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叙事詩世界イデアノテ  作者: 乃木口ひとか
2章 弱くてニューゲーム?
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2-2

 暴走するかの如く走るオークは思ったよりも速かった。自分の身体能力からすれば直ぐに追いつくと思っていたのだが、中々追いつかない。もしかして結構強い魔物なのか? と思い【看破】してみる事にした。



 名 前:****

 種 族:オーク

 職 業:****

 生命力:小

 腕 力:小

 脚 力:極小

 耐久力:小

 持久力:大

 敏捷性:小

 瞬発力:極小

 器用度:極小

 知 力:極小

 精神力:極小

 技 能:精力増大

     暴走

     繁殖力増大



 雑魚だった。持久力が大なのは、多分あっち方面が加味されてるのだろう。それ以外は性欲魔物という事以外は特筆する点は無い。

 しかし何故だ? 腑に落ちない。そんなことを考えながらも走っていた。やばい何故か息が上がる。体の調子がおかしいのか?

 前方で悲鳴が起こった。


「きゃあぁぁ!」「いやぁぁぁ!」


「おんなぁ、今から種つけてやっぁらなぁ。楽しみにしろぉ? ぐへへへっ」


 悲鳴を上げた女性は、卯獣人うじゅうじん戌人いぬびとだった。

 卯獣人は身長百三十センチに届かないくらいの、二足歩行のウサギといった感じでピー○ーラビットのようだ。服は引き裂かれたのかビリビリになっている。

 戌人は百五十センチくらいの、日本人顔の女の子に垂れたイヌ耳が付いている。二人抱き合って座り込んでいるため今は見え無いが、尻尾もあるはずだ。

 そんな二人の女性を囲むのは、目を真っ赤に充血させ、舌なめずりをしながらゲスい言葉を吐くオーク三匹。


「はーい、ストップぅー。女性にそんなマネさせないよー」


 俺よりも先に到着した千香華が間に割って入った。しかしオークは千香華に全くの無反応で二人の女性にせまる。


「くっそー! じゃあこれでどうだー」


 そう言いながら千香華は特撮ヒーローのようにポーズをとりながら「変身」と叫んだ。瞬きの瞬間千香華の姿は、銀髪の女性に変わっていた。その姿は、元の千香華と銀髪の青年を足して二で割ったという表現が合う姿だった。


「はぁいー、コブタちゃん達ー。こっちよーおねぇさんが良い事してあ・げ・るぅー!?」


 千香華が言い終わるよりも早くオークどもが、振り向き千香華に凄い勢いで走ってくる。千香華はそれを見て大声を上げながら俺の方に走ってきた。


「ぎゃぁー! やばい! まじでこっちきたぁー。助けてケイ! へるぷぅー!!」


「ナイスだ! 千香華」


 俺は千香華とオークどもの間に立ち塞がった。これだと先程と同じになるはずだが、千香華は俺の後ろで既に男の姿になってる。いきなり追いかけていた女の気配が、無くなった事で困惑するオーク三匹。


「プギィイィイ! オンナドコイッタ! カエセ!」


 興奮しすぎて片言になったオークが、棍棒を振り被りながら襲い掛かってきた。

 そんなの当たるかよ! と思っていたのだが、それは間違いだった。足が思った以上に動かない。なんとか後ろに飛んで避けたが、三匹のうち別の一匹が横振りで棍棒を振るいそれを避けきれず、左腕でガードした。


「ぐっ!」


 左腕に走る衝撃は思った以上に痛かった。骨に響く痛みだ。

 痛みに気を取られている間にも更に別の一匹が、叩きつけるように攻撃を繰り出してくる。今度は転がるようにして避けた。

 距離が離れる。いったいなんだ? 何故こんなに動けない? まるで元居た世界程度の身体能力しかないみたいだ。

 千香華はそんな俺をみて焦っているようだ。しかし、千香華に戦闘で期待するのも酷だ。俺は手で制し、千香華に下がっていろと合図する。

 千香華は一瞬迷うような素振りを見せたが、先程の女性達の近くまで下がっていった。


 オークどもは、邪魔された怒りか、それには反応せずに俺のことを睨み続ける。其の目は此方を見下しているような、自分達の優位を確信している目つきをしている。

 ああ、この視線には覚えがあるぞ。群れなきゃ何にもできねぇくせに、武器を持ち囲まなきゃ優位に立てないくせに、多数が正義だと思い込んでいる……あの時の奴らと同じ目だ。

 はははっ、思い出してきた、こういう時の戦い方を。元の程度の力しかないなら、そのようにやればいい。


 俺は両腕をダラリと下げたまま立ち上がる。其の姿を諦めたと見たのかオークどもは、一斉に此方に飛び掛ってきた。

 がら空きの頭に繰り出される三本の棍棒。所詮ブタか……数の優位を過信しすぎだ。同時に掛かるのはいいが、同じ場所狙ったら意味ねぇよ?

 向かって右側に半歩踏み出し、左足を下げる。それと同時に頭の位置に、振り下ろされた棍棒の一番右側一本を左の掌で受け流すように払う。

 これで一番右のオークは死に体だ。他の二匹も手前のオークが邪魔で此方に攻撃できない。


「まず一匹だ」


 打ち下ろし気味の右ストレートを体勢の崩れた一番右のオークに叩き込む。身長が二百三十センチぐらいある俺の頭を殴りつけるには、オークぐらいの大きさでは飛び上がらないといけない。空中で体勢が崩れてしまえば、避ける事など不可能だろう。もちろん俺はそれを見越して狙われ易くする為に、少し頭を下げ気味に、そして両腕も下ろしたのだ。


 ボグン!


 オークの鼻面に叩き込まれた拳は、あっさりとオークの頭骨まで砕く。


「なんだ? 攻撃力まではそんなに落ちてねぇのかよ」


 それならばと、突然の反撃に浮き足立っている残り二匹のオークの手前にいた方の足にローキックを放つ。


 グシャッ!


 オークの膝が砕ける音がする。しかしそのまま止まらずに左足を跳ね上げ、ソバット気味に最後の一匹の首を刈るように繰り出した。


 ゴキリ!


 首の骨が折れた音がした。

 あっと言う間だった。結局看破で見た通り、たいして強くも無い雑魚だった。なんで俺はこんなのに苦戦したんだ?


「ひぃいいぃ……勘弁してください。もうしません。許してくださいぃぃ」


 足を砕かれたオークが懇願するように俺にそう言う。やっぱ魔物がしゃべるのは無いわ……

 毒気を抜かれた俺は、振り返り歩き出した。


「ぷぎぃいいいぃ! バカめ!」


 オークはそう叫びながら残った足で地面を蹴り、此方に飛び掛ってきた。が読んでいたので横にすっと避けた。目標が外れたオークはベシャっと地面に倒れ伏す。


「あ、じょうだ……」


 グシャリ!


 何かを言う前に、顔を踏み砕いた。

 俺は頭をガリガリと掻きながら「やっぱ無いわ……」と呟き、千香華達の居る方に向かって歩いていった。



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