第7話 汚された水源 その2
ーーー第7話 汚された水源 その2 ーーー
水源となる池の奥の方は深く濁り、水の流れと共に異臭と瘴気が感じられ、水面には多くの魚の死骸が浮かんでいた。
「これは…まずいんじゃないのか」
悠真がつぶやくと、そばでクルルも警戒を強める。
「何かいるぞ。向かって来てるぞ」
気休めに持ってきた首に巻いていた布をマスクがわりに付け直し、剣とバックラーを手にした。
水面に大きな何かが複数泳いでるのが見える。今日は調査の予定だが、完全にこちらを認識して向かっているようだった。これは逃げに入ってはならない気がすると感じ、剣を持つ手に力が入る。
「調査じゃなくなるけど、戦おう」
「ああ、逃がしてくれなそうですぜ」
「援護射撃、いつでも行けます」
「いい判断だ。構えろ」
3人とも本当に頼りになる。すでに全員が各々の武器を構えていた。
水源の池から何かが飛んできた。魚のようだが、やはり異形のものだ。
襲ってきた魚のような魔物をそれぞれが対応し撃ち落としていく。悠真もバックラーで受け流すことができた。
悠真が受け流した魚の魔物は、悠真が剣で突き刺す前に川へ向かって跳ね、水の中に戻っていった。その様子から、全員が取り逃さず襲ってきたものは確実に倒さなければならないと認識した。
池の水面からは、ぬめりとした黒紫の体が浮かび上がり、鋭い目で4人を睨んだ。
「あれが瘴気の元凶かな、すごい瘴気だ」
「ああ、そうだろうな。しかし瘴気を持つ魔獣か…。少々やっかいだ」
4人の視線先には、瘴気を放ちながら水辺にゆらゆらと動く魔獣が3体、地を這うように接近してくる。
水中からは異様に膨れ上がった異形の魚が何匹も飛び跳ね、口から鋭い牙をむき出していた。それらの魚も瘴気をまとっており、狂気じみた目で悠真たちに狙いを定めている。
瘴水魔獣たちが唸り声を上げると同時に、魔物化した魚たちが水中から一斉に飛び出し襲いかかってきた。
「悠真、下がれ!」
クルルが鋭い声で叫び、悠真の前に立ちはだかった。クルルとクバンが前衛に、真ん中に悠真、少し後ろにリットという並びになる。全員が魚の動きを見極め、素早い前足で一匹ずつ叩き落としていく。
「なんだこいつら、次々と湧いてきやがる…!」
「この数全部に弓は使えない。クバンしっかり凌ぎなさいよ!」
自警団の2人は戦いなれているのが分かる。クルルも余裕があるのか悠真を振り返る。
「クルル、僕は大丈夫だ自分で対応できる。前に集中して」
(これくらいの数なら……)
悠真はバックラーで魚に打撃を与え剣で刺すを繰り返しながら、なんとかその場を維持した。
魚は次々と前方にいるクルルとクバンに向かって突撃してくるが、彼らの俊敏な動きと的確な攻撃で次々と撃退されていた。魚たちの攻撃の向こうで魔獣たちが水から上がって来ているのが見えた。
「陸に上がって来てくれるとはありがたい」
クバンが笑いながら剣を構えた。水性生物が水の中にいたら当然向こうのほうが動けるに違いない。
「どんな魔獣なのか知ってますか?」
「いや、あんなものは初めてみる」
「ええ、この森で見たことがありません」
「悠真、それでも陸に来るってことは自信があるからだ。気をつけろ」
「うん」
(僕は、クルルのように見てから対応なんてのは無理だ。観察しろ……対応するには少しでも予測するしかない)
形状はトカゲのような体に割と大きな足。頭はサメか? 深海のやつでラブカってのに似ているような。尾ひれは意外に長い。攻撃は体当たり、尾鰭、噛みつきだろうか。クルルの言うように陸に来ても自分たちを凌駕できると魔獣が思っているのなら、陸での動きも速いのか?
観察と分析をするうちに悠真は集中していった。