第13話 ギルド その2
ーーー 第13話 ギルド その2 ーーー
都市の中心部にある冒険者ギルドの扉を押し開け、初めてその空間へと足を踏み入れると、話し声や笑い声、そして何かを叩くような音が聞こえてくる。剣や弓を背負った者、魔法使いのようなローブを着た者が所狭しと行き交い、こんなにも冒険者の多さに驚く。
受付の前にはクエストを受けるために列行列ができていた。悠真たちが月影亭でゆっくりしている間、ギルドでは依頼を取ろうと朝早くから多くの人々で賑わっていた。
ギルド内は高い天井に木材の梁が巡らされ、壁にはクエストがまだいくつか残っている。早朝には数えきれないほどの掲示板が並んでいて、そこには討伐依頼や護衛任務が隙間なく貼られており、冒険者たちが真剣な顔で目を走らせて争奪戦が繰り広げられていたのが想像できる。
「これが…冒険者ギルドか。想像以上に活気があるなぁ」
悠真は驚きの声を漏らしながら、傍らにいるクルルに目をやった。クルルは気にも留めない様子で尾を揺らしながら悠真の足元に座っている。
「そんなに固くならなくても大丈夫だ。ほら、行くぞ。」
悠真の隣にいるクルルが軽く尻尾で彼の脚を叩くように促した。その仕草に、悠真は思わず肩の力を抜いた。
「おはようございます。見ない方ですね、クエストの依頼ですか? 受注ですか? または冒険者登録をご希望ですか?」
受付に立つ若い女性が、にこやかに声をかけてきた。彼女は整った制服に身を包み、髪をきっちりとまとめている。その笑顔には、どんな人でも歓迎するという温かみがあった。
「ええ、登録をお願いしたいんですが。初めてなので……システムなんかも教えてもらえますか?」
悠真は少し緊張しながらも丁寧に答えた。
「もちろんです。では、まずはこちらの用紙に必要事項をご記入ください。それから、登録料として銀貨5枚が必要です。また、冒険者としての適性を確認するため、簡単なスキルチェックを行いますので、ご協力をお願いします。」
女性は流れるように説明しながら、一枚の用紙とペンを差し出した。
用紙には名前、年齢、得意分野、そして特殊技能を記入する欄が並んでいた。悠真はペンを取り、丁寧に書き込む。ふと視線を上げると、クルルが彼の足元でじっとその様子を見つめている。
「名前は…悠真。特殊技能の欄は…『光魔法』でいいのかな。」
この世界の言語に不慣れな点もあるが、むしろこの世界の常識がないのだから、一つ一つ確認しながらになるため記入するスピードも慎重になる。そんな時、ミズキが念話で待ったをかけてきた。
((待ってください、悠真様。魔法のことはまだ伏せておきましょう。光魔法なんて人間族で属性を持っている人なんてほとんどいませんから))
((え? 本当? 村では何も言われなかったのに))
((それはエノコ村は猫神様の信仰が深いですし、悠真様のことを守護者だって認識していますから。猫神様の信仰が薄い地域で、ギルドの新人が光属性となったら大騒ぎになりますよ、きっと))
自嘲気味に笑う悠真に、クルルは低く一声「にゃあ」と鳴いた。
「ご自身の技能を無理に書こうとする必要はありませんよ。初めて登録する方で技能欄が空欄でも、それぞれの個性に応じた役割や依頼がありますから」
受付の女性は優馬に特筆すべきスキルなどがないから困っていると感じて励ますように言ってくれたようでだが、隠し事をしていただけだと思うと申し訳なくなる。
(まあ、目立つよりはいいかな)
「それでは、こちらで登録を進めます。次にスキルチェックのため、隣の訓練場へお進みください。」