三人の神様
ある世界――天国って呼んだ方がいいのかもしれません――には三人の神様がいました。
一人は、痩せぎすの神様。攻撃的で、競い合うことが大好きです。
またある一人は、中肉の神様。怠けるのが好きで、一日の大半は寝転がっています。
最後の一人は、太った神様。温厚な性格で、のんびりとしています。
あるとき、痩せぎすの神様が言いました。
「俺たちの中で、一番神様らしいのは誰だろうな?」
三人の神様は負けず嫌いですから、全員が全員自分のことが一番だといって譲りません。
そこで、世界を三人がそれぞれ作り、誰の世界がより良いものかで一番を決めることにしました。
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・太った神様の場合
「やっぱり、みんな仲良く平和なのが一番だよね」
太った神様は自分の世界の生き物達から争いごとを全て取り除きました。
太った神様の世界では、生き物達は誰もが争うことなく平和に過ごしました。
皆平和に過ごして……そして栄えることなく衰退していきました。
太った神様は争うことを全て除いてしまったので、生存競争や、向上心といったものまで生き物から奪ってしまったからなのでした。
* * * * *
・痩せぎすの神様の場合
太った神様と違い痩せぎすの神様はその点、争うことの大切さをよく理解していました。
「お前たち、戦うんだ!」
痩せぎすの神様は自分の世界の生き物達に、争わせ、競い合うことを勧めました。
おかげで、世界には文明が生まれ、みるみる発達をしていきました。
が、しかし。
加熱した競争は、ある所でタガが外れてしまい、自らを滅ぼしてしまいます。
結局。百年と持った文明は一つとしてありませんでした。
* * * * *
太った神様も痩せぎすの神様も、幾度となく世界に手を加えて試行錯誤しましたがどうにもうまくいきません。
衰退するか、破滅をするか両極端になってしまいます。
二人ともお互いの世界を様子見に訪れたのですが、中肉の神様だけは一向にやっては来ませんでした。
どちらも「アイツの事だから、面倒臭がってほったらかしにしているのだろう」と気にも留めなかったのですが、一向に見に来ないので二人とも中肉の神様の様子を見に行くことにしました。
* * * * *
・中肉の神様の場合
二人が様子を見に行くと、中肉の神様はいつもの通り、寝転がってだらけていました。
「どうしたの二人して? そこまでうまくはいってないけど見ていく?」
二人は中肉の世界を見て驚きました。
特別平和な訳でもない、特別文明が発達しているわけでもない……しかし、世界はうまく回っていました。
二人は驚いたままの口で、中肉の神様に何をしていたのか聞きました。
すると一言。
「何もしてないよ。ただ見守っているだけ」
とだけ答えました。
神様の数え方は本当は「人」じゃなくて「体」「柱」「尊」とかだけど、そんなとこつっこまないで!