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錬金術師アルジェの災難、受難、苦難の行く末  作者: 秋栗稲穂


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042坑道に響く鉄の咆哮

アルジェたち一行。次は何をみせてくれるのか…

カトレアの無鉄砲な行動に、アルジェは思わず呆れたが、今はその是非を問うている場合ではない。気を取り直し、次なる行動に意識を切り替える。


『それで、どうするんじゃ?』


創造神の問いかけに、返答したのはマイだった。


「フフン、あたしの《フレイムアロー》なら、あんな鱗なんて紙みたいなもんよ!遠くからズドンとやって終わりよ!」


両手を腰に当て、勝ち誇ったように胸を張るマイ。しかし、その案をアルジェは首を振って却下する。


「ダメだ。ヘビは熱を感知する能力に優れてる。下手に撃っても避けられる可能性があるし、外れて坑道の壁に当たったら……衝撃で崩落しかねない。最悪、石化された人間を巻き込んじまう。」


カトレアによる石化解除も考慮したが、数が多すぎる。全員を救うには到底足りない。


マイはシュンと肩を落とす。


「そっか……確かに、浅はかだったわね……」


その様子を尻目に、シルビアがやや楽しげに口を開いた。


「では――幸い、この場にはどうなっても構わない生ゴミがひとり……」


と、あからさまにカルラを指差す。


「それを盾にして接近、眼光を防ぎつつ、ついでにその生ゴミ共々叩き潰すというのは、どうでしょう?」


「いいじゃない、それ!」


マイは目をキラキラさせて同意した。


『むぅ……無垢というのは、ときに残酷なものじゃの……』


創造神のため息が、アルジェの意識にだけ届く。


「うん、まぁ…それも悪くない考えなんだが却下だ。それをやると、この先多くの女性の恨みを買うことになる。そして何より、当の本人が既に精神的に石化状態に陥ってるしな。」


アルジェは苦笑しながら、半ば石化したように黙り込んでいるカルラをチラリと見た。


カルラは背中を向けたまま、微動だにしない。


「それに、近接戦なら――もっと適任がいる。」


そう言ってアルジェは、拳で岩壁を軽く叩き、不敵な笑みを浮かべた。


「幸い、この坑道にはいい素材がごろごろしてる。そいつを利用しない手はないさ。」


皆を下がらせると、アルジェはゆっくりと地面に手を添えると、知恵の泉で得た力…“複写”の能力を行使する。


次の瞬間、鈍い光を放つ錬成陣が地を走る――

地鳴りが坑道を揺るがし、空気が金属の匂いを帯びて重くなる。

重苦しい音を立てながら、ひときわ頑強そうなゴーレムが坑道の地から這い出すように姿を現した。


鉱石と土砂を纏った巨体は、人ひとりを優に超える高さで天井すれすれに頭を突き出し、眼光のない顔が静かにこちらを見下ろしていた。

その体にはミスリルの輝きすら帯び、拳は岩をも砕く重量感を放っている。


その姿は一見、ありふれた人型ゴーレム。だが、両腕の先に装着されたのは、螺旋状にねじれた金属ドリル――。鋭い切れ込みが無数に刻まれ、力強さと殺意を併せ持つ異形の武器。


そのドリルが、低いうなりを上げながら回転を始める。

ゆっくりと、しかし確実に――音が加速するたび、坑道に風を裂くような金属音が響き渡った。


「なにこれ……超カッコいい! 名前は? ねえ、あたしにちょうだいっ!」


目を輝かせるマイが、跳ねるように駆け寄ってくる。


「やらん。」


即答したアルジェは、少しだけ得意げに口元を吊り上げる。


「名前か……そうだな。《メタルゴーレム》とでも呼ぶか。鉱石素材で構成されたこいつなら、石化は効かない。」


『ほう。理には適っておるが……アルジェよ、さきほど自分で言ったこと、もう忘れたか? その愚鈍な動きでバジリスクに追いつけるとでも?』


創造神の指摘はもっともだ。

巨像型に比べれば小柄とはいえ、金属合金の密度は凄まじく、メタルゴーレムの機動力は決して高くはない。


だが、アルジェは微笑むのみだった。


「承知の上さ。だからこそ、こいつにはこいつの仕事をしてもらう。」


そう言うと、彼は仲間たちに次々と指示を飛ばす。


「マイ、シルビア。お前たちは左右から援護。カトレアはここに残って待機だ。」


そして――女性を守るという大義名分があれば、素直に指示に従うだろうといった目論見のもと……


「カルラ、お前にはカトレアの護衛を頼む。」


カルラの眉が跳ね上がる。が、すぐに表情を引き締め、胸を張った。


「任せろ。この命に代えても、必ず守り抜く!」


(ちょろいな…)


アルジェは内心で苦笑しつつ、再び通路を塞いでいた岩壁に手を添える。

錬成の力が解かれ、壁が静かに崩れ始める。


岩の向こうから、再び薄明かりが差し込む広間が見えてきた。


そこには変わらず、中央に陣取ったままのバジリスクの姿があった。

槍を構え、ギラついた血走った瞳でこちらを睨みつけてくる。


その眼を見て、誰もが悟る。


――地竜と同じだ。

あのときと同じ、呪符の支配。バジリスクもまた、操られている。


アルジェは静かに呟いた。


「……行くぞ、メタルゴーレム。」


坑道に再び、ドリルの唸りがこだまする。

次回タイトル:背信の光、闇に消ゆ


引き続き、バトルシーンをお楽しみ下さい。

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