第2話 伝承の守護者
ーーー 第2話 伝承の守護者 その1 ーーー
通された場所は、円卓のある大きな部屋だ。いくつも椅子があり、会議や会合といったものを開く場所のようだ。
「改めて自己紹介しよう。ワシはこのエノコ村の村長、シバじゃ」
「私は猫神信仰の神官の役職にあるタヤンと申します。猫神様の眷属である猫様にお会いできて光栄です」
「え、と。僕は悠真。東堂悠真と申します。あ、あの……」
「気持ちは分かるが、そのように緊張せずともよい。さて、どこから話を聞こうかのぅ」
「では、私から。悠真殿、どのような経緯でこちらに来られたのか、お話願えますか?」
(なんて単刀直入なんだ。素直に話してもいいのだろうか……。ここまでは穏便に進めてくれているように感じるけど、答え方を間違えたら危険人物だとかで閉じ込められたりしないだろうか)
クルルが「お告げのままに来たんだから大丈夫」とか言ってたのに、ほとんど喋ってくれないので、どうしても慎重になってしまう。
「猫神様のお告げでこの村の奥にある森に向かったら、光と共に悠真がやってきたんだ」
「え、クルル、普通に話しちゃって大丈夫なの?」
「大丈夫だ。ありのままに話すんだ。この村も、この神官という人間も信用していい」
セリフと違って、椅子に座りながら手で顔を洗う仕草をしていて、悠真の緊張なんてどこ吹く風といった感じだ。
「わかったよ」
どうにもこの猫の言うことを信頼してしまう悠真は日本という国で、偶然立ち寄った神社で猫神様だと思われる声を聞き……といった一部始終を話した。
「これは、そういうことでしょう。シバ殿」
「そのようじゃのぅ。なればこそ、この状況はその時が来たということか。これからどうなっていくのかのぅ。」
2人は何か知っているようだった。しかし、悠真からすれば何のことを言っているのか、何がわかったのか予想もつかない。シバは若いもんにはまだ任せられんとか、若いもんには負けんなどと言っている。
「あの、いったいどういうことでしょうか」
「すまん。こっちの事情ばかりで進めてしまったな」
シバは語った。
悠真は、選ばれて呼ばれてきたということ。なぜ悠真なのかという理由は今のところ不明である。しかし、このところ村の周りの状況は異常で、魔物との遭遇率が高くなり怪我人が増えていること。原因不明の病気が流行り始めていること。
「でも、それが僕が呼ばれたことと、僕を信用して受けれていくれる理由にはならないんじゃないでしょうか」
「それはですね、この村というよりは猫神様を信仰してる者にとっては『時がきた』ということなんです。猫神信仰と呼ばれるものには伝承があります」
「伝承……つまり僕がくる理由を裏付けるものがあるということですか。そして、信用の鍵はクルルですか?」
「そうです。猫神様の眷属と話せるのは、猫神信仰の神官や巫女といった限られた人間だけなのです。それ以外にクルル様と話せるということ、異世界から現れたとクルル様がいうと言うことは、あなたは猫神の守護者ということなんです」