プロローグ2
「私の声が聞こえますか?」
その声は確かに聞こえた。再び耳を澄ませると、はっきりと響いてきた。
「あなたに試練が訪れます。その代わり…乗り越えるためのチカラと100匹の守護眷属を与えます。どうか乗り越えられますように」
悠真は戸惑いながらも、どこか引き寄せられるような感覚を覚え、再び石像を見つめる。その猫の石像の瞳が、まるで金色の光を帯びたかのように怪しく輝き始めていた。
「誰だ? 試練? 守護? ……って色々どういうことですか?」
そう尋ねると、声の主は静かに言った。
「武運を……猫と共に」
何も言葉を返す間もなく、彼の視界が急にぼやけ、眩い光に包まれた。その瞬間、体がふわりと浮かび上がり、重力がなくなったかのように宙に漂う。
「え、ちょ、ちょっと待っ——!」
目を開けると、そこは見知らぬ森の中だった。
(神社じゃない。暗くて遠くまで見えないど、どこなんだろう)
澄んだ空気に包まれた異世界。悠真が驚いて立ち上がろうとしたそのとき、ふと気配を感じ、足元に視線を向けた。
そこには、金色の目を持つ一匹の黒猫が佇んでいた。気のせいか一瞬驚いていたように、耳がピクンと動いたが、前足をじっと揃えて座ったままで悠真を見上げて何かを確かめるように目を細めるその猫は、どこか誇り高そうな品がある猫だった。