 だった。私は逃げるように走ったわ。悲しかったの……なんでだろう?

 お家に帰り着いて、不貞寝しようとしたら、またあの不思議な感覚を感じた。やっぱりあの二人がそうなんだ……でも今回は何が変わったのかあまり解らない。あの二人が居ると解らないが増えていくの……怖いけど。それでも嬉しい、世界の変化。



 あれから一週間私は悩んだわ。流石に「ばかぁーーー!」は無かったよね? 謝らなきゃいけないの。それにあの二人をもっと知りたいの。何故か二人は見えない……周りの人を通してしか、情報を得られない。だからこそもっと知るために、会いにいくのよ! 決して、あの美味しそうなご飯を食べてみたいから、行くんじゃ無いのよ?


 今私は逃げている。おかしいわ? 今まで何度か、オークに遭遇したけれど、こんなに追われたこと無いのに……。卑猥な言葉をしゃべっていたから注意をした……ただそれだけだったんだけど、変な目つきで「Yesロリータ! Yesタッチ!」とか言って追いかけてくるの。凄く怖いわ。


 大変なのよ! 逃げ続けていたら、あの二人の居る場所を通り過ぎてしまったの。オーク達は引き離したし、大丈夫だろうと思って戻ろうとしたら、今度はオークロードに出会ってしまったの。さっきのオーク達と同じ言葉を叫びながら、ずっと追いかけてくる……怖いよー。

 また通り過ぎてしまったのよ。でも戻るのも怖いしお家帰るの! お外怖い……。


 あの後、私を追いかけて来たオークロードで酷い事になったみたいなの。どうしよう……謝りたいけどお外は怖いの。



 またあの二人は面白そうな事をしているみたいなの。でもあそこに行く勇気がまだ出ない……。謝らないといけない事も増えてしまったから気が重い。

 でも少しだけいい事があったの。お家の下に住んでいる子達と友達になったのよ。怖かったけど折角話せるのだからと声を掛けてみたら、友達になってくれたの。

 名前を付けてと、頼まれたから白い子に“ラヴァン”黒い子に“シャフォール”と言う名前をあげたの。

 私にも付けてと言ったら「私どもでは、貴女様に名は付けられません」と言われたの……。悲しいけど仕方ないのかな?



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 オッフェン視点



「こんにちわ、オッフェンさん。これ受注書類とギルド員証です。確認お願いします」


 そう言いながら、書類を渡してくる卯人の冒険者。私はそれを受け取り目を通した後、懐に入れながら返事をしました。


「はい。確かに確認しました。ペレツさん、今日はよろしくお願いします」


 この書類は、仕事が完了した後、サインを書き込んで冒険者に返す。そうすることで冒険者は、ギルドでお金が受け取れる仕組みになっているそうです。

 本当に良い仕組みです。私のように人手が足らなくて困っている時に、こうして労働力を確保できるのですから。常に雇い続けることも出来ませんし、かといってこの仕事は結構体力を使いますので、誰でも良い訳でもありません。本当に助かります。


 妻が生きていた頃は、なんとかやれていたんですが、二年ほど前に妻はオークに嬲り殺しにされました。唯一残された娘のクリスティンを立派に育てないといけません。しかし私の牧場は広くて娘と二人だけでは、エスケープゴートを追い立てるのが大変でした。

 そんな時ケイゴさんとチカゲさんが、無理の無い金額で仕事を請け負うと言ってくれたのです。私は二つ返事で、その申し出を受け入れました。

 ケイゴさんは私と同じ戌獣人ではなくて、狼獣人という事でした。確かに私の種族でこんなに大きい方は見たことがありません。そして何より強そうです。

 初めケイゴさんは、何か辛そうな様子で仕事をしていました。柵で囲って飼っているとはいえエスケープゴートも魔物です。何か嫌な思い出でもあるのでしょうか? 私は今でもオークを見ると妻を思い出し、怒りが湧いてきます。私が強ければ、あいつ等を全て殺して回りたいです。

