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アルマー心と魔法の物語ー  作者: 春風 奏
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【第1章】―2―

登場人物



三日月在真(みかづきあるま)

主人公、日本に住む小学5年生の少年

 妹が生まれると分かった翌日、在真は変わらない朝を迎えた。


 学校へ行く支度を済ませて下の階へ向かう。

 母親が新聞を読みながらコーヒーを飲んでいた。


「おはよう在真。朝食出来てるわよ。」

「おはよう母さん。」


 父親は朝早いため、もう仕事に出かけていた。

 父親の朝食を作るために母親も起きるため、在真が起きる頃には既に朝食がテーブルに並べられていた。

 在真はあくびをしながら椅子に座って朝食を食べ始めた。


「あなたと妹、十二歳差になるのね。頼りにしてるわよ、お兄ちゃん。」


 読んでいた新聞をたたみながら母親が言った。

 年が近くない分、両親に頼りにされる場面は多いだろう。


 今まで育ててもらった分、自分が出来る事をしよう。


 在真は朝食を食べながら頷いた。

 ふとテレビを見ると、ちょうど天気予報のコーナーだった。

 それを見て母親がはっと何かを思い出し、在真に言った。


「そうだわ、すっかり忘れてた。今日雪が積もってるのよ。昨日の夜、凄い量の雪が降ったらしくてね、だいぶ厚く積もってるから気を付けてね。しっかり寒さ対策するのよ。」


 外を見ると、カーテン越しに真っ白になっている外の様子が窺えた。

 暖房が効いていて全く気が付かなかった。


 確かに今日は寒そうだ。

 

 在真は朝食を食べ終えると、歯磨きと洗顔を済ませて再び自分の部屋に戻った。

 いつもより厚地の手袋とマフラー、耳当てを取り出して身に着ける。

 鞄を背負い、忘れ物がないか確認をして部屋を出た。


 玄関で靴を履いていると、母親が後ろからカイロを差し出しながら声をかけてきた。


「カイロあるけど持ってく?」


 在真は頷いてカイロを受け取る。


「気を付けてね。今日は雪が降ってるから特に転ばないように。」

「分かった、行ってきます。」


 在真は母親の方を向かず、玄関のドアノブに手をかけた。


「いってらっしゃい。」


*****


 久しぶりに雪が積もった。

 これほど積もったのは例の事件以来だろうか。


 下校途中、在真は雪を見ながら思った。

 もちろんそこに感情は存在していない。


 あの日、絵本と同じようなかまくらを作って遊んでいた。

 物語のような異世界へ行けるわけがないと分かっていながらも、もしかしたらという希望を胸に朱音たちとかまくらを作ったが、そこにはただのかまくらがひとつあっただけ。

 そういえば、あの時ふたりのために絵本作家になろうと夢を描いていた。

 今となっては、そんな夢は無意味になってしまったが。


 景色を眺めながら歩いていると突然ズボッと在真は何か冷たいものにぶつかった。

 何かにのめり込んでしまったようだ。


 この感じ、雪の塊だろうか。


 体勢を整えてぶつかったものを見る。

 大きな雪の塊だ。

 反対側にも何かないかと見に行ってみると、この雪の正体がかまくらであることが分かった。

 在真の身長は平均身長より少し小さい。

 かまくらは、在真よりも少し大きかった。


 いったい誰が何のために。


 かまくらの穴の中は真っ暗だった。

 辺りはまだ明るいため、内側の壁が見えないのはおかしい。

 やけに怪しいかまくらだった。


 もしかして……。


 ふと在真の頭に絵本のことがよぎる。

 どうしても気になった在真は、かまくらの中に足を踏み入れた。



「えっ?」


 入った瞬間、周囲が真っ暗になる。

 後ろを向いても黒、前や横を向いても黒、一面真っ黒だった。


 出口がない。


 そうか、これはきっと夢だ、そうに違いない。


 在真は頬をつねった。


 痛い、現実に起きている。

 ではどうして何も見えないんだろう。

 誰かに捕まって袋に入れられてしまったのだろうか。


 しかし、在真の体は自由に動かすことができる。

 体が動くなら、ここで立ち止まっていても仕方がない。


 在真は床があるのかも分からない地面へゆっくりと歩き出した。


 五分ほど歩いていると、目の前に小さな白い点が見えた。

 どこへ行けばいいのか分からない在真に目的地が出来た瞬間だった。

 白い点に向かって歩き続ける。

 段々と白い点が大きくなり、それが光だと分かった。

 在真は光に向かって更に歩き続けた。


「出口かな?」


 出口らしきところに着くと、急に視界が真っ白になった。

 まぶしくて思わず目を瞑る。



 暫くしてゆっくりと目を開けた。






「ここ、どこ……?」


 在真の目の前に広がっていたのは、見たことのない優しい日の光に照らされた美しい草原だった。


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