第1話 クルル その2
ーーー 第1話 クルル その2 ーーー
大混乱のままクルルと共に歩き出すと、森の先に小さな村が見えてきた。簡易的な柵や塀というよりは、外敵から守るための…歴史のマンガなどに出てくるような頑丈な杭でできた壁に囲まれている。
「どこなんだろう。ここが守るべき場所なのかな…?」
しばらく立ち止まって、悠真がそう呟いていると、クルルが先に立って村へと歩き始めた。
「お告げでここと言われて来たんだ。大丈夫、ついて来な」
村の入り口にたどり着くと、槍を持った男たちのうち1人が話しかけてきた。
「見かけない顔だな。こんな辺境の村に何のようか?」
「なんていうかですね、実は道に迷っていまして……」
まぁ、嘘ではない。実際ここがどこなのか分からない。クルルもこの村に行くようにとしか言われていないというのだから。悠真の言い訳に少し訝しげにしていたが、丸腰で華奢な悠真に敵意はなさそうだと判断したようだ。
「おい、あの猫って……」
門番の2人はクルルを見て何か反応していた様子だった。畏怖に似たに表情をしていたようにも見えた。
(クルルって一体……。それにしても言葉が通じるのは助かった。でもクルルが喋らないな、なんでだろう。しゃべる猫はやっぱり普通じゃないんだろうか)
「ああ、すまん……。それならまずはここでゆっくりするといい。まずは、村長に許可をもらえるか聞かなきゃならいんで、一緒に来てもらおうか」
そう言われるがまま、悠真とクルルは門番の男性に連れられ、村の中央奥にある広場に案内された。そこには猫の像らしいものが見える。祀られてるようだ。立像で凛々しい感じのする猫で、神格化していると受け取れた。
しかし、今は道中にいる村人のの視線が悠真とクルルに注がれていることに気が気ではない。