 話を聞いてみると、魔物がああやって助けを求めるのを聞いていると辛くないか? という事でした。私はケイゴさんに言いました。


「魔物が話すのは当たり前でしょう? そんなの気にしてたら生きていけませんからね」


 昔からこの魔物はこんな感じです。今更そんなの考えられません。生きる為にやっていることですし、気にも留めませんでした。

 ケイゴさんは優しいのでしょうね。魔物の言葉にも耳を傾けてしまう程。しかし、悪く言うと甘いのかもしれません。この世界はそんなに甘くはありません。少し情けを掛けたり油断したりすると殺されます。

 でもそんな甘さを持ったまま、今まで生きてこられたケイゴさんの強さが少し羨ましい気もします。


 もう一人のチカゲさんは、申人にしては珍しい銀色の髪をしています。彼は娘と一緒に駆け回り凄い勢いで仕事をこなしています。戸惑いなんてありません。たまに見せる鋭い目付きが少し怖いですが、とても楽しそうに追い掛け回しています。あの目付きは申人のするものではなく、どちらかというと寅種族の人とか猫種族のそれに似ています。不思議な二人組みですね。


 ケイゴさんも慣れたのか何かを吹っ切ったのか、凄い速さで追いかけ始めました。時折唸るその声でエスケープゴートの動きが鈍るのも不思議です。とても便利ですね。私にも出来ませんでしょうか? 何にしても、迷いが無くなったのは良い事だと思います。

 そんな二人が設立した冒険者ギルドという組織には、これからもお世話になると思います。



「きゃああああ!」


 ちょっと前の思い出に浸っていたら、娘の悲鳴が聞こえてきました。慌てて娘の方を見ると、柵を破ってオークが三匹進入して来るのが見えました。一番外側の柵で、そろそろ補修をしようと思っていた箇所です。

 娘を守らなくては! 私は懸命に駆けました。今日来ている冒険者は卯人の方です。卯種族の方は、私どもの戌種族よりも戦う術を持ち合わせていません。私が何とかしなければ……しかしそんな思いも杞憂に終わりました。

 卯人の冒険者ペレツさんは、腰に差していた鉄の短剣を抜くと素早い動きで、娘とオークの間に割り込むとオークの攻撃を難なく避けながら、額に一撃、首筋に一撃、脇腹から心臓に一撃と見事に三匹のオークを圧倒したのです。


「大丈夫? 怪我はないかい?」


 そう娘に問いかける姿は、卯種族とは思えないほど頼もしく見えました。


「ありがとう! 貴方のお陰で、娘まで失わなくて済みました」


「いえいえ、ケイゴさんに鍛えられていますから、このくらい何てこと無いですよ」


 ペレツさんは謙遜しながらそう言いました。私は最大限の感謝を伝え、何度も頭を下げました。ペレツさんは、恥ずかしそうにしていましたが、話を逸らす様にこう言いました。


「しかし、この辺りにまだオークが出るんですね。ギルドに戻ったらこの辺りの警戒をするように、報告しておきますね」


 なんとも頼もしい! そんな事まで考えてくれるのか、と私は感動しました。ペレツさんに感謝しつつ、こんな組織をこの町に作ってくれたケイゴさんとチカゲさんには、心から感謝しなくてはいけませんね。



 この町は今、凄い勢いで発展を遂げています。私が出荷しているエスケープゴートも少し前までは、干し肉くらいにしか使われていませんでしたが、今は色んな部位が使われ始めて卸値が上がって助かっています。

 この前、卯小屋で食事をした時に出たヴァイスヴルストという料理に、エスケープゴートの腸が使われていると聞いた時は、凄く吃驚しました。これもあの二人が考案したと聞いて二度驚かせて頂きました。

 娘も「美味しいねー。また食べに来ようね」と満足していたようです。


 人が増え、町が大きくなり、周囲の安全が確保され、美味しいものが食べられる。ああ、なんと幸せな事でしょう。

 その中心にあのお二人がいる。チカゲさんは何処かに旅に出られたと聞きましたが……今度ケイゴさんに会ったらお礼を言わなければなりませんね。




 この話で、2章終了です。よろしければ活動報告もごらんください。

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