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叙事詩世界イデアノテ  作者: 乃木口ひとか
1章 そして世界は動き出す
13/177

幕間 動き出した世界

 1-? 


 ???視点


 あ~暇だわ。私はいつもの様に窓から外を眺める。私に出来る事は眺めるだけ。いつもそう、何があってもただ眺めているだけ。つまらないわ……。


 私はなんでも知ってるのよ。知っているけど何も出来ないの。いいえ、最近はなにもしない。無駄だから……昔は色々やろうとしてたんだけどなぁ。なんでかな?

 ……解ってる。この世界は優しくないから、人にも魔物にも私にも。


 特に困る事もないし、ずーーーっとこのままでも構わない。でも私は知っている。ずっとこのままではないことを……何とかしようと思った事もあったわ。でも解ったの、どうする事も出来ないって。だからなにもしない。仕方ないじゃない? 私にはどうする事も出来ないんだもの。


 子も丑も寅も卯も辰も巳も午も未も申も酉も戌も亥も皆、平等。平等に価値が無いわ。だって変える事が出来ないから、もちろん私も価値が無い。なんでこんなところに居るんだろ?


 毎日毎日、眺めて過ごす。いつもの変わり映えのしない世界。生まれて死んで生まれて死んで生まれて死んで……。つまんなーいって思ってたんだ。



 でもね! ついに変化があったの! いつもと違うきっと違うぜーったい違う! だって私が知らなかったこと。

 知ってる生き物が死んで、知ってる山が形を変えて、知らない生き物がいきなり現れた。知ってる山に名前がついて、知らない泉が湧いて……知らない力が世界に出来た。

 凄い凄い!

 でも誰が変化を起したのだろう? 私はそれを知ることが出来ない……怖い。でもワクワクするのよ。知らない事を知ろうとするのは楽しいの。だから必ず突き止めるわ! この私が知らない事があってはいけないのよ!

 暫くしてもっと凄い変化が起きたの! 子が丑が寅が卯が辰が巳が午が未が申が酉が戌が亥が同じ言葉を話し始めたの。それが今まで普通だったように、それが当たり前のように。それだけじゃないわ、私もなのよ? 私も言葉を話せるの! 私は変わらないと思ってた。ずっと変わらないと思っていた。


「凄い! 凄いわ! 不思議! これが私の言葉」


 嬉しくて一人でいっぱいしゃべる。色んな言葉を色んな表現を。でも、お話したいな……誰かに私の言葉を聞かせて、誰かの言葉を私が聴いて。

 でも最初交わす言葉は決めてるの。こんなに嬉しい事をしてくれた誰かに「ありがとう」っていうの! 決めたんだから絶対そうするわ。



---------------------------------------------------


 ?-?


 四百六十八年この年、世界は大きな変化を迎えたと言われている。


 実際はこの年以降、徐々に変化していったのだが、私は独自の調査により重大な事実を発見した。

 色々な歴史書や文献を調べた結果、これ以前の記録は一切残っておらず、そもそも存在すらしていなかったと思われる。

 存在しなかったのは記録のみではなく、文字自体が存在を疑われるという調査結果に落ち着いた。本来ならばおかしな事象だが、この四百六十八年に突然文字が現れ使われ始めた、と考える方がしっくりくるのである。


 それどころか、もっと驚きの事実が発見された。文字が現れたのとほぼ同時期(私は完全に同時であったと考えている)言語が使われ始めた、というものである。

 考えれば考える程、異常な事態ではあるのだが、これは事実であると私は確信している。それというのも、この時を境にこの世界の文化水準が大幅に上がり、世界中で色々な出来事が起こっている。


 例えば革命、扇動された民衆が当時の辰王を退陣に追いやり、新たな王を無血により即位させたというから驚きである。以前の辰の民の性格上、話し合いでの解決など絶対にあり得ず、血が流されることなく王位の継承が行われたのは初めてである。


 例えば犯罪、詐欺罪というものが出来たのもこの時期であるといわれている。つまり嘘や詐欺、文書偽造などはこの時期に初めておこなわれたと思われる。猜疑心なども無かった以前から比べると本当に嘆かわしいものである。


 今こうして文字を使い文章を書いたり、言語を駆使して議論を交わしている身としては複雑な気持ちではあるが、現在が本当に幸せかどうか疑わしくも感じる。


 しかし、先にも述べたがこの世界の発展に確実に影響を与え、文化水準を大幅に引き上げたであろう、言語と文字の発生は素晴らしいものだったと私は思いたい。

 そしてその原因になったものを突き止める事こそが、私の学者人生における命題であると確信する。



   三千二百九十三年著 “ある歴史学者の論文”より抜粋




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