第17話 領主
ーーー 第17話 領主 ーーー
翌日、悠真たちは時間に間に合うようにレアグレスの領主館へ向かった。街の中心に位置するこの館は、石造りの堅牢な建物で、堂々とした門構えが印象的だった。
「ここが領主様の館か…。大きいな」
悠真は少し緊張した面持ちでこの立派な館を見上げた。クルルたちはそれを横目に、悠然とあるいは自然に前を歩いている。
兵士に導かれ、広い玄関ホールを抜けて領主の執務室に通された。そこには二人の騎士と50代くらいの落ち着いた雰囲気を持つ男性が執務机に座っていた。
「よく来てくれた。私はこのレアグレスを治める領主、ルキノ・モンテグレスだ。」
彼は温かみのある声で悠真に話しかけた。
「悠真といいます。お呼びいただき光栄です」
悠真は緊張しながらも礼儀正しく応じた。
「うむ。君たちの働きは見事だったと聞いている。駆け出しの冒険者にもかかわらず、難民の避難を手助けし、魔物の進行を一時的にでも食い止めた。その勇気に感謝したい。」
ルキノ領主はそう言うと、クルルたちに視線を向けた。
「そして、その猫神の眷属が君の相棒たちだな。」
「はい、クルル、ミズキ、ロレインです。僕にとっても、とても頼もしい存在です。」
悠真がクルルを紹介すると、クルルは堂々とミズキは礼節に則った、ロレインは……領主に一礼した。
「俺たちは今回、エノコ村の代表として状況を調べにきたのですが、このようなことに。ですが、少しでもお役に立てたようで嬉しく思います」
ガルステンはその言葉に満足げに頷き、続けた。
「君たちには、これからもこの街を守るために力を貸してほしい。特に猫神の守護者としての力は街にとって重要な意味を持つ。どうだろう、私に協力してくれないか」
悠真は一瞬考え込んだ後、しっかりとした声で答えた。
「僕たちにできることなら、喜んで協力します」
その言葉に、ルキノは蓄えられた顎鬚に手をやり満足そうに微笑んだ。
「素晴らしい覚悟だ。その気持ちを持ち続けてくれればいい。そこでだ……」
その続きは、先日ヴァリス隊長から聞いた一件についてだった。王城に賊が入り『月晶のレガリア』と呼ばれる魔法具を奪っていき、結界の力が弱まり、魔物の襲来増加している。昨日の魔物もそのせいだろうという。
「先週のことだ。北西の村が襲われた。君たちと同じタイミングで避難してきた村だが、どうやら賊が逃げて行った方角がそのニップ村の方角でな、何かが起きたのではないかと思われている」
「それと、僕を呼んだこととの関係はなんでしょう?」
ミズキが袖をつついてきた。何か言いたそうだので、念話で会話した。
「悠真様、月晶のレガリアは、猫神様の宝具でもありますの」
「なんだって? 浄化の水晶みたいなもの?」
「いえ、もっと大きく、価値も国宝級のものだと思ってください」
「つまり、俺たちに関係するものだから自分達も探す義務があるってことだろうな」
クルルも混ざってきた。
「ルキノ様、この子らが言うには月晶のレガリアは猫神様の縁があるようです。神官様がおりますので情報を得るためにも一度急ぎエノコ村に戻り、その後ニップ村に向かいます。それで良いでしょうか?」
「ああ、それで構わん。通行証はレアグレスから発行しておこう。いつエノコ村には向かう予定なのかね?」
雑談になったからか、執事を呼びお茶の用意をさせ、悠真たちにも勧められた。