第16話 報酬、昇級 その2
ーーー 第16話 報酬、昇級 その2 ーーー
解散となりそれぞれ報酬を受け取り、酒場に直行する者、北門と南門の普及作業に加わりに出かけた者など、ギルドには人がほとんどいなくなっていた。人も減り新参者である悠真は報酬の受け取りを最後にしようと隅のベンチで様子を見ていた。
「よ、悠真ココにいたいのか。昨日はお疲れ、お前さんたちはこっちだ。ギルマスが呼んでる。」
「ガイさん、おはようございます。こっちって何でですか?」
「何でって、そりゃあ……お前さんたちは、昨日ハデにやったからなぁ。隠せないって言っただろ?」
あれだけやってくれたら流石の俺も報告するっての、とガイは大笑いしながら悠真たちをギルドの2階にある応接室へ連れて行った。応接室は、高価なソファに調度品などがあり、貴賓客などの応対もあるためか1階とは様相を画していた。
ソファに行儀よく座るミズキ、我が家のようにくつろぐクルル、窓の外の景色を眺めるロレイン、そして悠真はどこか小さく座ってキョロキョロしている。
「あのな、悠真。落ち着け。別に取って食おうってわけじゃないんだ」
ギルドマスターに呼ばれるとなったら、より大きなことに関わっていくのではないか、村にはいつ行けるのだろうか。猫神の守護者ということを黙っていたから何かあるのではないかなど、あまり気の大きい性格ではない悠真は色々と考えてしまい、視点が定まらずにいた。
「す、すみません。こういうことに慣れてなくて」
頭を掻いて苦笑いした。日本では上司に呼ばれる時なんていいことなんてなかったなと思ってしまう。
所在ない悠真を救ってくれるノックの音がようやく鳴った。悠真とミズキは立ち上がり、扉の方を向く。クルルは起き上がり、ロレインは窓際に立ったまま扉に目線を向けた。ギルドマスターをはじめ、3人の男が入ってきた。
「君が悠真君かね。レアグレスのギルドマスターを勤めているハロルドだ。昨日は活躍だったようだね。ガイが嬉しそうに君の話をしていたよ」
冒険者とは思えない風格のある貴族のような初老の男性は友好の握手を求めてきた。握られたてから伝わってくる力強さ、力量、凄みにギルドマスターの力量や存在感のようなもの感じさせられた。
「初めまして、エノコ村の悠真です。ガイさんの足元にも及びませんでしたが、できる限りの協力をしたまでです」
「遠慮深い男だな、君は。初対面の印象通りだ。だが実力はやはりシバ殿のお墨付きということかな?」
2人目はヴァリス隊長だった。
「隊長までお越しいただき恐縮です」
「結果として君をギルドに行かせてよかった。そして予想を遥かに超えた活躍を聞いて驚いた」
最後は、騎士のようだが。彼はレアグレスの紋章が入った鎧を身に着けており、悠真に向かって一礼すると言った。
「あなたが藤堂悠真殿ですね。レアグレス領主直属の騎士団で副団長でマクシミリアンと申します。領主様があなたにお会いしたいと仰っており、お伝えに伺いました」
「え、僕に領主様が!?」
突然のことに悠真は目を丸くした。クルルも尻尾を振りながら兵士をじっと見つめている。