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宿り木カフェ  作者: 桜居かのん
Case2 親友が出来婚しそうな36歳
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*********



「って事があってさ」


私、岡田愛は中学時代からの親友である、岡口彩に愚痴をこぼした。


彩とは名字が同じ岡で出席番号が近く、名前も「あ」で始まり、漢字1文字、読みは2文字という共通点もあり、仲良くなるのに時間はかからなかった。


その彩と、行きつけのバーで飲んでいた。

バーと行っても食事も色々出すし、話をしたりゆっくりするのにとても良いのでいつも二人で夜会う時は定番のこの店になっていた。


「そりゃー面倒だったねー」


彩はあまり同情を感じさせない声で揚げ物を口に運びながら返し、私はカクテルのグラスを持ったままため息をつく。


「中学高校の集まりだったら彩を巻き込んだのに。

今回は残念ながら大学のだったからね」


「えー、私そういうのそもそもやれないし」


「そうやって面倒なのを私に任せる癖、相変わらずだよねぇ」


彩はちゃっかりしていて、そういうのを上手くすり抜ける。

私にはそんな芸当は出来なくて、真面目に正面から対応してしまうのだ。

けど彩は、なんだかんだ言ってもそれなりにバックアップしてくれる。

だから続いていられるのだ、この関係が。



「この頃、何か恋愛面で進展は無いの?」


彩のいつもの問いかけに、私は首を横に振った。


「仕事場との往復で相手が見つかったら奇跡だわ。

気がつけば自分の周りには既婚者か、めっちゃ若い男性しかいない」


「40代くらいで独身の男性っていないの?」


「いるよ。

何で一人なのかなって思う人も居れば、居ないのも無理ないなって思う人も居る」


「へー。何で一人か聞いたこと無いの?」


面白そうに突っ込んでくる彩に、私はうーんと唸った。


「本人には聞いたこと無いけど、噂では理想が高いとか、長男で家を継ぐ必要があるとか色々。

勝手な噂ばかりで内容は信用出来ないね。

まぁ公務員なのに結婚していないと、どうしても周りは勘ぐるから」


「そういうの鵜呑みにしないとこ、偉いね」


「私だって30代半ばで男もいないのは何故だって、変な噂がたってるんだから」


「うわ、そうなの?ちなみにどんな?」


「それこそ理想が高いだの、実は子供の産めない身体なんだろうとか」


「ちょっと、最後のは酷いんじゃない?」


思い切り眉間に皺を寄せた彩に、私は苦笑いを浮かべる。

残りが少なくなったカクテルのグラスを持ちながら、


「でもさ、子供が出来ないって夫婦だと原因は半々なのに、女性のせいだってされやすいよね。

それに私はきちんと調べてもらった訳じゃ無いし、それこそタイムリミットは近づいてるわけだし」


「高齢出産なんてこのご時世ザラじゃない」


「そうだねぇ。

でもその分の養育費と自分達の老後の資金は?

それこそ家一軒建てるくらいの費用が子供にかかんのよ?

スタートが遅くなる分リスクはどんどん増えるわけだ」


「そうなの?」


「そうなの」


不思議そうにする彩に、私は苦笑いしつつ答えた。


「で、そっちは?」


そう私が振ると、彩はうーんと言いながら首をかしげた。

話したいような素振りを感じ取り、


「なに、いるの?」


私は彩が話しやすくするように、ほら白状しなさいよと言葉を続ける。


「いや、気になる人は、居るって言えば、いるんだけどねぇ」


未だ首をかしげて腕まで組んで悩みながら彩が言う。


「歯切れ悪いわね。

え、もしかして彼女が既にいるとか、奥さんがいるとか?!」


「まさか!違う違う!

何て言うのかな、会社でそれなりに親しくしてくれてるとは思うんだけど、女としてどう思ってくれてるかわからないんだ」


私は、へぇ、と返した。

ここまで奥手な状態だという事は、これはかなり本気なのだろう。


「いいなぁ、好きになれる人がいて」


私は思わず呟いた。


「なにそれ」


「だから、恋人になる以前に、好きだなって思える人がいるって事がいいなと羨ましく思ったのよ。

恋するだけで女は綺麗になれるんだし」


「まぁそれはわかる」


「下手な高級化粧品より、恋してる!って女性ホルモン出まくってるほうが絶対美容にも心にも良いじゃない」


「ついでにHするともっと良い」


真面目な顔で突っ込んできた彩と顔を見合わせて笑う。


「まぁ、彼にダメもとでぶつかって来たら?

勝算がゼロって訳じゃ無いんでしょ?」


私がそう言うと、そうだねぇと彩が苦笑いを浮かべている。


「お互い頑張っても独身だったらワンルームマンションでも買おうか、それも隣同士で」


私は新しく来たカクテルを一口飲むと、にやりと彩に言った。


「えー、それで二人でよぼよぼ歩きながら買い物行くの?」


「そこまで一気にいかないでよ」


思い切り嫌そうな声を出した彩に、私は笑った。



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