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第1話 クルル その3


ーーー 第1話 クルル その3 ーーー


 奥の家の前まで案内され、待つように言って門番の男は家の中へと入っていった。クルルは近くにあった大きめな石に普通に人間のように座った。


「君はそうやって座るんだ」


「俺をなんだと思ってるんだ」


「え、寝起きがかわいい強そうな猫?」


「おいっ」


 ニャーっと飛びかかって抗議しようとした時、村の責任者だろうかと思われる老人がやってきてクルルの抗議は中断された。村長だというシバという老人は悠真に挨拶をした。老人というには体格が良く、威厳に満ちている。村長というより、戦士という方が似合っている貫禄がある。


「お若いの、ここはの『エノコ村』じゃ。こんな小さな村に旅人が訪れるのは珍しい。故に皆が気にしているのじゃが、お主は何のためにここに来たのかね?」


 村長の問いに悠真は驚くことが多く困惑した。当然エノコ村なんて聞いたことがない。そして、やはりクルルが喋ろうとしないし、理由も分からない。



「あの、この村は日本のどのあたりにあるのですか?」


 十中八九、日本ではないと思っている。守護としてクルルという猫が同行している以上、ここは異世界なのだろうが、それでも確認せずにはいられない。


 悪い予想は的中し、村長や一緒に入ってきた村人たちは驚いたような顔をしてざわめいた。何を言っているんだ、あの若者はだとか、あの服はなんだとか、それぞれに口にし出した。


 村長はため息をひとつ入れて集まっている人たちの騒めきを手を上げただけで納めた。


「日本など聞いたこともない。ここはアルタリアじゃよ……知らんのかね?」


 いきなり老人とは思えない迫力が村長の眉間に宿る。


「すみません。聞いたこともありません。」


 はっきりしたことを整理しよう。ここは異世界だということ。人間はいる。言葉も通じる。でも、猫が喋って二足歩行する世界。建物や衣服の様子から察するに……文化レベルは日本で言えば11世紀あたり、ヨーロッパで言えば中せあたりの雰囲気だろうか。

 でも、助かったのは、いきなり現れたというのに話を聞いてくれる。村長の言葉の語気は強く放ったものの、捕縛もされていないし、される気配も感じられない。この村は危険ではなさそうだということだ。


(さて、どうしよう)


 優馬の後ろから、クルルがひょっこり顔を出す。



「おや……もしや、あの猫は」


 村人たちの中から、ローブというか長いケープのようなものを羽織った品のある感じの初老の女性が歩みでてきた。


「あなた、猫神様のお使いね?」


優しくも、敬意を感じさせる話し方だ。


「そうだ」


 先ほどよりも周りがざわつきだした。悠真も驚いた。クルルがようやく喋ったたことと、猫に話しかけてくる人がいることに驚いた。しかし、村人がざわついているのは猫神様のお使いということにあるらしい。


「これは、別の場所でゆっくり話をするべきでしょうね、シバ殿。」


「そうだのぅ。皆、この者は大丈夫じゃ。わしらが預かる。解散してよいぞ」


 集まりだしていた村の人たちは、かなり騒ついていたのにそれぞれの日常生活に何も言わず戻っていった。

よほど、この女性や村長が信頼されているということなのだろう。


「では、こちらに。」


女性の案内で、村長と共に目の間の大きめな屋敷に通された。



ーーー 第1話 クルル 終わり ーーー

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