第18話 対策 その3
ーーー 第18話 対策 その3 ーーー
翌朝、悠真はフローラとタヤン神官と会っていた。眷属たちは再会を喜びあった。タヤンからは、労いの言葉と悠真のオーラが変わっており、加護も強くなっているようだと言われた。神官たちには何かが見えるのかもしれない。
そのタヤンの言葉にロレインは周りに気づかれないよう反応を示していた。それを察したのかどうかタヤンはロレインに声をかけた。
「こちらは初めましてですね、新しい眷属様」
「ご淑女、お初にお目にかかる。僕はロレイン、眷属最強の弓使いです。お見知り置きを」
いつものキザ挨拶を繰り出し、会話に入ってきた。
「お上手ですのね、ロレイン様」
笑って受け流しているところは年の功だ。フローラには、相変わらずですね、あなたは。と呆れられていた。
「シバ殿から聞きましたが、旅は大変だったご様子。今後はどうされるのですか?」
「はい、とても大変でしたが得難い経験をしました。多くの方にも出会いましたし、目標になるような人にも出会いました。今後は、レアグレスからニップ村、王都、エルドウィン・ピークスを目指そうと思っています」
力強い悠真の言葉と目に宿る覇気が伺える。タヤンは大きく頷き、にこりと微笑み嬉しそうに言った。
「本当に良い経験をなされた様子。いい顔をなさっていますよ。さて、こちらにいらしたご用件は?」
悠真は、旅の間に考えていた村の水質の維持について話した。ミズキが持ってきた水晶に浄化作用があるのなら、引き入れている水源に水晶を設置したら瘴気から守れるのではないかという案だ。
「ミズキとフローラの意見も聞きたいんだ。どうかな?」
「可能性は十分あると思います」
「瘴気が溜まっても水晶からなら、私の光魔法でも浄化ができますし良いと思います」
「私も、フローラ様ほどではありませんが神官として多少の光魔法を心得ておりますのでお役に立てるかと思います」
最後にタヤンも賛成し、全員一致で効果について検証することにした。設置については作業所の職人やロッドウェルの鍛冶場の職人と相談することとなった。この案が有効であれば安心して旅に出ることができる。
フローラ、ミズキに加えて、ロレインも社に残り、クルルと自警団の訓練に向かっていた。訓練に参加する約束もあったが、悠真には積極的に参加したいと思う理由があった。それは、レアグレス攻防戦の時の感覚が、その後の魔物との戦いでもなかったことが気にかかっていたためだった。自警団の人たちと戦えば何かきっかけが得られるかもしれないと考えていた。
「よく来たな、悠真。ちょうどこれから模擬戦を開始するところだ。参加するんだろう?」
「はい、お願いします」
アシュの誘いは願ってもなかった。クルルは、アシュの横にちょこんと座り込んで見物に回った。
「悠真、最初は俺からだ」
「ダンさん、もうケガはいいんですね?」
「ああ、おかげさまでな。手合わせできるのを待ってたんだ。あの時、棒切れだった奴がどんな感じになったかなぁ」
「ダン、そんな言い方して負けたら恥ずかしいぞ」
「大丈夫、大丈夫」
「ダンさん、お願いします」
二人は構えた。周囲の賑わいと対照的に、悠真は静かに集中していた。バックラーを前、剣は下段に外へ開き、スタンスは広めに取った。受け止める、バックラーで距離を測り打ち込む、バックラーで照準を取り突くこともできると考えた。構えに迷いがなく積み重ねられた経験を感じさせた。
「ほぅ……かなり戦えるようになりましたな、クルル殿」
「にゃー」
(そうだ)
一言呟き、アシュは号令を掛けた。体育会系のコミュニケーション能力は相変わらずのようだ。