第18話 対策
ーーー 第18話 対策 ーーー
夕焼けが赤く染める空の下、悠真とクルルたちはエノコ村へと戻ってきた。あのレアグレス攻防戦から15日後のことだが、一行にとっては、ひと月もふた月も村から離れてきたような感覚だと全員が感じていた。
日を追うごとに魔物との遭遇率が高くなってきたが、確実に身体が動き強くなってきたのを自他共に感じていた。
しかし、あの日のように目に光が宿り、爆発的な力が現れることはなかった。
道中の連戦により疲労は隠せないものの、村にたどり着けたことに安堵の表情が浮かぶ
「ねぇ、守護者くん。僕は連日の旅に疲れたので休みたいんだが」
「そうだよね、村長のところへは僕が行くから、みんなは猫屋敷で先に休んでくれていいよ」
「俺はついて行くぞ」
「では、悠真様。このわがまま猫が村長様のところで失礼を働いても困りますから、私が屋敷に連れて行きますのでご安心くださいませ」
「ハニーと2人でゆっくりできるなんて最高じゃないか」
「ゆっくりしてて、ロレイン。じゃあ、また後で屋敷で」
ミズキに帽子をパシッと叩かれているロレインを見送り、クルルと村長宅を訪れることにした。門でも道すがらにも多くの人に声をかけられ、暖かい気持ちになっていた。特にうれしかったのは、守備隊の詰め所を通りかかるとダンやボルン、ラノの三人が元気になり顔を出してくれたことだった。
(短い滞在しかしていないのに、エノコ村は自分の故郷みたいだ。この村の人たちは暖かい)
道々に会う人が声をかけてくれたため、半刻ほど話し込み、ようやく村長宅に辿り着きシバに挨拶することができた。
「すみません、遅くなってしまいましたが無事帰還しました」
悠真はシバの前に立ち、深く頭を下げた。
「ご苦労だったな、悠真。しばらく見ないうちにいい顔になったではないか、色々と経験できようだの。でじゃ、情報は得られたのかの?」
村シバの声は穏やかだが、集まっていた老衆たちにの顔には不安の色が滲む。2週間程度で帰還する予定が一週間ほど遅くなれば気になるのは当然のことだ。心配を増やしてしまいそうだと思いつつも、悠真は報告した。
「守備隊の詰所に行き、聞いてきたことは……」
レアグレスに周囲の村が魔物に襲われ壊滅、多くの難民が流れ着いていることを聞いたこと。冒険者ギルドに入会したその日に、レアグレスに大規模な魔物の襲撃があったことなど。
どこまで話そうかと振り返りながら、猫神様に関わる部分や魔物によるレアグレス襲撃人為的に引き起こされた可能性、月晶のレガリア盗難についてはシバにだけ話そうと触れずに話を進めた。
「住民や難民は避難に成功しました。守備隊や冒険者ギルドの活躍で魔物の群れは殲滅しましたが、レアグレス周辺にはまだ魔物が潜んでいる可能性があるということです」
悠真が報告を終えると、クルルが前足を揃え、毅然とした態度で言葉をかけてきた。
「今後の警戒体制についても伝え忘れるなよ」
「ありがとう、クルル」
シバはその提案にも頷きながらも、険しい表情を崩さなかった。
「お前たちの働きには感謝する。対策の協議については後日とするから、今日のところは休め。ワシらも各々考えをまとめておくように」
老衆は深刻そうな顔をして退出していったが、悠真にはシバに言わなければいけないことがあり声をかけた。
「なんじゃ、何か他にもあるようじゃな」