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叙事詩世界イデアノテ  作者: 乃木口ひとか
4章 世界は誰が為に在る
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幕間 血を継ぎし者:後編

本日は2話投稿しています。未読の方は前編からお願いします。

前編で100話目でした。記念にイラストを頂いたので前編の一番下に載せています。


 ヤーマッカ爺さんに中々追いつけなかった。ここ数日あたしは何やってたんだろう? ケイゴ師匠の型はもう完全に覚えた。昔から型とか理学を覚えるのは得意だったから、今は体に馴染ませている所だったんだけど……武器を持って加速するのは慣れてきたんだけどなぁ……!? そうだ! 武器を持って加速したら良いんだ!


 それに気付いたらヤーマッカ爺さんに勝つことが出来た。やっぱりケイゴ師匠は凄い! 型の中に全ての動きの基本が入っているんだ! それを繋ぎ合わせれば常に高速で移動が出来る!

 ヤーマッカ爺さんは驚いていたけど、すぐに笑顔になり「私の知っている理術を巧く使うコツを教えましょう」と言って色々教えてくれる。それはチカゲ師匠の理論と近いものがあった。だけど丁寧に説明してくれるので理解し易い。チカゲ師匠は凄い人だけど、擬音が多くて理解するのが大変だった。あれが感覚人間ってやつなんだろうなぁ。

 二人が戻ったら吃驚させてやろうと思い、あたしは更に頑張る事に決めた。



 次の日もヤーマッカと修行をしているとケイゴ師匠が戻ってきた。チカゲ師匠はまだ別の場所に居るみたいだけど、一先ず報告だ! ケイゴ師匠は意外だと驚いていたけどすぐに表情を戻す。そして約束通りついて行く事に許可を出してくれた。


 翌日ケイゴ師匠の言う“湯幻郷”って所に向う途中で衝撃の事実を語られた。あたしはあまりにも突拍子の無い話に少し混乱気味だった。

 ケイゴ師匠は英雄ケイゴと同一の存在で、マーロウ爺ちゃんに戦い方を教え、ヨルグ婆ちゃんに理学と理術を教えた人物らしい。チカゲ師匠は本部ギルドマスターで小さい頃から何時も面倒を見てくれていたイグニットさんと同一人物だということみたい。しかも二人はこの世界の創造神で……最早どんな反応をして良いか解らない。神である証拠も色々見せてくれたけど、さっぱり理解できなかった。でもケイゴ師匠はケイゴ師匠で……チカゲ師匠はチカゲ師匠だよね? そこの所は代わらない筈!


「ケイゴさんもチカゲさんも元々尊敬しているし、今までと特に変わら無いんじゃない? えっと……しゃべり方は今まで通りで良いんですよね? あたし『かしこみ、かしこみ、なんとかかんとか』とか知らないですよ」


 ケイゴ師匠は苦笑いしながら言ってくれた。


「普通にしてくれ……そんな言葉で話しかけられてもこっちが困る」


「良かったー! じゃあこれからも宜しくお願いします」


 あたしはなるべく元気に答える。本当はまだ混乱しているけど……。



 その後の旅は順調に進む。あたしはアドルフ爺ちゃんと肩を並べて戦えるまでになっていた。それが堪らなく嬉しい。ケイゴ師匠も満足そうにあたしの事を見てくれている。もっと強くなろう! 決意を新たにあたしは魔物を屠りながら進んでいった。



 数日の道程だったけど、漸く湯幻郷とかいう村が見えてきた。ケイゴ師匠が言うには数日で此処を作り上げたと言っていたけど……本当なのだろうか? でも神様だしなぁ……なんか今までの話を聞いていると出来そうに思うんだよね。


 チカゲ師匠とも再会を果たし、イグニットさんとして抱擁を交わしたんだけど、この雰囲気は確かにイグニットさんだ! 懐かしい感じがする。イグニットさんも奔放な所があったけど、今のチカゲ師匠を見ると色々我慢してたんだなぁ。昔寝起きに遊んでとせがんで騒いだ事があるんだけど、あの時のあたしは命知らずだったんだなって思ってしまった。


 湯幻郷は素晴らしい場所だった。昔婆ちゃんと一緒に行った事がある“温泉”が湧いていると聞いて、入りたいなぁって思っていたらケイゴ師匠が突然警告を発して来た。


「皆! 伏せろ!」


 その声とほぼ同時に降り注ぐ矢の雨。あたしはグレイブを振り回し矢を叩き落す。


「ヤーマッカ! 大丈夫か?」


 ヤーマッカ爺さんが矢傷を負った。しかもその矢には毒が塗られているようだった。あのヤーマッカ爺さんが避けられないはずは無いのに!

