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2 身代わり地蔵の森

一緒に下校する…?!

1日でクラスに馴染むような女子とあまり接点を持ちたく無かったから「良いよ」などとは言えなかった。そうは言っても、お互い自転車通学のため、結果、自転車置き場に一緒に行くことになる。彼女の言っていることが本当なら、このまま同じ方向に走って行くことになる。

「なんか…嫌だ…」と、思いながら、しかし振り切ることも出来ずに自転車に跨って後ろを振り返ると、やはり悠里はiPhoneのイヤホンをつけながら自分の後ろにピッタリと着いていた…。

苦いきもちでペダルを漕ぎ始めた。まぁしかし並んで走るわけでは無いのでそこまで気にする必要なんてないのか、と思いきや、信号で止まるたびに

「あの建物、コンビニになったんだね」とか「南中、変わってないなー」とかいちいち確認してくる。悠里に悪気はないのに、なんだか居心地が悪くて仕方ない。このやり取り、何処まで続くの…?と、憂鬱になりながら、もうすぐそこが家である。

かつて小学生の頃の遊び場だった「身がわり地蔵の森」…といっても今は四畳半にもならないスペースの片隅に名残りのお地蔵様を祀ったおやしろがあるだけの場所になってしまって、隣接する公園の方が広い。そこを下った先が忍の家だ。

どうしようと思いながら、そのスペースを通り抜けた瞬間、交差点から結構なスピードで車が侵入して来た。ぶつかりそうでウワッとバランスを崩したところに電柱があって身体ごとぶつかる。そこに後ろを走っていた悠里が自転車ごと飛び込んできた。スローモーションのようにひっくり返ろうとする悠里を、車輪に足が巻き込まれちゃ大事おおごとだ!と思い切り突き飛ばした。

少し坂道になっているために、余計に勢いづいてお互いゴロンと転がって天地が逆転するが、辛うじて打ち身と軽い擦り傷で済んだようだ。まずもって自分には鋭い痛みは無かった。あちこち擦りむいたりしたであろう痛む箇所をさすろうとして違和感に気付く。


なんで自分、スカート穿いてるの???

目を見開いて、よくよく見れば、倒れた自転車の向こう側で、同じように痛みに堪えている人物は自分ではないか…。


????????????

!!!!!!!!!!!!


いや、

まさか、

まさかまさか

まさかまさかまさかコレって入れ替わってる?!

アレじゃん!こないだ見たよ、こんな漫画!!!!

「そんなバカな!!」


忍の顔した悠里も頭を振りながら違和感に気づいたようだ。きっと今の自分の顔はあんな表情をしているはずだ。目がもう、これ以上ないというくらいに見開かれている。自分を見たり相手を見たり、同じようなリアクションを繰り返しながら、お互いがお互い、自分の動きに従わない鏡を見ているかのようだった。

口からはマジとヤバいしか出てこない。

「ちょ…落ち着こう」

「とりま…傷口洗おう…」 


隣接している公園に自転車を引きずりながらとぼとぼ歩き、お互い汚れた足やら腕やらを水飲み場の水で洗いながら、途方に暮れつつ会話する。

「コレってアレだよね?」

「漫画とかである、アレだよね?!」

自分の声ってこんな声なんだ…と思いながら

「そうだね…」

「入れ替わりとかいうヤツよね…」

違和感のある悠里の声で答える…。


忍の姿の悠里が、焦って急にスマフォを取り出した。

「ググろう」

アホだろうと思ったが、案の定、小説やら漫画やらのタイトルか、どっかの脳科学研究所がやってる鬱病等の画期的治療法なんぞしかヒットしなかった。

悲しそうな顔をする悠里に同情したくても、それは自分の情けない顔なのだ。萎える…。


セオリーに則って、ぶつかったであろう場所で何度かぶつかってはみたものの、5回目あたりで、怪我が増えるだけだと諦めるしかなかった。

「も…限界…」

「明日にしよ、無理〜」

「いや待って。そしたら、しのはウチの家に帰って、ウチはしのの家に帰るってことだよね?」

「それも無理〜無理無理無理ーーー!!!」

どうしよう、どうしようと2人で頭をフル回転させても名案は浮かばず、そして無情にも日は暮れてゆく。

腹を括るしかなかった…。


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