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016灼熱の咆哮ー地竜の襲来

前回のバトルシーンと違い、今後はしっかりとしたバトルシーンとなっていきます。

このパートから、だんだんと盛り上がっていく予定です!

引き出しの下に戸棚のある、小物台を挟んで──

左右の壁際にシングルベッドが一台ずつ。

それだけの、簡素な部屋だった。


その一つのベッドに、アルジェは寝かされていた。


──ドゴォォォン!!!


突如、地を震わせるような轟音が部屋を揺らした。


「っ……!」


アルジェは反射的に身を起こす。

見知らぬ天井。覚えのない部屋。だが、体が即座に動いた。

空いているベッドに整えられていた衣類と装備を手際よく身に着け、戸を蹴るように開けて外へと飛び出す。


ここは建物の一番奥の部屋らしく、右手は突き当たり。

左側には、同じ造りの部屋が四つほど並び、その向かいにある扉が建物の出入口のようだった。


陽光が顔を射す。

昇ったばかりの朝日。眩しさに一瞬だけ目を細めるが、視界はすぐに慣れる。


(ここは……本殿の左にある、宿泊用の離れか)


アルジェは状況を整理する暇もなく、外で待っていた二人の姿に気づく。

シルビアとマイ。どちらも既に戦闘態勢だ。


「何があった!?」


真っ先に問いかけると、マイが険しい顔で答えた。


「たぶん、地竜よ。結界を破ろうとしてる!」


「とにかく、お母様のところへ!」


マイの一言で、三人はすぐに本殿へと駆けだした。

走る足音とともに、なおも続く轟音。何かが結界に衝突しているらしい。


本殿に入ると、壇上に鎮座するヒジリが見えた。

円陣の中心に座し、結界を維持するための呪文を紡いでいる。


「ヒジリ! 例の地竜の仕業か?」


「アルジェ様……そのようです。ただ……地竜以外の気配も感じます」


「そうか……」


それ以上、彼女に言葉をかけるのはやめた。

今は、結界の維持に集中させるべきだ。


「まさか……ギルドに報告する前に、襲撃に出くわすとはな……」


アルジェが息を吐いたその時、

──頭の中に、よく響く声が鳴った。


『で、どうするんじゃ?』


創造神の問いに、アルジェは小さく応える。


「……俺たちでやるしかないだろうな」


そう呟いて、外へと向かう。

シルビアとマイが後に続く。

 


神社を包むように展開されたドーム状の結界。

その向こう、参道の鳥居から十数メートル離れた場所に、それはいた。


地面を這うように構える巨大な影。

──地竜だ。


そしてその頭上には、一体の飛竜ワイバーンが、翼を広げてゆっくりと旋回していた。


鱗に覆われたトカゲのような胴体。前脚はコウモリのような膜状の翼へと変形し、首から背中にかけては鋭い背びれ。

頭部は硬質の刺のような外皮に覆われ、見る者に本能的な警戒を抱かせる。


その背に立つのは、一人の人物──

濃い緋色のローブを纏い、長い杖を手にした謎の存在。

フードを深く被っており、性別も種族も窺えない。


その者は、ただ静かに立っている──だが、まるでこちらを見透かすような、ぞっとする気配を漂わせていた。


地上の地竜は、全長10メートルはあろうか。

しかし、創造神によれば、これでもまだ“成長期”らしい。


その姿はまるで巨大なワニのようで、背中には鱗状の背びれが二列に並ぶ。

鼻先にはサイを思わせる太い角、そして後頭部から背へ向かって二本の長い角が伸びていた。


その口を大きく開け、結界に向かって──


──炎の塊を吐き出す。


轟音とともに、炎が結界にぶつかる。

光と衝撃が空気を裂き、振動が足元に伝わる。


しかし、結界はびくともしない。

地竜は苛立ちを見せるように咆哮し、次は自らの巨体で突進。

幾度も、何度も。炎と体当たりを繰り返していた。


『……あやつ、眼が正気ではないのぅ。どうやら、精神を支配されておるようじゃ』


創造神の言葉通り、地竜の目は血走り、狂気の光を帯びていた。


「まずいな……ヒジリは頑張ってるが、結界が長くもたない」


アルジェは焦りを隠せず呟く。


「ひとまず、地竜を結界から引き離さなければ……シルビア、マイ! 一旦、外へ出るぞ!」


アルジェの合図で三人は左側の出口から結界の外へと回り込む。

その瞬間──


シュン、と空気を裂いて、マイの放った破魔の矢が地竜へと飛ぶ。


しかし──


「……ダメ。まるで通らない……っ!」


矢は硬質な鱗に弾かれた。マイが悔しげに顔を歪める。


「完全に私たちを無視してるわね……」


「俺たちなんか、脅威とも思ってないってことか…」


「なら──認識を改めていただきましょう」


その声に、アルジェが振り向く。

金色に光るシルビアの双眸。獣のような輝き。


「やれるか? シルビア」


「Yes, my Lordーー

わたくし達が、脅威であることをお見せいたします」


彼女は左手を胸に添えて優雅に一礼。

そして──右手には、いつの間にか取り出したミスリル製のハリセン。


鋼以上の硬さ、鉄よりも軽い、特注の武具だ。


「なら、俺が援護する。その隙に距離を詰めてくれ。マイは飛竜の方を警戒しておいてくれ。あれだけ静かなのが、逆に気になる」


手短に指示を出すと、アルジェは地面に掌を当てる。


「錬成!」


瞬間、地竜の目前に土が盛り上がり、視界を遮る巨大な土壁がせり上がった。


シルビアは壁に沿って滑るように接近。

マイは翼弓を構えて空を睨む。


不意に出現した障害物に、地竜が咆哮し──


──再び炎の塊を吐き出した!


土壁は一瞬で焼き崩れ、土埃が舞う。


そして、その煙の中から──


火柱が、噴き上がった。


「我らを見下したこと、後悔なさい!

──メイド流“躾術”・奥義!!

殴打――ハリセン薙ぎッッ!!」


ミスリルのハリセンがうなりを上げ、地竜の横面に炸裂する。


ボゴォォンッ!!


轟音とともに、10メートルの巨体が宙を舞い、後方へ遠く吹き飛ばされた──


……その一撃は、雷鳴すら黙らせる、衝撃の鉄槌だった。

次回タイトル:呪われた軍勢と錬金の巨像


引き続き、バトルシーンをご堪能ください。

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