第3話 猫屋敷と宴 その2
ーーー 第3話 猫屋敷と宴 その2 ーーー
ようやく落ち着きを取り戻し、こちらの文化に合った衣服を用意してもらっていたため、着替えを済ませた。いつまでもスーツでは目立つというよりも変人扱いすらされかねない。
「どうかな、クルル。変じゃないかな?」
「良いと思うぞ。それなりの身分の者に見えるし、動きやすさもありそうだ」
くあ〜っと、あくびをしながら感情のこもっていないスローな返事が魔を置いて戻ってきた。関心がない時には本当に猫というのは無関心な反応になる。
そんな反応でも悠真は用意してもらった衣服が気に入った。シンプルなチュニック風の白をベースにしたシャツは、コットンだろうか。襟元や袖には幾何学模様の刺繍が施されており、民族衣装といってもいい色調になっている。
ボトムスは丈夫な布製のズボン。ダークブラウンでシャツとの色合いもマッチしている。同じ色の革ベルトでシャツをキュッと止めることで全体的にもとても締まったデザインになっている。
「こういうの着てみたかったんだよね」
どうせ返事はないだろうと思いつつ口にすると
「あら、お似合いじゃないですか悠真様。あり合わせ服でしたがサイズもぴったりでしたね」
部屋の入り口に立っていたのはタヤン神官だった。歓迎の宴の準備ができたと迎えにきたとのことだ。
「ありがとうございます」
お礼のついでに『様』という敬称をやめてほしいとお願いをした。やはり、様なんてで気恥ずかしい上に、今は何もしていないので敬称をつけて呼ばれるのはおかしいと固辞した。
結果、さん付けということで折り合いをつけてもらい広場へ向かった。
村の中央広場には、仕事を終えた村人たちが集まり、すでに賑わっていた。しかし、違和感があった。村に入ってから見た民家と思われる家の数に対して集まっている人数が少ないように感じたからだ。
そんな悠真の様子をシバは気づいたが何も言わず、近寄ってきた。
「この村の者みたいに見えるぞ、悠真」
「とてもいい衣服をありがとうございました。ですが、こんな宴なんて用意してもらってよかったんでしょうか」
「村の者には伝えなけりゃならんし、ここで生活するためには紹介しておきたい者もおるでの。それに、なんじゃ。ワシが飲みたいってのもあるがの。ま、そういうことじゃ」
このシバという村長はどこまで何を本気で言っているのか。隣で豪快に笑っているのを見ながら、なるほど、歓迎半分お披露目半分ということかと納得することにした。