第7話 汚された水源
ーーー 第7話 汚された水源 ーーー
タヤン神官とフローラに引き続き衛生管理や貯水池の浄化を任せ、悠真とクルルは早朝から水源調査へ向かっていた。村に流れる川の水の色や味が変わってきているのが誰の目から見ても分かるようになってきたのだ。
調査は悠真、クルルに加えて自警団から選り抜きの2人。アシュ隊長推薦のクバンとリットの合計4人で向かっている。水源は村のから1時間ほどのところにあり、道中はこのところ魔物の出没も増えている場所でもある。
「どんな感じだ? 悠真」
「装備? カッコいい上に動きが制限されたりもなくていい感じかな」
「あの村長も鍛治師もなかなかやるな」
今日もクルルの笑い声は高らかだ。
「村長は10年くらい前までは現役でしたし、当時は冒険者として大陸でも指折りの名の通った方でしたからね」
「鍛治師のロッドウェル爺も噂じゃ、昔ドワーフの教えを受けたとかなんとか。こっちは眉唾ってのが俺たちの話だけど、何にしても自警団は爺さんたち2人と隊長のお陰で回ってるようなもんさ」
リットは自警団で数人しかいない女性団員で優秀な弓使いだ。丁寧な人当たりで気配りもできるから後方支援にと薦められた。一方クバンは、先日助けたボルンの兄で志願して同行に加わった。
「そうなんですね、こんな立派な装置をそんな人たちに用意してもらって本当にありがたいです」
そう、村長が装備を見繕ってくれたのだ。クルルには毛の色と同じ黒色で、長めの鉤爪がついたガントレット。動きを損なわず攻撃力もあると言って喜んでいた。
悠真には体格に合わせた装備が用意されていた。訓練の時に悠真の特徴を掴んでロッドウェルに頼んで急ぎ装備を持ってきてくれた。右肩から上腕にかけての肩当てに左胸を覆う革のプレート。腰のベルトに木の鞘に入れた優馬にも扱いやすいロングソードとバックラーを下げている。自分には十分すぎるものだと感じていた。
「たださ」
「なんだ?」
「準備はいいけど、昨日もすごい特訓だったから筋肉痛があるかな、ははは」
「筋肉痛? 動けば治るぞ」とクルルが満々の笑みで応じる。
「クルル様はなんて言ったんで?」
「動けば治るぞって」
3人はどっと笑った。
昨日はクルルの修行の後に、装備をつけた状態で村長による訓練を受けたので、身体中がギシギシ言っている。でも装備と訓練のおかげで勇気が湧いてくる。
和やかに進んでいたが、水源まで半分くらいのところまで入った辺りからは慎重かつ静かに周囲を警戒しながら向かい、やがて川の流れに沿って水源に近づいていった。
幸にして魔物は出なかったが、水源に近づくにつれ腐敗したような臭いが漂い、澄んでいた水が奥に行けば行くほど薄暗く濁っていった。