第4話 遭遇 その3
ーーー 第4話 遭遇 その3 ーーー
戦闘が終わり、安堵の息が広がった。しかし、悠真はその場に立ち尽くし、自分の無力さを痛感していた。戦いを見守るしかなかった自分に、心の中で悔しさが込み上げてくる。
「さすが、猫神様の眷属ですな。あれはおそらくグルームウルフの亜種でエスぞ」
「にゃー」
言葉は通じないはずだが不思議とコミュニケーションが取れている。
悠真は2人の姿を見つめていた。あの身のこなしに、あの攻撃力。アシュもクルルと初めて戦うのに連携が取れていた。お互いがどう追い込もうとしているのか、魔物の状態をしっかり見極めて戦っていたような、一撃の威力も凄かった。しかも、通常グルームウルフ(闇狼)はあそこまで大きくも、異形ではないのだという。村の周辺の異常さを物語っていた。
「僕も……戦える力が欲しい」
クルルが彼のそばに寄ってきて、悠真を見上げる。その目には、仲間として彼を励ますようなものを感じる。
(今は何も言うまい。しかし、目は追いついていたようだな)
落ち込む悠真とは逆に、クルルは将来の可能性を見ていた。
フローラが村人の怪我の手当てが終わり、ふと川の方に目を向けた。川の水は、微かに濁っているのに気づく。
「クルル。ありがとう。助かったわ。悠真さんでしたね」
「よろしく、フローラ。その人は大丈夫そう?」
「その前に悠真さんですよ。腕を見せてください」
「ありがとう。魔法って本当にすごいね」
「礼には及びませんわ。悠真さんこそ、ありがとうございました。彼は命に別状はありませんわ。でも出血量が多いですから、早く休ませてあげたいですね」
「あのな、悠真」
訝しい表情でアシュが尋ねてきた。猫神の眷属と話せるのは神官くらいだということらしく、ダンの状態を聞いてたがどうなのか心配で話しかけてきたという。つまり、これが猫神様からもらった力なのだろうか。
「悠真、ダンの状態はどんなだと?」
「あ、すみません。出血が多いのが気になるけど大丈夫だと」
「わかった。ありがとう猫神の眷属の方」
フローラはにっこり微笑んだ。猫たちは人間の言葉はなんとなくわかるようだ。
「アシュ隊長……まだラノとボルンがこの先にいるはずなんです」
「わかった、任せろ」
ダンの胸に手を置き、今は休めとひと声かけ、駆けつけた自警団を率いて山奥へ入っていった。山奥の小さな自警団とは思えない規律を持った素早い行動にアシュの優秀さを感じる。
「ダンさんも動き出すにはもう少し時間が必要だし、自警団が戻ってきたら村へ行こう」
クルルもフローラも頷く。
ダンの呼吸が安定してきた頃、自警団は2人の重症者を連れて1時間もしないうちに戻ってきた。フローラの癒しにより2人の出血だけは止め、負傷している3人の安静を保ちながら帰村した。
「あの悠真さん、この近くの川の水が少し濁り始めているようなのです。もしかしたら、魔物の瘴気が流れ込んでいるのかもしれません。村は大丈夫なのですか?」
知っている限りの事情をフローラに伝え、村で村長たちとも話すということになった。
改めて「守護者」として召喚された意味を見出さなければならないと、自らの課題の状況を理解した。同様に村が現状抱えている問題もしっかり知る必要があると理解した。
「色々大変だったけど、これからも手伝ってくれるかなクルル。フローラ」
「当たり前だ」
「私たちは守護である悠真と共にある存在です。当然です」
ーーー 悠真のねこ紹介②ーーー
フローラ:ラグドール
原産国はアメリカ。非常に穏やかで社交的な性格と美しい外見を持つ猫種として人気。
割と大柄の猫だが、愛情深く人懐っこい性格だと言われています。(フローラは大柄の設定ではありませんが)
名前の由来は、ラグドール(ぬいぐるみ)のようにリラックスして抱かれてしまうことから来ているそうです。
長毛種で、色によってペットショップでは人気も差があり、お値段も違うようです。
フローラは人気のブルーポイント。白をベースに耳や顔にブルーグレーがあります。愛情深くて美しい外見なんて、回復系猫のフローラにぴったりです!
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