第17話 領主 その2
ーーー 第17話 領主 その2 ーーー
「避難民の区域に一度立ち寄ってから向かおうと思っていますので、明日にはここを発とうと思います」
クルルたちに、いいよね? と念話で同意を得た。
「であれば、このあとは時間がまだあるな、悠真君」
話しかけてきたのは、ルキノの後ろに控えていたマクシミリアンだ。
「私は、騎士団団長のグリフィスだ。ガイから戦闘の経験を積みたいという話を聞いている。一休みしたら、騎士団の稽古場で手合わせ願おう」
(やっぱりこの世界の人たちは体育会系の人が多い! 頼んでないのに修行に訓練、手合わせって……)
「ガイさん、そんなこと言ってたんですか? 稽古をつけていただけるのはありがたいですが」
「何か問題でもあるのか?」
グリフィスはマクシミリアンとは違い、THE戦士という体格と実直さをうかがわせ、発せられる強者が持つオーラみたいなものが悠真を黙らせた。
「いえ、ありがたく胸をお借り致します」
横でクルルが必死に笑いを堪えている。それを見たミズキが悠真の腕にポンポンと手をやった。
「いえ、笑ってますがクルルさんにも参加してもらいますからね」
「ニャ、ニャ〜ッ!?」
(な、にゃに〜っ!?)
マクシミリアンの言葉には流石のクルルも驚いたらしい、久しぶりに猫語が聞こえた。ロレインが帽子を指でクルクル回して笑っていた。
「笑うなロレイン、お前もやればいいんだ!」
その後、騎士団の稽古に参加し、マクシミリアンやグリフィスには当然だが、騎士団には実力者が多く、隊長クラス以上の騎士に悠真はボロボロにされたのは言うまでもない。
防御力が高いであろう思いプレートメイルを着ているにも関わらず、剣の太刀筋は鋭く、まっすぐで重い。非力な悠真が片手のバックラーで簡単に受けることができず足を止められてしまう。
では速さで対抗しようと思ったが方向転換が素早く対応されてしまうのだった。決め手にかけた分、体力のない悠真は次第にジリ貧になっていき、最後は防戦一方となっていった。
グリフィスから、戦いのための素地はできているが、受け身の戦いが染みついているから、自分の戦い方を見つけないと後手に回るしかない。遠くない日に対応できないことで困る時が来るだろう。と総評を受けた。
(本当に世の中は広いな、少しは戦えるようになったかなと思ったのに。まだまだかぁ、頑張ろう。しかし、僕の戦いのスタイルかぁ……)
確かに、クルルは自分の強みを分かっているのか後手に回るような戦いはしていなかった。むしろ速さで翻弄し、攻撃でも相手を仰け反らせていたのを思い出す。
夕刻、疲労困憊の体と気疲れした気持ちをリフレッシュするため、月影亭の夕食に思いを馳せつつ帰路についた。