第9話 浄化の力 その2
ーーー 第9話 浄化の力 その2 ーーー
社の奥に着くと、悠真とクルル、フローラ、タヤンそしてミズキのみで祠に入った。
社の奥の祠は、静かな森の中にひっそりと佇んでいた。古びた木と石づくりの祠は長年の風雨に耐えてきたため、表面には苔や蔦が絡み、神秘的なものを感じさせた。小さな階段を上がった先に、猫神様を象った石像が安置されており、柔らかな眼差しで訪れた自分たちを歓迎してくれたように見えた。
「これって日本の神社で見た石像と同じ!?」
辺りは清らかな空気が漂い、時折、鈴のような音が風に乗って聞こえる。
猫神像の前に来ると、タヤンを始め眷属たちも膝をつき、深く祈りを捧げた。悠真も慌てて習うように同様にした。
「猫神様…どうか、この地を浄化し、村をお守りください」
タヤンが口にした祈りの言葉に応えるかのように、祠の中からほのかな光が現れ、その光が悠真と水晶を包み込んでいく。
気づけば周りに誰もいない。暖かな光に満ちた場所にいる。目の前には瘴気に満ちた水晶がある。
「悠真、大義でした。この瘴気は闇の力です。あなたにはすでに光の力を授けました。イメージし力を引き出すのです。」
猫神様がそこにいるのだろうことは感じるが姿は見えない。それよりも自分に瘴気を浄化するほどの力があるとは到底思えない。
「僕にそんな力が?」
「あなたの力はあなた自身に呼応します。現世に行けない私の代行者でもあるのです。光は聖なる属性の力。あなたの善なる心と意志の力に呼応します」
悠真は、水晶に蠢く瘴気が消えていくイメージを。周りのものを壊してしまう瘴気を浄化されクリアな状態になるイメージを。禍々しさではなく暖かなイメージを強く持つと言葉が浮かぶ。
「プリフィケーション・レイ……」
イメージし、心に浮かんだ言葉を口にする。すると、水晶は柔らかな光に包まれ、瘴気は少しずつ小さくなり、煙のように消えてなくっていった。
「ありがとうございました。僕の力とは一体何なのですか? 僕の使命とは一体何なのですか?」
「あなたの力は正しくあれば、今後自ずと見えてくるでしょう。残りの眷属を探しなさい。あなたの道も自ずと拓け、使命が何か分かる時がくるでしょう」
「僕と眷属次第……」
「悠真……猫たちとともにあなたの道に光がありますように……」
またも話半ばで猫神様は消えてしまった。時間制限があるのか、制限しなければならないのか。制限されてしまっているのかも分からない。
そして、自身の力とは何なのか。この村は始まりに過ぎないというのは一体どういうことなのか。相変わらず情報が足りない。
分かったことは、眷属のみんなと歩むこと。
「浄化が成功したようですね」
気づけば祠に戻っていた。ミズキが微笑んでいるのが見える。彼女は1人で危険なものを背負ってきたのだ、よほど安心したのだろう。
「悠真さんは光の力が完全に目覚められたのですね。光は聖属性。瘴気をはじめとする伝承にある邪なる者たちの力は闇属性だと言われています。今後、それを育てていかれることをお勧めいたします。悠真さんの道に光がありますように」
タヤン神官も猫神様から何かしらの神託を受けたのだろう。事情を察してくれたらしい。村への説明も一任してくれるよう申し出があった。