第11話 第11話 旅立ち
ーーー 猫神様 第11話 旅立ち ーーー
ある朝の猫屋敷は、悠真たちは出発の準備で忙しさの中にあった。テントに寝袋、水に調理具に食材。
「ねぇ、クルル。レアグレスまでってどのくらいの日程なの?」
「そうだな、早ければ7日。10日もあれば着くだろうさ」
(10日間のサバイバルかぁ、想像つかないな。ソロキャンプも最長2泊3日だったし、やっぱり魔物に遭遇しちゃうんだろうか)
「荷物はこれくらいですか?悠真さん」
フローラも荷支度を手伝ってくれてい他のだが、上の空だった。
「えっと、ありがとう。不慣れだから助かったよ」
「どれだけ裕福な生活をしていたんだ悠真は」
「そんなに裕福ってわけじゃなかったけど……」
使う道具が何があるか分からなくて困っていただけなんだけども、日本の暮らしと比べたら、やはり裕福なんだろうと考えてしまい、その後の会話もあまり頭に入ってこないのだった。
今回の要員は、フローラは村を守るために残り、悠真、クルル、ミズキの3人で向かうことに決まっていた。自警団も村を守るのが優先なので旅には同行しないが、準備までの間に自警団で訓練を受けさせてくれるなど協力的だった。アシュ隊長の指導のもとで対人戦闘と対魔物戦闘の違いなど教わることは多かった。
フローラは最後に悠真へ言葉をかける。
「悠真さん、あなたが村を離れるのは心配事もありますが、私たちに任せてください。どうかお気をつけて」
「フローラのおかげで、怪我人も病人も全員回復しましたし、なんと言っても村長も隊長も自警団の皆さんもいますから安心してますよ」
「そうですね、みなさんがいますから」
クルルがその場を締めるように一声鳴き、悠真たちは村を後にした。
半日ばかり進んだろうか。道は広くはないが見通しはよく、森林の景色は間引きという手入れがなされていて綺麗だった。地方まで行き届いた行政ができているということは、この国は安定している国なのかもしれない。
最初は冒険に心が躍り順調に歩を進めていたが、徒歩の旅に不慣れな日本の文化系人間。体力がなくなって休憩したいせいと靴のクッション性があまりに違ったためか足が痛み、ぼやきが出てしまった。
「意外にバックパックの重さは来るなぁ」
「進めば荷物は減って少しずつ軽くなるし、これも修行だ」
「それはそうなんだけどねえ」
水や食糧は確かに日数とともに減っていくが、武具や野営道具などの重量に変わりはない。よくアニメで見るアイテムボックスとかあればどんなに楽か。車でもあればどんなに楽かと思ってしまうのだった。
「すみません、2人に私の分も負担してもらってるので」
「ごめん、ミズキ。いやそんなつもりじゃ」
ほとんどが自分のための荷物だとわかっていたのに、ぼやいてしまっていたことに猛省した。荷物は仕方ないとしても、せめて靴のクッション性が欲しいと思い、作りたいものリストに靴が加わった。
こんな会話をしながらも、悠真は妙な違和感を覚え始めた。鳥たちが後ろからやけに飛んでくるからだ。鳴き声もどうも警戒しているようなものがしばしば聞こえる。休んでいる場合ではなさそうだ。
「どうしたのですか、悠真様?」
「鳥たちの様子がおかしくない? 何かが近づいてくるんじゃないかって気がするんだ……」
クルルも気づいていたようで、無言で頷き、耳を立て……低く唸る。
「悠真、ミズキ、荷物を置いて構えろ」
「わかった」
「はい、クルル様」