第15話 レアグレス攻防戦 その3
ーーー 第15話 レアグレス攻防戦 その3 ーーー
さらなる大きな雄叫びと共に魔物が迫る。地響きも今までの比ではない。オーガもゴブリンも関係なく凄まじい形相で雪崩れ込んできた。
(このままじゃ、ここを抜かれる! 難民たちが、街の人たちが……くそっ!!)
「よく持たせたな。もう大丈夫だ」
悠真の前にガイが飛び出してきた。難民の先頭に立ち誘導していたが危機を知り向かってきたのだという。
「俺らも続けー!」
悠真が動き出すと、近くにいた他ランク冒険者たちも応援に駆け寄ってきたのだ。
「俺たちも戦うぜ! ここを進ませるわけにはいかない!」
「今日入ったばかりの新人にだけに任せていられるかよっての!」
「俺たちだって冒険者だ。名を上げるチャンスだ、街を守れ! 稼ぎどきだぜー!」
気づけば周りには避難誘導の任務だったはずの冒険者が集まっていた。士気が高いためか、動きが良く、各集団しっかりタンク役が複数ついて迎え撃とうと体形を組んでいた。
悠真とクルル、そして10名ほどの冒険者たちが協力して魔物たちを迎え撃つ。クルルは素早い動きでゴブリンを倒し、悠真も必死に攻撃を繰り出して応戦した。
「オーガも多いな、少し任せるがいいか? って、お前たち1匹お仲間が増えてるじゃないか」
ガイはクルルと話せるわけではないが、クルルに話しかけた。
「にゃ、にゃーにゃ、にゃー!!!」
(こ、こいつはどうでもいい、とりあえず任せろ!!!)
「ニ、ニャーニャ、ニャー!!」
(こ、こいつとはなんだ、この僕に向かって!!)
いがみ合っているクルルとロレインのやり取りは、ガイにはじゃれあってているようにしか見えなかった。
ふっと笑ってガイはオーガの群れに向かっていった。
その様は圧倒的だった。
ガイは大剣使いであり、かなりの重さだろうバスタードソードを軽々と振り回し、一振りでオーガを切り倒していく。
負けるか、と言わんばかりにクルルもオーガを倒していく。
それでも、追いつかない。どれだけの魔物が迫っているのか想像もできない。
突如大きな音と振動があった。門の扉だけでなく、塁壁までもが破壊されさらに多くの魔物が一気に押し寄せてきた。こうなるとまだ奮戦している守備隊の兵士もどうにも止められない。ましてや低ランクの冒険者たちも逃げに入ってしまっている。
「あの牛の頭の……ミノタウロスじゃないか!?」
ファンタジー世界でよく聞く、牛の頭を持ち、斧を振るう魔物。オーガより少し小型だが、圧倒的な存在感も強さも桁が違った。必死に耐えていた守備隊の兵士を大楯ごと斬ってしまっている。
「悠真さんも引いてください」
「ミズキ、大丈夫。ここは引いちゃいけないとこだ」
悠真はここが勝負どころだと感じ、エンチャントライトを範囲魔法にして放つ。ミズキとの魔力操作の訓練の成果が出た。悠真、クルル、ロレイン、ガイの4人の剣と弓矢が光り、切り裂く攻撃の威力が増す。
「おい、なんだこれ。力が増してるのを感じるぞ。まあいい、あの牛野郎は、俺に任せろ。他を頼むぞ」
「お願いします、ガイさん。他は任せてください」
「「にゃー!」」
前衛3人は一斉に魔物に向かった。クルルの鉤爪が魔物たちの首を飛ばし、ロレインの矢がオーガにヘッドショットを決めていく。何より、ガイの無双ぶりには目を疑った。オーガたちがまるで紙切れのように切り裂かれていく。
(あれがこの世界の実力者の力か。よく見ろ、体の使い方を、剣の動きを。イメージを重ねろ……)
ガイを手本に、予備動作から攻撃への繋げていく体の使い方、剣の流れ、そして狙い所がどんどんトレースされ、戦いの中で悠真が別人のように変わっていく。
ミズキは悠真のサポートだったが、その異常なまでの成長ぶり思わず見入ってしまっていた。
「悠真様、すごい……」
「なんなんだ、あの守護者くんは……本当に別人のようだ。それにあの目の光は一体……」
ひとり、ロレインだけは悠真との接点が少なかったせいなのか、異常な光景を冷静に受け止め疑問を抱いていた。