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第12話 会談


ーーー 第12話 会談 ーーー


 ようやく到着した都市レアグレスは活気に満ちた都市だったが、どこか張り詰めた空気を感じさせた。道行く人々の中に「王都でまた異変が起きたらしい」「北の山のほうで魔物の群れが現れた」「魔物の襲撃でいくつも村が潰された」など、不穏な話が飛び交っていたからだ。



 城門から中に進み、避難民街を抜けると市場が見えてきた。都市の外で魔物の騒動があったとしても、多くの不穏な話が聞こえてこようとも、この街には多くのモノと人が溢れ、多くの店が立ち並び、露店に賑わいが溢れていた。

 客を呼び込む声や商品を売り込む声などが飛び交い、悠真たちにも声を掛けてくる露天商も少なくなかったが、エノコ村で見聞きした物価と違い値が高いことに驚き、村から与えられた路銀にはあまり余裕がなかったこともあり、愛想笑いをして通り過ぎるしかなかった。

 そうこうして市場を抜けた先の守護隊詰め所に辿り着き、エノコ村を代表してやってきたことを入り口の兵士に伝えた。


 出迎えたのは、守護隊の隊長を務める中年の戦士、ヴァリス・グレイドだった。大きな都市の守備隊の隊長というだけあり、偉丈夫という言葉が似合う精悍さがある。悠真は、ヴァリスにもシバやアシュに感じたような強者の雰囲気を感じていた。


「よく来てくれたな、悠真殿。手紙は拝見した。シバ殿はお元気そうで何よりだ。そして……こちらがそのクルル殿か。眷属という存在に初めて会ったが、噂以上に威厳を感じるな。もうひと方は?」


 いきなり隊長だと言われて驚いたが、シバ村長と知り合いだからかと納得した。本当にあの村長は何者なんだろうか。そして、レアグレスは決して猫神信仰が深くない土地なのに、この隊長は猫神の眷属について知っている様子だったので助かった。


(それにしても、クルルはどこにいっても堂々とした態度でいるな)



「はい、エノコ村を代表して参りました悠真です。こちらこそ、急な訪問にもかかわらず、ご協力に感謝します。クルルと同じく眷属のひとりでミズキです」


 ミズキが杖を体の前に斜めにして両手で持ち、軽く会釈とひと鳴きして応答した。


「シバ村長は、それは元気でして……と言いますか、高齢にも関わらず強すぎです。絞られてきました。」


 シバをダシにしたあいさつは済み、アルタリア王国で起きている異変について情報交換の流れになり、まずはエノコ村の状況を話、次にヴァリスが神妙な面持ちで話を始めた。


「そちらの状況はわかった。瘴気を持った魔物か、これは憂慮すべき事態のようだ、こちらで領主へも上奏しておくとしよう。それにしても、ここ数ヶ月アルタリア王国内では奇妙な事件が相次いでいる。エノコ村同様、魔物がこれまで以上に活発になり、周辺の村々が襲撃を受けている。それだけではない。王都内では不可解な病が流行し、広がりを見せている。さらに、先日、王城内に……」


「ちょっと待ってください、王城…って」


 ヴァリスは険しい顔で頷いた。


「シバ殿には言ってもいいが、他の者には他言無用だ」


 先日、王城に賊が入り『月晶のレガリア』と呼ばれる魔法具を奪って行ったらしい。王国を守るための結界に深く関係している代物で、結界の力が弱まり、周辺地域への魔物の襲来が増えていると考えられているという。


「いや、あの。聞いてしまった後で申し訳ありませんが、このような重要なお話を僕らが聴いてしまっても大丈夫だったのですか?」



「話してもいい人物だからシバ殿が君を寄越した、と思っているのだがね。何も聞いてないのかね?」


「はい……」


「相変わらずだなシバ殿は。種明かしをするとだな、君に猫神の守護者として経験を積んでいく必要があるから、多くの経験をもとに成長して多くの人のために行動できるようにしてくれ、という内容が書かれていたのだよ。無論、村へ情報を持ち帰らせるようにも書かれていたがな」



 なるほど、という反応を見せる眷属2人に対して、やられた! と言わんばかりの表情になってしまった悠真に、構わずヴァリスは話を続けてきた。


「王国の守護隊も総力を挙げて調査しているが、手が足りない状態だ。そこで、冒険者ギルドにも要請を出してはいるが、君たちの力も借りたい。猫神の加護を受けている君なら、この危機に立ち向かえると期待している」


 

 悠真は出されていたお茶と共に事態を飲み込んだ。


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