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宿り木カフェ  作者: 桜居かのん
Case1 家族を亡くした21歳
4/49

4


*********



「ポンポンポン!」


パソコンから音がして、私は我に返ると慌ててそちらに向かう。

この音は相手がログインして待機しているのを知らせる音だ。


今日は夜の9時から30分間の予定。

これが今、私の唯一の支えになっていた。





『宿り木カフェ』


-「このカフェで少し心を休めてみませんか?」-




というキャッチフレーズの書かれたサイトを見つけたのは、一ヶ月ほど前のことだった。


心が辛い、心を休めたい、愚痴を聞いて欲しい、そんな言葉をネットの検索欄で打ち込んでいたら、このサイトに行き着いた。


『宿り木カフェ』なんて名前がついているが、ようは話を聞いてもらう『客』と話を聞く『スタッフ』を繋ぐ変わったサイトだ。


それも、客は女性のみ、スタッフは男性のみという事で、一瞬怪しいサイトなのではと思ったけれど、色々注意書きを読んで気がつけばお試し通話をしてしまっていた。


本来の私なら怪しくて踏み出さなかったかも知れない。

でも、何かにすがりたい、聞いて欲しいと必至に思っていた。

それほどに私は疲れていたのだ。



そのカフェを使うにはまず会員登録が必要で、何を話したいか、どういう現状なのかという事を記入し、どのようなスタッフを希望するのか記入する。


サイトの注意書きには、スタッフは必ずしもご希望に添えるわけではありません、との注意書きがあったのだが、


『50代くらいの人、家族を事故か事件で無くしているけど穏やかな人』というリクエストをつけた。


そして今、私はネットの向こうにいるこの人と話すのを心待ちにしている。


私は時計を見て、昔から使っているお気に入りのマグカップに入れたコーヒーをパソコンの横に用意し、ヘッドセットをつけた。







『お帰り、由香ちゃん』


「ただいま~」


9時のスタートと同時に、優しい声が私の耳に届く。


私はその声にホッとしてようやく力が抜けた。


本来ここではニックネームでも良いのだが、話すうちに本名で呼んで欲しくなって本名に変更した。


今ヘッドセットの向こうから聞こえる声の主は50代会社員の人で、奥さんを数年前交通事故で亡くしたのだと最初の自己紹介で聞いた。


子供はおらず、一人暮らしとの事だった。





この『宿り木カフェ』の利用には色々なルールがある。


①利用は一回30分を20回まで。


初回は30分自己紹介として無料分がついてくる。


20回以降の利用は新たな申請となり、同じスタッフを指名することは絶対に出来ない。


②お互いのプライベートな連絡先の交換、及び会う等のこのサイト以外での接触行為は禁止


あくまで一時やすらぐだけの場所、このカフェに、そしてスタッフに依存させないようにする為との事だった。




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