1 転校生
プロローグは短めです。
今回は15話くらいいくかもしれません。私に高校生の心の機微が描けるのか未知数過ぎる…。無謀な挑戦ですが、頑張ってみよう!!よろしくお願いいたします!!!
五十嵐忍は、色白で痩せっぽちの、大人しい少年だった。オドオドした態度、消え入りそうな声、少し女性らしい言葉遣いが同性からは疎まれて、中学時代の友人は数えるほどもいない。そんな忍がこの春に松影高校へ入学してからクラスで口を開いたのは、隣席の女生徒1人。なよついた身振り手振りや喋り方にも引かずに話しかけてくれてくれる希有な存在だった。
中学時代、自分を変えようとは思っていたし、多少の努力もしたが、生来の性格が周りに馴染むようにはできなかった。そのマイノリティさに、自分自身よく気づいていたので、高校の3年間は悪目立ちしないよう、上手に埋没して生きていこうと決心していた。
ゴールデンウィークを過ぎるまではその信念に従って上手くやっていたはずだった。
そう、時節外れの転校生がやって来るまでは。
「東雲悠里です!小学生の頃こっちに住んでて、引っ越しでまた戻ってきました。スポーツが得意です。よろしくお願いします!!!」
よく通る大きな声で、堂々と自己紹介をした彼女は、茶色く染めたウェーブの髪と、小さいながらもくりっとした目とプルンとした唇が特徴的だった。化粧っ気はないが、真っ直ぐに伸びた健康そうな足といい、いかにも体育会系の快活そうな女の子である。
高校生ともなると転校生は珍しい。放課の度に早速彼女はクラスメイトの女子たちや一部の男子たちに囲まれて楽しそうに喋っていた。
気になるのは彼女からの視線を何度か感じることだ。気のせいだと思おうとしたが、1日の終わりまでに感じた気配に、これは気のせいではないと確信した。一体どういうことだろうとビクつきながらも、信念に従って忍は無視を決め込んだ。
終業後の最後のチャイムがなり、帰宅部の忍はさっさと帰り仕度を始めた。玄関で上履きを靴に履き替えていると後ろから声がかかった
「しのぶ?」
「ねぇ!!しのだよね?!」
徹底的に無視したい!という気持ちと葛藤しながらゆっくり振り向くと、やはりそこには東雲悠里が立っていた。
「…」
「親の再婚で今は名字違うけど、あんときは、上田だった悠里だよ!
同小だったの、もう忘れた?」
そんな、名前もあったかもしれない…
記憶を弄るがよく分からず、無表情で佇む。
「ふはっ、相変わらずだなぁー
まっ、なんかあったら、またいろいろ頼むよ!」
え?!声にならずに呻く。そういえば、宿題や提出物なんかでいろいろお世話をさせられた……気がする。
「ね、住んでるとこ、前と変わってないならさ、結構ご近所さんなんだ!一緒に帰ろう!」
な、と背中を思い切り叩かれる。
「ぅえぇ…?!」
喉の奥からなんとも言えない声が出た。それを聞いても悠里は可笑しそうに笑うだけだ。
しかしここで嫌だと思ったことなど、これから起こることの序章に過ぎなかったのだ。
あんなことが起こるとは…