第18話 対策 その5
ーーー 第18話 対策 その5 ーーー
「フローラ、ミズキ、何をやっているんだ?」
「あ、悠真様。見てください。できましたよ」
すでに装置は出来上がっており、水門を入ってきた水が装置が設置されている水槽を通る時、水晶の浄化魔法を受け、綺麗になった水が用水路に流れていくというものだった。
ここにはミズキが水晶に水魔法をさらに水晶に付与し、通過する水に浄化を施すようになっているのだとか。
「すごいよ、ミズキ。僕がぼんやりと考えたものが更にいい形になって取り込まれてるなんて」
ミズキは、にゃぁ〜んと嬉しそうに耳のお手入れの仕草をしている。気になり出したのか、しばらく止まりそうにない。
それを見ていたフローラが苦笑しながら補足してきた。
「悠真さんの見立て通り、水晶自体に浄化機能がありましたので、水門を開けると水晶を通って用水路に入るという仕組みと、水晶の保安のための装置と水門小屋をみなさんが作ってくれています」
「ありがとう、フローラ。みなさんもありがとうございます。」
「悠真さんこそ、ありがとうございます。知恵も魔法具もいただいたことに皆とても喜んでいるのですよ。自分たちの今日の仕事そっちのけで」
ほほほ、と笑いながらタヤン神官が悠真に礼など不要だと言ってきた。
本当にこの村の人たちは優しい。でしゃばるなとか、やって当たり前、やらなくてもお前が悪いと責められてきた生活とは違う。この世界では、自分から人の役に立ちたいと思えると感じていた。
そんな気持ちに胸が熱くなり、ぼんやりと村人たちの作業の様子に見入っていた。
「悠真さん、いいですか?」
「あ、うん。ごめん。どうしたのフローラ」
「先ほど、ロレインが話があるからと、用が済んだら全員で猫屋敷に戻ってきて欲しいと言ってました。どうしましょうか」
「ロレインが? 何だろうね、そんなふうに言ってくることなんて初めてだ」
「そうなんですよ、ロレインのくせに何なんでしょうね」
「ミズキは相変わらずロレインに厳しいね」
この言葉は心外だったのか、怒り出してしまった。フローラもクルルも笑って見ている。どうやら地雷というやつだったらしい。この後猫屋敷に戻るまで収まりきらないミズキを見て、悠真はしばらくの間ロレインをネタにミズキに絡むのをやめることになる。
「こちらはお任せいただいて、皆さんはお屋敷へどうぞ」
「タヤンさん、よろしいのですか?」
「ええ、先ほども言いましたが、こっからは俺たちの仕事だって言ってますから」
悠真たちは、作業中の人たちに挨拶して猫屋敷に戻ることにした。ミズキを宥める悠真の背を見ながらクルルはフローラに向かって話していた。
「屋敷にそんな秘密があったとはな……」