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宿り木カフェ  作者: 桜居かのん
Case1 家族を亡くした21歳
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2



姉は・・・・・・夫だった人に殺された。



『優しい人なの』


そういってある男性と交際しているのだと話をしてきた姉は、母と私にその相手を会わせることなく家を出て、しばらくして結婚したと突然連絡があった。


旦那さんを紹介してと私が言っても、彼は気むずかしい人だからと断られた。

せめてどんな人か教えて欲しいと言っても断られる。

時折家に戻ってきて一緒に食事をしようと言ったが一度も戻らず、こちらから一方的にかける電話でしか姉と話すことが出来ない。

それも必ず出るわけでは無い。

夜は忙しいから掛けてこないでと断られ、その頻度すら減っていった。


母も私も流石に不安になっていた。

姉の態度がどんどん変わっていったからだ。





私は姉からなんとか家の住所を聞き出し、約束も取り付けず会いに行った。

驚くほど古びた二階建てのアパートの一室が、姉の新居だった。

名前も書かれていないドアのブザーを押すと、灰色のドアが開いて人が出てきた。

そして私は呆然とした。


周囲でも可愛いと評判だった姉の面影は微塵も無いほど痩せ、姉の顔色は悪く、そして酷く腫れた状態だったのだ。



私はすぐに姉が夫から、ドメステックバイオレンスを受けていると確信した。

そうではなければこんな状態になっているはずが無い。


『お姉ちゃん帰ろう!

顔も酷く腫れてる!

叩かれたの?殴られたの?!

こんなの酷いよ!!』


『ダメよ、あの人が一人になってしまう』


姉は腫れた顔で横に振る。


『その前にお姉ちゃんが死んじゃうよ!』


『あの人が怒るのは私のせいなの、私がいたらないから。

私がきちんとやれていれば優しい人なのよ』


姉はあくまで静かにそう言った。



その後も私は心配で何度も家に通うと、こう姉に言われた。


『もう二度と来ないで。

貴女が来ることを知って彼の怒りが酷くなった。

全部貴女のせいよ』


姉は腫れた目で私を睨み、古びたドアを閉めた。


「お姉ちゃん!

開けて!お願いだから!!」


そう叫びながらドアを叩いてもドアは開かない。

私はしばらくそれを繰り返したが反応は無く、隣の男性が迷惑そうにドアを開けて睨んできたので辞めざるを得なかった。


それが姉と会った最後になる事など思わずに。




私はすぐに警察へ相談に行った。

姉がDVに遭っている、助けて欲しいと。

私が必死に状況を訴えても、目の前の警察官の表情は一切変わらない。

本人が一緒に来ないと無理だ、そもそもそれが本当なのかもわからない。

どうしてもというなら姉を連れてこいと実質門前払いされた。

その後何度も警察に行ったが、迷惑だといわんばかりの冷たい対応が続き、私は絶望していた。


だれが姉を助けてくれるのだろう。

姉に電話を掛けたら着信拒否されていた。

家に行っても出てきてはくれない。

私の手は振り払われてしまったというのに。


母は姉のことを心配し、鬱病になった。

私は高校を卒業し念願の正社員になれたばかりで、色々な事が一杯一杯だった。


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