第11話 旅立ち その2
ーーー 第11話 旅立ち その2 ーーー
突如、茂みの中から唸り声とともに一体のシャードウルフが1体飛び出してきた。鋭い牙をむき出しにし、悠真たちに向かって突進する。
「来るよ!」
悠真が叫ぶと同時に、クルルが前に飛び出す。クルルは素早い動きで敵の攻撃をかわし、後ろ足で反転してシャードウルフの脇腹に一撃を加える。だが、硬い皮膚に覆われているせいかダメージは浅い。
「お、思ったより硬いな」
一撃で倒せなくてクルルは不服そうだ。シャードウルフは頭から背中にかけて硬い鱗を持った狼型の魔物であり、俊敏さは他の狼型の魔物に比べ若干劣るが防御力が高い分、危険な魔物として知られていた。悠真はまた初めて遭遇する相手だけに、しっかり敵の動きを観察し、弱点を探る。
「(効いてる)左後ろ足が少し遅れてる……そこが狙える!」
切れはしなかったものの打撃としてダメージを負っていたことを悠真が弱点を指示し、クルルがそこに飛び込み、ミズキが魔法を詠唱している。自身は右へ回り込む。
「ウォーターボール!」
シャードウルフの脇腹にヒットし一瞬動きが止まった。
「今だ!」
最後に悠真が剣を振り下ろし、首元に剣を振り降ろした。シャードウルフの最期の雄叫びが森に響いたが、これで終わった。
しばらく悠真は呆然としていた。切れ味が以前の剣と違いすぎ、振り下ろした悠真自身が驚いた。力の乗り方、切れ味のどちらも段違いにいい。
「やはり、業物だったらしいな」
クルルが悠真の様子で察した。
「硬い鱗の筈なのに、スッと斬れて……業物ってそんなにすごいものを」
受け取った新しい剣は普通のロングソードとは違い、片刃で少し反り、日本刀のような形状をいている。柄は西洋風で装飾があり、独特な紋様が入っている。何か由来のあるものなのだと思い、しっかり握り直して剣を見つめた。
「その剣の力が使いこなせれば悠真も一人前ってことだ。しかし、今回はいいところを持っていかれたな」
「いい連携でしたものね。クルル様」
「2人は余裕だなぁ」
実戦となると緊張からか、短い戦闘だったが息は切れてしまうし、疲労感はとてつもない。
「最初に飛び込むのは無理でも、相手を観察してから動く……。2人もいてくれる。これなら、僕でも戦えるよ」
悠真は小さくガッツポーズしていた。しかし、妙だなと感じることがあった。狼って普通群れで行動するものなんじゃないだろうかと。