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叙事詩世界イデアノテ  作者: 乃木口ひとか
2章 弱くてニューゲーム?
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2-12


 さあ、食事だ。今並んでいる料理は、ランドピジョンの唐揚げ、ハッシュドジャグ、ポトフ風のスープ、ヴァイスヴルストの茹でジャグ添え、黄色い葉野菜とオレンジ色の葉野菜の塩ダレ炒め、黄色い葉野菜とオーク肉の豚しゃぶサラダの六品だ。



 ランドピジョンの唐揚げは、浸けておく時間が無かったので味の浸透具合がまだまだだったが、淡白な肉の味わいにジューシーさが出てまあまあの出来だろう。


 ハッシュドジャグはハッシュドポテトそのものだった。地球の物よりも少し大味かもしれない。


 ポトフ風のスープは、煮込んだオークの骨と野菜でとった出汁をスープストックとして使い、ソーセージ、干し肉、ジャグ、黄色い葉野菜、茶色い丸い形の根菜等が大きめに切られ入ってる。黄色い葉野菜はキャベツに近いのだが、少し硬めで甘味が少ない。名前はコーツというらしい。茶色い丸い形の根菜は、見つけた時はセリっぽい植物で、引っこ抜いてみたら茶色いカブのような根っこだった。味はどっちかって言うとニンジン寄り。

 ポトフ風スープと言ったのは、本来ポトフは具を別に食べてスープだけを別に飲むので、具を一緒に出しているのでポトフ風ってわけだ。

 味はちゃんと旨みを感じるのが嬉しい! 塩スープとは違う深い味わいに素直に旨いと言えた。


 ヴァイスヴルストは、肉の旨みが凝縮していてとても旨かったが、少し脂身が足りない気もした。地球と違って改良などされていない肉という事もあるが、脂身を別に足せば問題なく旨いと言えそうだった。マスタードが欲しいな。


 野菜の塩ダレ炒めは、塩だけで炒めたものよりも数段旨かった。塩ダレはオークの骨でとった出汁をベースに塩と玉葱っぽい野菜とその葉っぱ部分、そしてニンニクっぽい野菜をすりおろした物を使った。味に深みが出ている。他の料理にも使えると思う。


 豚しゃぶサラダは、少し肉が硬いが十分に旨かった、塩ダレをベースにしたドレッシングがただ千切っただけのサラダとは格段に違う旨さを出していた。



 色々と調味料が足りなかったり、食材自体の味が大味ではあるが、全体的にこちらの料理よりも旨い! そう断言できる。俺達二人は元の味を知っているので、惜しいなぁという感想は否めないのだが、此方の世界の人からしたら大絶賛だった。

 その証拠に一心不乱に料理を貪っている。ちょっと待て! 食いすぎだ! 俺の分が無くなるだろうが!


 凄い勢いで料理を食べていたライナーが突然目に涙を浮かべ、俺達に向かって頭を下げ始めた。


「すみません! 私は正直此処まで違いがあるとは思っていませんでした。料理人としてあなた方の作る物より、自分の作った料理の方が美味しいはず。そう思っておりました。完全に思い上がりだったと理解いたしました」


 うわぉ。そんな謝られてもなんだその困るぞ?


「私は料理人として恥ずかしい! 努力する事を怠ってたんです。ですが目が覚めました! 料理の行程を見せていただけたという事は、それを元に精進しろということですか?」


 まあ、狙いはそういうことなんだけどさ……そんな鼻水まで垂らしながら言われると、なんか悪い事した気分だ。


「ああ、そういう訳では無いんだが……俺達の故郷では普通にある技法だから、気にせずに色々試してみてくれ。食材も依頼してくれれば採りにいくからな」


「おお! ありがたい! よろしくお願い致します」


「うんうん。ライナー頑張ってねー。美味しいご飯楽しみにしとくよ」


 暫くかかるかもしれないが、これで塩味のみの料理から開放されるかもしれない。というか開放されないと困る。美味しい飯は明日への原動力っていうしな。




 今からマーロウとの手合せだ。ああ、なんであんな約束してしまったのか……今俺は憂鬱だ。


「なぁ? やっぱり行かなきゃ駄目か?」


「何いってるの? 顧客だよ? 約束したのに行かないのは駄目でしょ?」


「そうは言ってもなぁ……なんかあの人、本物のバトルジャンキー臭がするんだよな」


「ケイも似たようなものでしょ?」


 別に俺は“俺より強い奴に会いに行く”とか思ってないからな? どっちかって言うと自分よりも強い奴には合いたくありませんだ。


 溜息を吐きながら、マーロウの店の扉を開けるとそこには、やる気満々のマーロウが仁王立ちで待っていた。


「おう、遅かったな。こっちの準備は終わっている。早速いこうか」


 うわぁ……逃がさんぞ! って感じだな。今のマーロウの格好は、ハードレザーの胸当て、皮製のハーフパンツ、腕にハードレザーの小手、足は何も履いていない。この世界の獣人は足が獣型だから靴は履かない。

 因みに俺の足は人型に近い足をしているので、靴を履いている。足にもちゃんと毛皮があるので蒸れて仕方が無いが、靴を履かずに歩けるほどこの世界の地面は綺麗では無い。

 普段のマーロウの格好は解体用の服なのか、長袖、長ズボンで前掛けをつけているので良く見ることが出来なかったが、今の格好ではその隆起した筋肉が毛皮の上からでも解る。全身に刻まれた傷跡から歴戦の強者といった感じだ。

 凄く帰りたい。バトルジャンキー同士で戦ってくれませんかね? 


 町中では存分に戦えないという事なので、町の外に歩いて向っているところなのだが、その途中で辰人の男に呼び止められた。


「マーロウさん! この前言っていたのはそいつですか? マーロウさんが気に懸ける程の者には思えません!」


 なんだこいつ? いきなり失礼だな。


「ヨルグ、お前はやはりまだまだだな。相手の強さも解らないようじゃ直ぐに死ぬぞ」


「しかし! 確かに体つきは良いかもしれませんが、こいつは戌獣人の亜種という事ではありませんか。我等のような戦いに向いた種族ではありません。たかが知れています」


 ヨルグといったか? 面倒くさいなこいつ……。選民思想か?

 特に反論もせず話を聞いていた俺を、辰人の男は睨みつけてきた。敵意というか嫉妬のようなものを感じる。


「やかましいぞヨルグ! そこまで言うならお前もついて来い」


「言われなくてもそうします」


 はあ……なんだこの展開は? 千香華は面白くなって来た! という顔をしてるし、本当に勘弁してくれ。

 ヨルグという辰人に睨まれながら、町の外へと移動の最中、何度溜息が出たかわからない。




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