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第19話 剣 その3


ーーー 第19話 剣 その3 ーーー


 悠真が古びた剣に触れると、剣が彼に反応し、微かな光を放つ。その瞬間、彼の頭の中に断片的な記憶らしきものが流れ込む。

 幾人かの人間と、身分の高そうな衣服を身に纏った女性がいる。悠真と同じように片手剣を持つ人間が最も目に入る。


(これは、レアグレスの時に見た人だ。もしかして、僕の前世はこの剣士だったのか?)


 景色が変わり、魔物と戦っている場面になった。その剣士は魔物をいとも容易く切り裂き、クルルのように速い動きで圧倒的な戦いを見せた。他にも魔術師と他の仲間と大きな敵に立ち向かっていく場面や野営中の場面などが流れるように悠真を通り過ぎていった。

 いつしか、悠真の目線が剣士と重なり、片手剣での戦いの技術や、守護剣士としての使命感、そして猫神様との契約の一部が浮かび上がってきていた。




「悠真様!?」


「おい、悠真! しっかりしろ!」


「悠真さん!」


 声に気がつきハットする。


「僕は……、猫神様に仕えていた剣士だった……かもしれない」


 ものの数分だったようだが、その間に見たものやレアグレスの戦いの最中に見たものを話した。


「悠真がみた剣士が猫神様のそばで剣士として守護していた、か」


「ほんの少しだけの情報だけど、あの剣士は他人じゃない気がするよ」


「そうなんだろうさ、守護者くんが剣に触れたことで情報なのか記憶なのかは不明だが見ることができたわけだからね。僕ら眷属でも知らないことが、この剣と古文書にはあるのだろうことはハッキリした。僕は君たちの旅立ちと共に里へ行くとするよ」


「うん、お願い。それにしてもこの剣、どこか不思議な感じがする」


 鞘も錆びついていて分からないが、ブロードソードのようだがとても軽い。現在使用している剣も軽いが、この剣はより軽く、とても強い力があるように感じた。


「フローラ、このことはシバ様はご存知? あの方の協力はあった方がいいなんじゃないのかな?」


 ミズキなりにフローラだけに負担をかけるわけにはいかないと思ってのことだろう。


「いえ、まだどんなものか確証もなかったから話してないわ」


「ミズキの言う通り、村に何かあったときにのために知っておいてもらっていいんじゃないかな」


「尊重だけではなく、あの淑女の神官も信用に値すると思うね」


「ロレイン、あなた失礼よ。まあ、言い方はともかくみんなの言う通りね。私が話に行くわ」


 剣と古文書を元の場所に戻し、奥の間を出た。


 悠真は、自分がこの世界に縁のある人間だと知ることができたことで、この世界に起きていることが他人事ではなくなり、先日レアグレス領主、ルキノ・モンテグレスに問われたことに答えができたように思っていた。


(でも、猫神様は現人神だったのに倒れたってことは、あの剣士は、僕は神様を守れなかったってことなんじゃないのか? だとしたら、僕はあの剣士より強くならなければいけないってことだ。ここは、僕のいた世界、僕の世界だ。迷うな、強くなろう。何があってもいいように)


 奥の間に繋がる屋敷の入り口を見つめる瞳には、今までにはない強い意志が宿っていた。自分がこの世界に存在していいと思えたことが嬉しかったためだ。


「誰よりも、強く。みんなと共に強くなるんだ」


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