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炎の章 2

1.

 《ほかほか!マグマまんじゅう》

赤いソースのからまったゴロッとした肉が茶色いふわふわの皮で包まれている。

「辛そう…私苦手かも…」


「ジルさんはやめときますか?では3人分お願いします。」


「はいよ、ありがとうね。お姉さん辛いの苦手なら甘いのがあっちにあるよ。良かったら行ってきな。」


ジルさんはめちゃくちゃ甘党だった。

ボルカーンに着くまでに少しみんなのことを知れたと思う。

 フレイさんは科学者ならではの武器の扱いや調整、サポートがとても上手だ。

戦闘は苦手というけれど全然通用していると思う。

 レオリックさんはしっかりした体格を活かした格闘術を使う。王国領を中心にあちこち旅をしてきただけあって知識もすごい。あと、顔立ちもいいのでよく女性からモテる。うらやましい。

 ジルさんはとんでもない魔力量だ。高度な魔法も使えて視野が広い。本当にただの魔導士なんだろうか?魔法を使う人っぽくない豪快さがあるけど。

 なんだか成り行きとはいえすごいパーティに入れてもらった気がする。俺も強くなって仲間として誇れるようにならないと。


「ねぇ、おじさん。この街にもかつて勇者が来たって本当?」


「勇者かどうかはわからんが、フラム様に一人で会いに行って無事に帰ってきた人がいたってのは聞いたことがあるよ。それも大昔の話だからどこまで本当かわからないけどね。」


「フラムってやっぱりなかなか会えないものですか?」


「そりゃこの火山や街の守り神だからね。フラム様あってのロアポ火山とボルカーンだよ。」


「勇者はフラムに会ってどうしたんでしょうか?炎のオーブをもらいに行ったのでしょうか?」


「さあね、フラム様のことが知りたかったら火山道の入り口の神子様とかに話を聞いてみな。」


この後も何人かに話を聞いてみたが勇者やオーブに関してはほとんど情報は得られなかった。もっともまともに聞き込みをしていたのは俺とフレイさんだけだったが。


「ここ温泉があるらしいわよ。帰りに寄って行きましょうよ。」


「火山の石や土を使った素材で建物ができているな。赤いレンガが火の精霊の居場所って雰囲気があっていいな。」


自由な人たちだ。


「いいんですか?あの感じで。」


「えぇ、自分はあくまで付き添ってもらっている身なので、、、」


お人好しすぎか。



2.

ボルカーンはロアポ火山の麓にあり、炎の精霊を守り神として称えている。

活火山でありながら噴火はせずに温暖で安定した環境なのはフラムの力であり、人が山を含めた自然を大切にしている限り精霊の守護も続くとされている。

山や祭壇の奥を荒らしに入ったものは精霊の怒りを買い、帰ることは叶わない。何も残らないほどに燃やし尽くされる。


「ちょっと、怖すぎません?俺たちこれから大丈夫ですか?」


思わず神子に聞いた。


「精霊なんて気難しいようなやつばっかでしょ?不要なトラブルを起こさないで地域を守るための言い伝えなんだから想定内よ。」


「壊したり暴れたりしなければいいんだろ?俺たちはフラムに会って話したいだけなんだから怖がることないさ。」


またお気楽組だ。


「そうですね、フラム様も無闇やたらと攻撃をされるわけではありません。きちんとお話をすればわかっていただけるとは思うのですが。なにせ私共も御姿をきちんと見たことはないので、、、」


「穏便に、とはいえ私利私欲にまみれたお願いを聞いてくれるのかってとこか。どうだろうな?どうする?フレイ。」


フレイさんは難しい顔をしている。


「自分にはここまで来て行かないという選択肢はありません。難しいのも危険なのも承知の上です。」


目には強い意志が感じられた。


「そうか、それなら良かった。正直、怖気付く可能性も考えてたがいらぬ心配だったな。」


レオリックさんは明るく言ったが表情は真剣だ。


「ですよね、、覚悟を決められたのはみなさんのおかけです。突発的なパーティだったけれど信頼できると思えたので。」


「グリーンは大丈夫なの?こんなの初めてのことでしょ?遺跡や森の巡回とは訳が違うわよ。」


不安はある、けど、、、


「俺も大丈夫です。ここでやめたら意味がない。一緒に行きます。」


みんなには経験も知識も勝てないけれど、

唯一剣の腕は信じられる。


毎日何百回と振るい続けた。

これまでの成果を発揮するときだ。


今俺を信じられるのは俺だけだ。




3.

ゴツゴツとした岩でできた山道を登る。

木なんかはほとんどなくて

土と石の茶色の景色が続く。

最後に噴火したのは500年以上前らしく、おかげで道は整備されおり歩きやすくて助かる。

汗がじんわり滲んでくるのは登り道だからだけではないだろう。

火山だけあって熱い。

外でこれだけの熱さなら洞窟の中ってどうなってんだ。

深く息を吸えば気管や肺が燃えそうだ。

普段は年に一回の神事の時のみ神子や街人が祭壇を訪れる。


「神子さまたちのお参りってなにするんだろね。生贄とか捧げるのかな?」


「生贄なんて本当にあるんですか?」


「若い女を捧げる、とかよく聞くじゃない。」


「捧げられてどうするんだよ。精霊は人間に興味なんてないだろ。」


「じゃぁなにするの?御供えとか?」


「そうそう、好きなもの供えて祈るんだろ。」


「なにが好きなんだろう?あ!マグマまんじゅう買ってくれば良かった。」


「食べれないくせに。」


「甘辛ソースの方ですぅ。炎の精霊だからって刺激的なものが好きとは限らないのよ。」

そうこうしていると広場になっているところに着いた。歩いてきた火山道はここで終わり、山の中へと進める入り口が大きく開いていた。


「この中を少し進むと炎の祭壇があって、その更に奥が炎の洞窟よ。みんな準備はいい?」


強く剣を握りしめた。


-次回-

火には水か氷か?!


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