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私はずっとリュウさんの言葉が気になっていた。
彼は本当に私を狙っていたのだろうか。
知りたい。
結局私はその欲求に勝てなかった。
久しぶりのデート。
いつものように食事をし、ホテルに入った。
彼から降り注ぐ口づけを味わったあと、私は切り出した。
「実は聞きたいことがあるの」
私の真面目な顔と声に彼はきょとんとしたあと、お互い並んでソファーに座る。
私は少し俯いた後、意を決して彼を見た。
「あのね?最初の時、ゴム持っていたよね?それは何故?
もしかして・・・・・・私を狙っていたり、したの?」
最後、怖くなって目を彼から背けてしまった。
気のせいだ、自意識過剰だと言われるのが怖くなったのだ。
だけど少し時間をおいて、笑い声が聞こえる。
私は驚いて彼を見た。
「なんだ、てっきり俺の気持ちを知っていたものと」
目を見開く。
どういう事だろう。
「え、気持ち?
もしかしてあの夜よりずっと前からってこと?」
「そうだよ」
「じゃ、じゃぁあのプロジェクトに選抜されたのは・・・・・・」
「それは勘違いしないでくれ。
仕事はプロ意識を持ってやるよういつも言っているだろう?
まぁ2回目の出張は完全に自分の下心で泊まれるように日程を組んだだけ。
そもそも君の仕事の部分は切り離していたよ。
そして最初のプレゼンは君だからこそ任せたんだ。
出張で泊まることに決まったときは、あわよくばと思っていたことは認めるよ」
にっこりとそう言い放った彼を呆然と見る。
全てリュウさんの言ったとおりだった。
急に、もしかしてリュウさんが彼なのではと思えてくるほど重なってくる。
じっと彼を見つめていたら、彼の目が細まった。
「で、君にそんな事を吹き込んだのは誰?」
「えっ・・・・・・」
「今まで何も疑問に思っていなかった君が、突然そんな事を言ったんだ。
誰かに指摘されたんだろう?
で、そんな事を君が信頼して話すことが出来る相手、男だね?
それをそんな風に指摘できる男って俺の知ってるやつ?」
「あ、その」
「なんだか嫌な感じがするんだよなぁ。
相当心から信用しきっているだろう?その男の事を。
そうじゃなきゃいつも慎重な君が誰かに話すわけが無い」
「あ、あの」
「さて、今からじっくり吐いてもらおうか、俺の知らないその男の事を」
彼はにっこりと微笑んでいる。
ゆっくりと近づく彼の顔を見ながら、全身の血の気が引く音が聞こえた。
くっくっくっとヘットフォンの向こうで、ずっとリュウさんは笑っている。
「本当に散々だったんですって・・・・・・」
彼の嫉妬心は驚くほどのものだった。
私は翌日声が嗄れ、身体中が筋肉痛になった。
彼は日頃から鍛えているというのは伊達ではないようで、年上なのに一切翌日疲れていなかった。
『で、『宿り木カフェ』の事を彼に話してしまったと』
「その場でスマホをチェックされました・・・・・・」
またむこうから笑い声が聞こえる。
『で、彼はサイトを見てなんて?
やめろとは言われなかったでしょ?』
「そうなんです!
てっきりやめろと言われるのかと」
『そもそも始めた理由を伝えたんでしょ?』
「はい、その点については彼が謝ってました。
彼のせいじゃないのに」
『まぁ誰にも言えないのはきついし、彼にもそれは責任があるから当然だ。
で、やめないで良い理由を彼はなんて言った?』
「規約を見て、納得したようでした」
『あはは、まぁ一応そういうことにしただけだよ』
「一応?」
『彼は僕と同じで、狩る事に楽しみを覚えるタイプだ。
それもじっくりと待ってる時間も楽しめるほどの。
だから、君がここに来て僕と話をしていたって嫉妬はしても止めることはない。
今度は僕から君を奪い返す楽しみが出来たのさ。
自分の事だけで君が一杯になれば勝ちだからね。
むしろこのサイトは、危険な愛のスパイスくらいに感じてるだろう』
今までなら彼とリュウさんとは時々重なって見えることがあったとしてもやはり違うと思っていた。
だけれど彼も認めたのだ、おそらくそのネットの彼は自分と似ているのだろうと。
そのせいで、リュウさんの言葉が彼の言葉のように聞こえてしまう。
「前の会社でもそうだったか聞いた?」
『忘れていました。
というかそれどころじゃありませんでした』
やはり笑い声が聞こえる。
少ししてリュウさんが話し始めた。
『僕はね、可愛がってる女の子達が綺麗になって自分の元を離れていくのが嬉しいんだ』
「え?」
『ある程度すると、彼女たちは自分から離れていくんだよ。
喧嘩して別れるとかじゃない、満足して、今度は自分の幸せを掴みに歩き出すんだ。
僕はあくまで原石を磨く職人みたいな者で、美しくなった宝石が高い額で良い客に買われるのを見ると僕も満足する』
「そ、そういうものですか?」
まさか不倫というような関係で、そんな別れ方が、終わり方があるなんて思わなかった。
『僕は彼女たちのおかげで良い男であり続けようと努力できた。
彼女たちはそんな僕に愛されることで自信をつけ、美しくなった。
僕を踏み台にしてステップアップしてくれるなんて、そんな嬉しい事は無いじゃ無いか』
ヘッドフォンの向こうから聞こえるリュウさんの声は、本当に満足そうだ。
『・・・・・そろそろ僕とカフェで過ごす時間も終わるね』
「そう、ですね・・・・・」
彼の事を沢山初めて話せた人。
リュウさんと話さなければ、自分が彼から狙われたいたなんて知らなかっただろう。
でも、それがまた私に自信をつけてくれたのだ。