 どうやら森人? とかいう種族の女性を庇って矢を受けたみたいだ。


 混乱の最中下品な声が聞こえてきた。聞くに堪えない声でケイゴ師匠たちを貶してくる。こいつは許せない! ヤーマッカ爺ちゃんの仇をとるんだ!

 なし崩し的に戦いが始まる。相手は他の世界の神の軍勢。戦力比は四対……数え切れない位居る。普通なら勝てるわけが無い。だけどあたしは怖くなかった。そして負ける気は全然しなかった……頼もしい味方が三人も居る。この三人に比べれば有象無象の敵なんて怖い訳が無いのだ。


 戦いは進み。此方が優勢になった頃、敵の死体が突如爆発した。どうやら奴等の攻撃みたいだった。自分達の仲間毎爆破するなんて! あたしたちはケイゴ師匠の理術で庇われ助かった。

 再び全軍で攻めてくるのかと思ったが違うみたいだ。向こうの実力者四人が出てくる。それぞれと一騎打ちの流れみたい。あたしの相手は……なんか気持ちの悪い男だった。行動の全てが気持ち悪い……あの一番気持ち悪いキラキラした鎧を着ている奴にそっくりだ。


 あたしはこんなのには負けない! 何度も何度もグレイブを振るう。相手は防御しているだけで、反撃してこない……たぶん反撃できないんだと思う。こいつ偉そうに言ってるけど動きは滅茶苦茶遅い……ただ硬いだけだった。だったら何回でも攻撃してぶっ壊してやるって思った……だけど先に壊れたのはあたしの武器だった。

 拙い! そう思った。だけどその時アドルフ爺ちゃんの声が聞こえた。


「サライ! それを譲ってやろう。使うが良い!」


 投げて寄越されたのはアドルフ爺ちゃんの愛用の青龍偃月刀だった。「アドルフ爺ちゃん! ありがとう」あたしは礼を述べて、その武器を掴んだ。

 ……凄い! 手にすっと馴染むその武器は、長年使っていたグレイブと同じように振るえた。しかしその青龍偃月刀はグレイブよりも格段に強いのが解った。これなら……いける!


 あたしはアルベルトとかいう男に急接近する。普段は武器に理力を流し硬化させていたがこれには必要が無い。風の理術で一気に加速して体に雷の理術を纏わせる。


 交差するあたしとアルベルト。手応えはあまり無い。もう一度だ! そう思って振り返ると武器ごと真っ二つになったアルベルトが倒れる所だった。


「あ……あれ? 終わり?」


 呆気ない結果にあたしは間抜けな声を上げてしまった。だがまだ油断しては駄目だ……まだ戦いは続いている。

 そう思って周囲を見渡すと、遠くからアドルフ爺ちゃんが歩いてくる。あたしはアドルフ爺ちゃんに駆け寄った。

 武器を返そうとしたが、アドルフ爺ちゃんに言われた。


「その武器は、所持者が意思を持って譲った時に所持者を変える……一度譲ってしまうと元の所持者はその資格を失う。それはもうサライ……お前の物じゃ」


 そんな! これはアドルフ爺ちゃんの大切な武器で……。


「そんな顔をするでない。良いのじゃ……お前は強くなった。お前がこれ程強くなったのならワシの引退も近いかのぅ? ……だがまだ暫くワシは現役じゃ! 安心せい! ケイゴの言う新しい技術でもっと凄い武器を造って貰う事にするからのぅ。今から楽しみじゃ!」


 あたしはアドルフ爺ちゃんから受け継いだ青龍偃月刀を強く握り締め小さく頷いた。


「ではケイゴとチカゲの加勢に向うぞ!」


 アドルフ爺ちゃんがそう言った時だった。敵の軍勢が居る筈の場所から光の粒が一斉に立ち上った。あれは人が完全に死んだ時に起こる現象だ。一体あそこで何が起こったのだろう?

 あたしとアドルフ爺ちゃんは顔を見合わせると、急いでその場所に向って走り出した。


 あの場所で何が起こって居たとしても、今度はあたしがこの武器でアドルフ爺ちゃんを護るんだ!




次から5章に入ります。これからも宜しくお願い致します。

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