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叙事詩世界イデアノテ  作者: 乃木口ひとか
2章 弱くてニューゲーム?
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2-1

新章開始です。

 輝きが薄れ、視界に広がるのは壮大な景色、遠くの方には世界の中心である柱と光珠が霞んで見える。

 周りに視界を遮る物の無い其処は……また山の頂上かよ! しかも前回と違う山だろこれ。


 再びイデアノテに来た俺達は、またしても山の頂上に居た。あれから二十年の月日がたっているそうだが、ぶっちゃけ山と森と村の入り口周辺しか見たことが無い俺からすると違いなんて解らなかった。

 次は山に送らないようにセトにお願いする事を決意して、二回目の俺達の冒険の出発となった。


「さて、何処に向かおうかな?」


「え? 何処か目的地があって歩いてるんじゃないの?」


 今回はさっさと山を降りる事に決め、歩きながら話をしている俺と千香華だったが、まだ特に目的地を決めて居ない俺に少し不満気に千香華はそう言った。だが一応考えのあった俺は千香華に説明をすることにした。


「何処かを目指してる訳じゃないけど、取り合えず山を降りる事が先決かと思ってな」


「でも反対側に町や村があったらどうするの?」


「それも考えたが、ここはどうやら初めの山よりも外側に位置するようだから、内側に向かった方が良い筈だ」


 この世界は、中心の柱を軸にしたような独楽のような形をしている。そして空に向かって延々と続く柱の上に擬似太陽のような光珠がある。そのせいか柱に近付く程暑く、離れる程寒いそういう設定なのだ。

 この辺りは結構寒い、周りの木々も針葉樹が多い。つまり外側に近いということになる。

 外側は環境的に厳しく、中央部に比べて魔物も強いという感じにしていたと記憶している。という事は人の生活圏は内側に近いほど多くある筈なのだ。

 そう説明すると千香華は「なるほどねー」といいながら頷いた。納得していただいて何よりだ。


 暫く歩いていたのだが、気になる事があった。先程から跡を付けられているような気が……というか付けられている。

 振り向くと木の陰に隠れたりしているのだが、連続で振り向くと慌てて引っ込んだりするため、何かのコントか? といった拙い尾行なのだ。どんな奴か盗み見ると、黒髪でパッツンの八歳ぐらいの女の子だった。

 こんな山奥なのに、何故か真っ白な貫頭衣のようなワンピース? を着ていて、顔立ちも妙に整っている。残念ながら俺は属性もちではないのでどうとも思わないが、一般的に見て可愛いという評価になるだろう。


「ねえねえ、気付いてる?」


「あほか、気付かないわけ無いだろう」


「だよねぇ……見た目は普通に可愛らしい子だけど、どう思う?」


「どう思うって……胡散臭いな」


 そう、胡散臭い、というか怪しいだろ。こんな所であのくらいの子供が一人で居るのだ。怯えているわけでもなく、此方を尾行している。魔物の類なのか……それとも。


「声かけてみる?」


「いや、放っておこう。魔物の気配も何故か無いし、拙ければ直ぐに助ければいいだろう」


 そう結論付けて再び歩き出す。女の子はずっと付いてくる。振り向けばやはり隠れる。もはや完全にストーカーだ。

 やばい不快度が半端無い、ストレスマッハでSAN値が駄々下がりだ。ストーカー被害にあったことは無いけどこれは精神的にくるものがある。


「やっぱり、声かけてみるわ」


「もしもってこともあるから、あんまり怖がらせちゃ駄目だよ?」


 前回、申人の子供に怯えられたこともあるので、多少気を使って話しかけるか……


「おう、ガキンチョ。こんな所でどうした? 用が無いんならならさっさと家に帰った方がいいぞ?」


「ちょっ……おまっ! 怖がらせるなっていっただろ」


 なんか拙かったか? 千香華はそんな俺を一瞥してため息を吐いて女の子に向き直って言った。


「ねえ、お嬢ちゃん。何処の子かな? お父さんかお母さんは?」


 女の子は、慌ててわたわたとしている。


「お名前は何ていうのかなー?」


 更に女の子は慌てて、何かを口にしそうになったが、黙り込んで下を向いてしまった。そして……


「ばかぁーーー!」


 と大声で叫びながら何処かに走っていってしまった。何だあれ?


「ありゃ? 逃げられちゃったー」


「千香華が性質の悪い人攫いにでも見えたんじゃないのか?」


「あはははっ、ケイにだけは言われたくないよ? けど大丈夫かな?」


「うーん? 普通の子なら拙いだろうが……気付いたか? あの子めちゃめちゃ足速いぞ?」


 明らかに普通では無い子供だったし、あの速さは異常だ。しかも匂いは既にかなり遠くなっている。追いかけるのも不可能だ。

 仕方が無いと二人で結論付けて先を急ぐ事にした。


 山を降りきって、木々が少なくなり、視界が開けた。見渡す限りのだだっ広い草原が目の前には広がっている。

 途中魔物に遭わなかったのだが、ここで三匹の魔物に遭遇した。その姿は、コブタ……三匹いるからそのまんま三匹のコブタのようだった。そしてそいつらは特に襲ってくる事無くぼへぇーっとしている。


「お? これオークだねー。男の姿になってて良かったー」


 千香華がそう言う。そう、この魔物はオーク。他で描かれるように性欲が異常に強いアレだ。しかしこの世界のオークは、男に一切興味すら持たず、通常時は男には無害といっていい。それどころか姿は、マスコットのような愛らしいコブタである。


「どう? 中々可愛いデザインだろ? でもこれ女が居ると目の色変えるんだぜー」


 今の自分には危険が無いと解っている為、千香華は自分のデザインした魔物を前に、得意気にしている。

 俺はこいつらで鬼畜話書いた為かあんまり良い印象は無い。あれだ、主人公の事を好きな女がこいつ等にやられて、精神的に逝っちゃうってお話。本当にすまない主人公。


「チッ、男かよ。女連れて来いよ。クソ野郎」


「「は?」」


「あー、やりてぇ。パコパコしてぇ」


「溜まってんだよなー。しかし何でここに居るの野郎なんだかねぇ。シネよクソ」


 しゃべった! 魔物ってしゃべるんだっけ? 可愛い見た目でゲスい言葉をしゃべるオークを驚愕の目で見ていると千香華が心底嫌そうな顔をしながら言った。


「可愛くねぇ! なんだこいつらこんな設定にしたかな?」


 ちょっと待てよ? もしかして……


「もしかして、言語設定が魔物にも適用されたのか?」


「それだ! うわぁ嫌過ぎるわー」


 この世界の魔物が全部、こいつ等みたいにしゃべるようになったって、そういうことになるのか?


「心底嫌だなそれ、今からどうにか出来……ねぇよなやっぱ」


 そうやって話している間も、オークどもは此方にゲスい言葉を吐き続けている。ぶち殺がそう! そう思った途端、突如オークどもが黙り込んだ。嫌な予感がする言葉を一匹のオークが言い出した。


「おんな! おんなの匂いだぁ」


 続けて他のオーク言い出す。


「ぐへへぇ、うっまそーぉなにおいだぁ」「ぐひゃひゃ、おんなぁ。めちゃくちゃにするぞぉ」


 見るとオークの目が真っ赤に充血し、どこからか取り出した棍棒を手にしていた。うげぇ……こいつらいきりたってやがる。きったねぇもん見せんなよ!

 そしてある方向を目指して駆け出していくオーク三匹。これは拙い事態か?


「くそっ! 追うぞ千香華!」


 俺達はオークを追いかけて走り出した。


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