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アルマー心と魔法の物語ー  作者: 春風 奏
3/16

【序章】―3(過去)―

登場人物



三日月在真(みかづきあるま)

主人公、日本に住む小学5年生の少年。(今回は6歳の頃の話)


相楽朱音(さがらあかね)

在真の友達の少年。


(かなどめ)しずく

在真の友達の少女。




******


今回も、在真の過去編です


「あ、そろそろお家に帰らなきゃ。」


 しずくの言葉ではっとする。

 午後五時を知らせる音楽が耳に届く。

 周囲を見るとすっかり暗くなっていて、街灯がちらほらとつき始めていた。


 今日はそろそろ帰ろうと朱音が提案し、在真としずくは頷いた。

 今日も二人と遊べて楽しかったな、今日の夕飯は何だろう?お家に帰ったらあったかいお風呂に早く入りたいなぁ。



 

 ――そう呑気に在真は考えていた。


 その時、後ろから自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。

 声がした方を振り向こうとすると同時に体が思いきり前に突き飛ばされた。

 キーっと甲高い音とともにドンという鈍い音がする。

 在真はぼさっと厚く積もった雪に倒れこんだ。


 

 ――いったい何が起こったのだろう。

 辺りが明るく見える。あれ、夜のはずなのになんでこんなにも明るいの?


「大丈夫か!?」


 声をかけられた。

 男性が在真を心配そうに覗いている。

 明かりがまぶしくて、よく見えない。

 とりあえず在真は頷いた。

 男性はよかったとほっとしながら在真の後ろに行った。


 大丈夫、あと少しで助けが来るから頑張れよ。


 男性がそう言っている気がした。

 さっきの男性とは別の人が声を荒げながら叫んでいる。


 俺のせいじゃない。

 

 そう叫んでいた。


 しばらくして辺りがうるさくなってきた。

 救急車とパトカーのサイレンが聞こえたような気がした。

 いったい何が起きているんだろう。


 やっと体が落ち着いてゆっくりと体を持ち上げ、ゆっくり顔を上げる。

 そして、あの時に自分の名前を呼んでいた声の主、甲高い音と鈍い音の正体を知ることになる。


「えっ……?」


 目の前には血だらけになった朱音としずく。

 そして、前がぐちゃぐちゃになった黒い車がライトをまぶしいくらいに付けていた光景だった。

 朱音としずくの周りには救急隊員の人たちが囲んでいる。


 その中に二人の両親が涙を流しながら二人に声を必死にかけていた。


「在真、大丈夫か!?」

 

 また声をかけられた。

 今度は自分の父親だった。

 母親も一緒に来ていて、朱音としずくの様子を見て青ざめていた。

 あのとき在真の名前を呼んでいたのは朱音としずくで、甲高い音と鈍い音は事故が起こった瞬間の音だった。

 在真も顔が青ざめる。

 脳裏には信じたくない言葉がずっとよぎっていた。


 しずくト朱音ガイナクナル……?






「……だ。いやだ……!いやだああああああああああああああああああ!!!!」






 朱音としずくは緊急搬送されたが、結局死亡が確認された。


 事故は路面凍結の日に飲酒運転でスピードを出していた男性が車を制御できず、公園に思いきり突っ込んだことで生じたものだった。

 俺のせいじゃないと叫んでいた男性が運転手であのあとすぐに警察に捕まり、二人の葬儀が落ち着いた後に裁判を行うことになっている。


 二人の葬儀は日にちをずらして行われることになった。

 最初はしずくだった。花に囲まれてよく遊んでいた大好きな人形と一緒に棺桶に入ったしずく。

 しずくの母親は常に涙を流し、父親も目元が潤んでいた。

 しずくの遺影は笑顔で、なんとなく目が合った気がした。

 今にも話しかけてきそうな、そんな雰囲気だった。


 告別式の日、火葬場に着くと、しずくの母親は泣き崩れ、父親も限界だったのか泣いていた。


 次は朱音で、朱音は顔の損傷が激しく右目がつぶれていた。

 そのため、損傷が見えないようになっていた。

 朱音の父親と母親は終始泣いていた。

 朱音が大好きだった戦隊ものの人形、よく遊んでいたおもちゃ、大好きだったお菓子など色々なものが棺桶に入れられた。

 朱音の父親と母親は最後の最後までずっと朱音に話しかけていた。


 二人の葬儀が終わり、在真のもとから二人の大事な友達がいなくなった。

 二人の葬儀に出て、共通して聞いた言葉がある。


「どうして私の子が……。どうして死ななくてはいけなかったの?」


 両方の両親が泣きながら言っていた言葉であった。

 この言葉にショックを受けると思ったのだろう。家に帰ると在真の父親がそっと在真を抱きしめた。


「二人が居なくなって悲しいと思うが、絶対に死のうと思うな。お前は生きるんだ。二人の分も。」


 在真は頷いた。



 その表情に、感情はなかった。


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