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純文学シリーズ

鉄格子

作者: 豊科奈義

 無機質な硬い金属質な床の上で座っていると、ふと鉄格子越しに人間がいた。

 ここは、私の居場所。目の前に鉄格子があり、その他は塞がれている。食事用の穴がある程度だ。

 布をまとっているその彼が何を言っているのかなんて、わかるわけもない。彼らはこちらを見て、驚くなり、恐怖するなり相応の態度を取った後気がついたら消えている。

 それにしても、人間って本当に面白い。風が入ってきて鉄格子が小刻みに揺れると人間は大きく驚いて怖がるんだ。鉄格子が揺れたところで命の危険なんてないのに。

 最初は驚いたが、今では何ら気にすることもない。ただ寝て、起きたら人間がいるかいないだけ。天を仰ぎ見れば、床と全く同じ。無機質な硬い金属質な床。一体何回その天井を見たのか。

 ふと起き上がってみると新しい人間がいた。彼は鉄格子越しから私を眺めている。けれども、その人間はいつもの人間とはどこか違う。

 ただ、鉄格子越しの向こうの部屋に落ち着いたように座っているまま動かない。暇があったらこちらを眺めている。


「ねぇ」


 私は彼に話しかけてみた。

 彼は反応した。こちらに視線を固定するなり、鉄格子の直ぐ側までやってきてくれた。そして、彼は喋った。残念なことに、彼が何を言っているのかはわからない。けど、彼はひどく落ち着いている。

 なぜかはわからないが、私が目の前に来ると人間はパニックに陥るらしい。彼はそんな素振りを見せる様子もなく延々と何かを話し続けている。私も、彼の内容が理解できればいいのに。

 そして、いくらか時間が過ぎた後彼は喋るのを止めた。喋り疲れたのか、喋る内容がなくなってしまったのか。

 でも、きっと、明日には彼もいなくなってしまう。人間なんてみんな同じように見えるけど、大きさが違うから二度と会ってないということはわかっている。

 そう言えば、彼はどんな人間なんだろう。小柄で、色が悪い。骨の形がくっきりと浮かび上がっている。なるほど、人間にはこういう人もいるんだね。

 そんな彼は、床に大の字で寝そべって安らいだ顔をした。

 きっと彼にとって、ここは落ち着く場所なんだね。

 なら、最後まで一緒にいよう。私は鉄格子の近くまで来て彼のすぐ近くまで来た。彼はほんの僅かに驚いたがそれ以上の反応はなかった。


「おやすみ」


 私は目を閉じる。この間に一体何が行われているのかなんて私は知らない。けれども、これが私の生活の一環でもあるのだ。

 目をさますと、案の定彼は消えていた。すると、壁に開いた穴からいい匂いがした。食べ物だ。

 私はその穴の元まで行く。

 そこにあったのは何かの肉。私はかぶりつく。骨もサクサク。今日もおいしいや。

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