第2話 伝承の守護者 その2
ーーー 第2話 伝承の守護者 その2 ーーー
伝承についての記述がこの部屋の壁に描かれていると説明を受けた。確かに不思議な装飾と文字が並んでいる。よく見ると、それは装飾というよりデフォルメされたような絵と文字と分かる。
タヤン神官は、悠真がこの世界に来るところに限定してと前提を置いて話してくれた。
この地に邪なる神、久遠より座し、
災厄をもたらし、大地を荒廃せしめ、生けるものの命を奪いけり。
天地を覆う絶望の闇に、諸々の命は嘆きの声を上げ、天上の神々へ助けを乞いぬ。
時に応えしは、多くの神々と、白光の如き猫神なり。
いにしえより「月光の裂け目に降り立ちし者」と語られしこの神、
その身は純白に輝き、黄金の瞳を宿し、神威を帯びし姿なり。
三日三晩にわたる激戦の果て、邪なる神を封印せんとすれど、
ついに己が神力を尽くし、猫神はその場に倒れたり。
しかし、神の最後の力をもって、次なる啓示を地上に遺しぬ。
曰く、
「邪の影再び現れし時、月光のもと、守護者もまた降り立たん。
されど、守護者を導かん者なくば、その力は虚ろとなり果てん。
心ある者よ、絆を結びてその力を導け。」
(つまり、猫神様の言っていた試練とは邪の影であり、クルルと出会った時に出ていた月は僕をこの世界につなぐものだったということか。なんの取り柄もない僕が猫神の守護者なんて……)
「そのために俺たちがいるんだ、悠真。そのうち世界中にいる仲間にも出会うだろうさ」
クルルの声が急に頭に響いて驚いた。
「慌てるな、声に出さなくても会話できる。眷属と守護者はな」
(だから、って思考まで読まないでくれよ)
「ま、そういうわけじゃ。伝承通りなら、お主は守護者としての力を身につけていかなければならん。そして、その場所こそ正しくこのエノコ村なんじゃよ」
「改めて、あなたをお迎えいたします。悠真様。クルル様。伝承を語り継いできた私たちにとって最良の日です。そして、守護者のための屋敷が村の奥にあるのでご案内します」
(どれだけの年月、この村は、この村の人たちは伝承を信じて過ごしてきたのだろう。僕が守護者……か)
「ありがとうございます。何もわかっていない守護者ですが、色々と教えてください。お願いします」
シバは、話は終わったと軽食を用意してくれた。使いを出し、村に守護者の到来と宴の準備、屋敷の用意を指示していた。軽食は和菓子のような甘味だったが、とても美味しかった。それ以上に、猫が道具を使って食べる現実に驚きを隠せない悠真だった。
(もしかして、箸も使ったりできるんじゃないか……?)