第21話 ニップ村 その3
ーーー 第21話 ニップ村 その3 ーーー
「なるほど、一理あるだろうな。周りにもっと手掛かりになりそうなものはないか?」
クルルは慎重に悠真の推論に答え、ミズキとアルナに捜索を促した。しかし、周囲に書かれている文字は先日の古代語に似ているように思われ誰にも読むことはできなかった。それでも悠真はこの台座が気になり近づいていく。
「この台座、何て書いてあるんだろう」
「悠真様、これって『月』って書いてあると思うんです。先日猫屋敷の奥の間で見た古文書で読める言葉ってフローラ様が言っていた文字と同じじゃないかと」
悠真は、どの部分だい? ミズキに問いかけながらと台座に手を触れた瞬間。
「守護者よ、月の力を使い混乱を防ぐのだ。」
眩しい月光のような青白い光が広間全体を包み込んだ。クルルたちは警戒の声を上げ、悠真を囲み守るように体制を整えたが光が視界を奪っていくと同時に何かが流れ込んでくるのを感じた。
それは月晶の力に関する断片的な記憶と映像だった。
「余はアルタリア初代国王レナード1世である。正確には有事に備えた余の残滓である。猫神様のお力で月晶のレガリアを城に安置することで、地上の魔物たちの力を抑制していた。本来の目的は邪神の封印の鍵の1つだ。だが、これを守護者が観ているのであれば月晶のレガリア、カントナの杖が持ち出されたということになる。
今、邪神の力の制御が失われつつあり、力が不安定になっているはずだ。あれらは対となっていてこそ最大の威力を保つことができるものだ。それを奪った者たちは、エルドウィンピークスの奥にある封印の地で邪神復活を行うつもりがあるのだろう。」
光が収まると、台座の彫刻が変化し、サファイア色の珠が現れた。
「これは……」
「カントナの宝玉だ。守護者以外の者にカントナの杖も奪われた際の対応策として宝玉を分離してあった。」
「邪神復活を現状で行うことはできないが、時間が経てばより多くの魔物が地上に現れるゆえ、2つの宝具を取り戻してくれ。現代の守護者よ、頼んだぞ」
「まさか世界創生の頃の話だとは」
「ひとまずは安心ということね。それに賊を追う猶予があることがわかったわね!」
「このカントナの宝玉、物凄い力を感じるけど僕らが持ってていいのかな?」
「悠真様、王城に預けていても宝具は持ち出されたわけですし、宝具奪還は相手がどこに向かっているか分かっているうちに取り返した方がよろしいかと思います」
悠真は深く息を吐き、うなずいた。
「ミズキのいう通りだね。この与えられただろう短い時間を使って、必ずレガリアを取り戻そう。現状も放置できないし、悪用されれば、もっと大きな被害が出る。持っていこう」
アルナが辺りを嗅ぎながら、力強く尾を振った。
「悠真。まだ賊の匂いが残ってるよ。」
一行は新たな目的地へと歩みを進め、物語はさらなる展開を迎える。