第15話 レアグレス攻防戦 その4
ーーー 第15話 レアグレス攻防戦 その4 ーーー
気づけば、悠真は1人でオーガすら倒していた。戦いが始まる前と今とでは動きが違いすぎるのだ。体の軸の安定、足の捌きが滑らかで高速になり、魔物の攻撃を見切り無駄な動きが減り洗練されていく。悠真の目にエンチャントがかかっているような光が宿っている。
悠真はバックラーを盾として武器として絶妙に使い分けることで、オーガの棍棒の攻撃を受け流し、武器を持つ手の甲をバックラーで殴りつけ、エンチャントがかかったロングソードはオーガを切り伏せた。
剣術だけではなく、エンチャントライトの効果も以前よりもずっと強力だと見入っていたミズキは感じていた。
戦いおえた術者本人である悠真が一番不思議に感じていた。
(体が動く。どう動いていいのか、どう剣を扱うのか体が知っているみたいだ……周りもよく見える。敵がどう向かってくるのか手に取るようだった)
悠真は自分の中に熱いものがあるのを感じていた。頭の中に、剣を振るう自分ではない、でも自分とも思える姿がよぎった。
「あの姿を僕は知っている!? 誰なんだ、僕はこの世界にいたことがあるんじゃないのか……?」
大勢は決した南門を前に、悠真は呆然と戦いの跡を見ながら、先ほどまでの自分ではないような戦いぶりを振り返っていた。
「悠真様? 大丈夫ですか?」
「うん……大丈夫だよ、ミズキ。ありがとう」
どこか、心ここに在らずという悠真の様子に不安を感じるミズキだった。クルルもロレインも悠真のもとに集まり、全員の無事を喜んだ。門の近くで生き残った守備隊と新人冒険者たちが集まっていくのが見え、悠真たちも合流した。
「まだどうなるかわからない。怪我人の救助とバリケードを再構築する組みと分けるぞ。怪我人は中央へ護送しろ。バリケード組は使えそうなものは何でも積み上げるんだ。」
南門の守備を任された隊長の指示のもとガイをはじめ冒険者も難民も全員で作業にかかった。作業をしているとわかる戦闘の大きさと被害状況。他の門は一体どうなったのだろう。避難していた住民や難民たちは無事なのだろうかと考えたが、今はやるべきことをやるしかないと作業に集中していた。
しばらくしていると、ガイが悠真のもとにやってきた。冒険者たちの様子を見て回っていたようだ。