表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/67

第20話 南門の英雄


ーーー 第20話 南門の英雄 ーーー


ニップ村を目指して出発した。


「また3人での旅だね。まずは、レアグレスで報告してからニップ村だ」


 いつからか、出発の時にハイタッチをするようになっていた。肉球触っても嫌がらない猫は多くないというが、彼ら眷属はこういったことは人間と同じ感覚のようなので、「猫とハイタッチ」は、猫好きの悠真には本当に仲間との絆が深まっていくようで嬉しいものだった。

 初日は順調だったものの、翌日、街道に出る前にある深い森の中を進む一行に不穏な気配が漂い始める。


「悠真、何か近づいてくるぞ」


 クルルが警戒を促した次の瞬間、茂みの奥から複数の魔物が姿を現した。それらは通常の魔物よりも明らかに凶暴で、特に大型の猿にツノが生えたような魔物の目には炎が灯っているかのようだった。


「瘴気を纏ってる……! みんな、気をつけて!」


 悠真が叫ぶと同時に、クルルが飛び出し、先陣を切った。その素早い行動に間に合うように対瘴気のためにエンチャントライトをクルルの武器に当てた。

 クルルが力強い爪で一撃を繰り出し、次々と魔物を打ち倒していくが、突如として炎を纏う大型の魔物が現れた。その魔物は口から火球を吐き、一行を襲う。


「まずい! 大きいぞ」


(防ぎ切れないか!?)


 そう思ったが、軽減くらいはできると防御の構えを取ったとき、一匹のクルルと同じくらい大きな赤毛の猫が悠真の前に飛び出した。


「お下がりください!」


 前方に悠真の背丈ほどあるだろう赤い魔法陣が浮かび上がり魔物の炎を吸収し、さらに大きな火球となって魔物たちに返した。


「すごい……跳ね返すだけじゃなくて増幅させてる」


 悠真が感嘆の声を漏らすと、赤毛の猫は振り向き、誇らしげに笑った。


「まだまだお見せしたいものがありますよ」


「アルナ! アルナじゃない!」


「ミズキ、久しぶり」


「まだ終わってないぞ!」


 小型の魔物は火球で全て倒すことができたが、あの同じ属性の大型猿獣は火の耐性は強いらしく、ダメージは与えられても致命傷にはならなかったようだ。


「ここは、私の出番ね。アルナの炎じゃ森が大変なことになるわ。少し時間を稼いでくれますか?」


 ミズキが詠唱に入り、悠真とクルルで左右に動き、または前後にスイッチするように入れ替わり撹乱攻撃を繰り返す。その度にクルルの鉤爪、悠真のバックラーと剣が猿獣の鉤爪と何度も交錯し鈍い音がする。

 猿の敏捷性と大きな体躯から繰り出される攻撃は重みがあり、時間を稼ぐのも簡単ではなかったが、翻弄されたためか大型猿獣の攻撃は次第に単調になり、苛立ちが感じられ大雑把になった。

 悠真が両手で攻撃を受け止め動きを止めたところへクルルの攻撃でバランスを崩した。二人の目が合った。


(いけ、悠真!)


 悠真が足元に入り込み図体の割に小さめな右足に向かって袈裟斬りにする。血飛沫が舞い、猿獣の絶叫が響き渡る。


「離れてください! ウォーターランス!」


 ミズキの頭上に形成された水の槍が高速回転しながら大型猿獣に襲いかかり、胸を串刺しにした。ウォーターランスは体内にあった炎に触れ、高熱の水蒸気を生み出し、獣の上半身を包み、水蒸気が消えると重力に従って大木が切り倒されたかのようにゆっくりと地響きを伴い倒れた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